天晴れ
拳士に連れられて、羊の国の中心部へ向かう。
「ここら辺に、昔のものが残ってるのか……?」
立ち並ぶのは、ビル、ビル、ビル。しかも足元はコンクリで固められている。植物は狭っ苦しく立っている街路樹だけだった。
「未来、即ち、変化!このくらいの事は想定済みであります!」
それでも進むのは、余程の自信があるのか、思い入れがあるのか。
ビルとビルの間に入る。昼間なのに暗い。空が切り取られたみたいだ。幸い普通に歩ける程度の狭さで。でも、息苦しかった。
「……ここですね」
と、拳士が足を止めた所は、ビルとビルの隙間道が交差している場所。
「……?」
拳士が横に行くと、そこにあるものが見えた。石碑だ。こんなに街が変わって、埋もれて、忘れ去られてしまうだろうと思っていた。それなのに。
さっきまで俺たちを圧迫していたビルたちは石碑を守るように立ち、苔ひとつない石碑には優しい光が注がれている。
「これは……」
見ると、さっきまでやかましかった拳士は、静かに目を閉じ祈りを捧げているようだった。つられて俺もそれに倣う。
どれくらいの時間が経ったのかは分からないけど、おそらくしばらくの沈黙の後。
「……ありがとうございました。そちらに協力させて頂きます!」
俺と拳士が握手を交わした後、ソウマさんが戻ってきた。
「……コウ、ありがとう」
ソウマさんはビルの壁にもたれかかる。
「大丈夫ですか?」
「うん、お陰様で。あと、やるべき事が変わった」
「?、なんですか?」
ソウマさんは小さな空を見上げる。
「全ての『ソウマ』を味方につける」
思わず驚きの声が漏れた。
確かに協力的な奴もいるみたいだが……大抵はソウマさんの体を乗っ取ろうとする筈。対抗するならまだしも、協力は難しいんじゃないか?
「できるんですか……?」
「でも、そっちの方が、現実的だと思うんだ。現に、あいつらを倒すには支持を集めるだけじゃ駄目だ。力が欲しい。賛否はあるだろうけど、向こうが武力で来るならこっちもそうしないといけないと思うんだ」
「仮に全部のソウマがソウマさんに協力してくれたとして。彼ら全員を圧倒出来る程強くなれますかね……?」
ソウマさんは大きく頷くと、丁度真上に来た太陽の光を浴びる。
「僕たちソウマの力と、コウの技への知識。それがあれば、出来ると思うんだ」
ソウマさんは息を小さく吸う。
「僕たちは、“技神”を再現する」
ひゅうと鞭打つような音を鳴らしながら風が吹くと、そこには技神の卵がいた。




