懸け
……なんとか逃げて来たけど、ソウマさんは無事だろうか?
俺、コウは分身に来た道を戻らせる。ちゃんとそっちに感覚を分ければ大丈夫だ。
何やら澄んだ妖気を感じる。ソウマさんを襲っている奴なのか、それとも……。
「奇襲!罵倒!即ち……敵!」
いやあれは絶対ソウマさんじゃない。多分、別のソウマさん……?
その人は現れる追手の攻撃を素手で受け止めて握り潰し、右手の指を曲げ、
「『円弧龍砲拳』!」
と言って右手を押し出したかと思うと、龍型の妖気の塊が出て来て。小さなものにバラけて相手たちにぶつかっていった。
「全滅!即ち、勝利!」
俺はそいつの前に現れる。
「直後!即ち、増援!?」
「違う違う……まず、自分の姿見てみろ」
俺は手鏡を見せる。
「むっ……?」
そいつはめちゃくちゃに叫んだ。思わず一瞬聴覚を消すくらい。
「誰だこいつは!?」
「えっとだな、お前の体になってるのもソウマさんで、俺の仲間なんだ」
「……よく分からないのであります……」
向こうは随分と混乱しているようだった。無理もないか。
「そもそもワタクシは死んでいる筈、こうして再び現世に舞い戻ったこと自体不可思議ではありますが……」
というか、普通に喋れるんだな。
「それが、あなたたち?ソウマさんに起こってる現象らしくて……一旦、元のソウマさんに戻れませんか?」
「うぅむ……承知した」
と、元の妖気に戻ったかと思うと倒れ込んだ。
「だ、大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄ると、乱れた呼吸の音が聞こえる。
「ソウマさん!ソウマさん!……いや、クンさん」
ソウマさんは勢いよく起き上がり、咳き込む。
「ごめん、記憶が一気に流れて来て……」
「……何か、あったんですか?」
「時の館の主人が接触して来た。いつもより他のソウマたちが活発になってる……」
このままソウマさんを弱らせる訳には行かないし……。
「殺戮兵器さん!」
また妖気が変わる。
「ドウシタノ?」
「頼む、他のソウマを落ち着かせてくれないか?ソウマさんが危ない」
「ワカッタ。デモ、ボクダケジャチカラブソクカモ……」
「……なるべく呼べるようにする」
その時、あのやかましめの奴に変わった。
「お願いです、k「まずは名乗って頂こう!」
上から目線ではあるけれど、こちらがお願いする側だしな。
「コウです」
「ふむ。貴方がたに協力するには、まずワタクシの未練を晴らさせて頂きます!」
「分かった。なんだってやる」
「ワタクシもソウマですが、拳士と呼んで頂きたく!」
こうして、不思議な旅が始まった。




