ニ
翌日。
朝日と共に起きた僕は、木の上から街の様子を伺った。
「ソウちゃん。冷えちゃうよ」
「……分かってる」
「ソウちゃんはあんまり覚えてないかもしれないけど、奪い返しに行くならやめておいた方がいい」
母さんは僕と同じ色の瞳で見つめて来る。
「残念ながら、彼らは傭兵を雇ってる。
二人で行っても多分……」
じゃあ、どうしようか。
「みんな彼らに従ってるの?」
「形上はね。でも、彼らはあんなことをしたし、本家といえど風当たりは強いだろうね」
「じゃあ、なんとかその人たちを味方に出来たら?」
「選ばれなかった本家と選ばれた分家。
協力してくれるかも微妙だけど、今の彼らが選挙で引き下がるとも思えないしねぇ」
「じゃあ母さん。
僕の記憶は戻せるの?」
母さんは黙る。目を伏せる。
「あなたがそれを知るメリットはないわ。
もし知りたいなら、ソウマを捨てるしかないの」
「……」
確かに、僕は玉座が欲しいんじゃない。
フォニックスの一員であれば、他は何も望まない。
それは、コウも同じだとしたら?
だったら、
「この力を、いっそのことあげちゃえればいいのに」
母さんはそれを聞くと、
「あのねソウちゃん。それは言っちゃダメなの」
と、涙目になりながら言われてしまった。
「どっちにしろ、母さんは巻き込みたくないんだ。
僕はなるべく早く、味方を集めたい。
やってダメだったら、多分僕は君主じゃなかったってことだよ」
「……命だけは捨てないでね」
それは、事実上の肯定だった。
少なくとも僕は、そう思った。
僕はコウにも相談した。
「そんなの、やるしかないですよ」
即答だった。
コウのこういうバッサリした所が、時に羨ましい。
僕はまた、母さんのところを離れることになってしまった。
「本音ではもうちょっと泊まってて欲しかったけど、仕方ないわね。
次はみんなを連れて来なさい」
「うん。ありがとう」
別れに交わした言葉はそれだけ。
でも、胸がジワリと温かくなった。
また二人の旅路。
「ソウマさん、良かったんですか?」
「うん。あんまり同じところにいすぎると、妖気でバレるかもしれないし」
また来るべき場所を背にして歩く。
一応周囲を警戒しつつ、羊の国を目指すことにした。
二人ともそこまで喋らなかったけど、不思議と不快な沈黙ではない。
黙ってそこにいても安心出来る……なんだか家族みたいだ。
……家族?
僕とコウは目の色も髪の色も違うんだ、流石にそれはないだろう。
じゃあ、なんでこんなに、こんなに……
懐かしいんだろう?




