一
……羊の国に着いた。
伝統的な織物の生産が盛んな街で、商店街を歩いていたらリズミカルな織機の音が聞こえてくる。
意外にも羊の国は結構な経済規模の国で、都心部では高層ビルが立ち並んでいるらしい。
「ここに協力者がいるって、あんまり感じませんけど」
「まぁ、人目を避けて生活してるかもしれないしね」
商店街を抜け、舗装された道を辿って山奥へ進む。どんどんコンクリートの裂け目が増えていき、とうとう砂利道になった。かと思えば、落ち葉が積もった森になった。
「まだ三時なのに暗い……」
「そうだね……早く見つけないと」
道なき道を進む。
時折木をくぐり、倒木を跳び越える。毒蛇とかがいないと良いのだけれど。
時間の経過もそうだけれど、森の奥深くへ進んでいるので光が薄くなっていく。気温も下がって来た。
「今日は、やめておこう。街へ戻って、泊まれる所を探そうか」
「そうですね」
良く言われること。
登山において注意すべきは、登りよりも下り。
一度通った道だとか、登りの疲れとかで、油断しがちなのだ。
「……コウ。ごめんだけど、自分で別ルートから戻れそう?」
「?どうしたんですか?」
「早く」
コウが行ったのを確認すると、僕は木々の上を通る。
感じる。普通の人間では得られない程の妖気を。僕に付いて来ているようだ。
スピードを上げると、向こうも同じようにしてくる。こんなに足場が悪いだろうに、よく走れるなぁ。
おそらく、相当ここの森に慣れている。
「……既に向こう側、ってことか」
森を抜けると、立ち止まって来た道を振り返る。
一か八か、やるしかない。
「悪いが、お前は今指名手配されてるんだ」
やっぱり、誤魔化すことは出来ないらしい。
すぐに技が飛んでくる。避けるけれど、付いてくる。ホーミングができるのか。
仕方ないので、一回受けてみる。
……キシュウの一撃よりは軽い!
「よろしく」
『ワカッタ』
サツくん(そう呼ぶことにした)の炎で目眩しをする。
そのまま逃げようとしたけれど……無理らしい。
辺り一面が真っ暗になり、何も聞こえなくなった。
どういう技かはわからないけれど、体は動かない。これは……やばいな。
足の先から段々感覚が消えていく。
直感的にわかる。このままにしておけば、多分僕は死んでしまう。
あんな大口叩いておいて、随分情けない最期だとは思う。
コウだけでも守れて良かった。
「……みんな、ごめんね」
涙が頬を伝う感覚があった。
既に膝下の感覚は完全に失せている。
不思議と、恐怖はなかった。




