三
フォニックスのみんなと一旦別れ、自分のことを終わらせると決めた。
それが正しかったのかは、ずっと分かっていない。
コウと二人きりで歩く道のりは遠いかと思っていたのに、覚えていないはずの場所で懐かしさを感じたり、コウと話したり。
本当は、この旅路は急がなきゃいけない。
でも、楽しかった。
あっという間に、母さんの家へ帰って来てしまった。
母さんが一人で暮らしているであろう家は木々に紛れたツリーハウスだった。
ハシゴも階段も見当たらず、見上げていると、誰かが出て来た。
うん、懐かしい。この妖気。
母さんは目を見開いたかと思うと、そのまま跳び降り、
「ソウちゃん!
……もーやだー、泣けて来ちゃった。
すっかり大人になっちゃったんだからー」
と言いながら抱きついて来る。
みんなと比べると小さかったけれど、母さんは僕よりも小さくなっていた。
本当に、長い間家出をしていたらしい。
「さあ、入って入って〜」
と、母さんはツリーハウスに跳び乗る。
僕もそれに続く。
でも、コウは……駄目だったみたいだ。
つるで引き上げてあげた。
中に入ると、電気や水道は通っていなくとも、快適な室内だった。
床もしっかりしているし、何より二階もあって合計四部屋。木の強さと建築技術の高さを感じさせた。
「平地で暮らしてたソウちゃんにとっては不便かもだけど……夜は暗くなったら寝るからね?」
「……はい」
母さんは不思議で、いつも僕の事を把握している。ただ、場所までは分からないようだ。
どれだけ離れていても。
「あと、そっちの、コウちゃん?
相変わらず仲良いのね」
「「相変わらず……?」」
僕たちの声が揃う。
「……あっ。
いいえ、なんでもないわ。
それにしても、ソウちゃん本当に大人になったねぇ。
彼女が出来るなんて、お母さん寂しいわー」
「うっ……」
本当はそこについて言及したかったのだけれど、全てを見透かす母さんに色々言い当てられた恥ずかしさで言いそびれてしまった。
この時聞いていても、多分結果は変わらなかったのだろうけど。
翌日。
悪夢を警戒していたのだけれど、母さんの子守唄は強かった。
「ソウちゃん、街に出るの?」
やっぱり、なんでもお見通しだ。
「うん。みんなと一緒にいるために、僕は僕の事を終わらせたいんだ」
母さんは微笑む。
「ソウちゃんは本当に真っ直ぐだね。
でも、あっちへ夜を過ごすのは危険だから、暗くなる前に帰って来なさい、いいね?」
「……はい」
やっぱり、子供は一生子供で、親は一生親のようだ。




