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20アマビエ、出番よ③

幼児のころは太陽に顔を書いたり、人のような顔をした動物を描いたものですが、今思ってもなかなかシュールなことですね。雪やあられに顔があってウヒヒと笑っていたらまさに恐怖です。

今回、ラフレシアの花が腐敗して悪臭がすると書いてありますが、コンニャクの花はハエが匂いに誘われてくるほど臭いらしいです。花も巨大らしいです。臭いが臭くなければ、畑に植えてみたい気もあります。

 ピンクの粒は笑い声をあげながら風に乗って漂っている。絶対、風上にこのピンク粒を飛散させているものがいるはず。幸い、私たちはまだ感染していない。アマビエのお守りが効いているのかもしれない。さすが妖怪、人に近い存在だ。


 ケーン!


 サラマンドラが一声鳴いて飛び立つ。何か感じたのかもしれない。今やサラマンドラは私たちにとって第三の目だ。私たちには見えない、感じられないものを察知して導いてくれる。非常に優秀なドラゴンだ。え?元はイモリ……って。イモリはパリンの手によってメタモルフォーゼしたのよ。そう、パリンの残酷な子どもの遊び。結果的にこうして役に立っている。こんなの、元居た世界じゃ考えられないわね。

 風上に向けて私たちを導くサラマンドラ。その先に何がいるのか。


 サラマンドラはある所で周回をした。そこに私たちの目的がいるのだ。顔を見合わせて慎重に進む私たち。相変らずピンクの粒々の笑い声が響いている。もうトラウマになりそうだ。夢にでてきたらうなされるかもしれないほど、この笑い声は私たちを苦しめる。

「おい……こんなモンスター、知らないぞ」

 アルフォードが立ち止まる。私たちの前に立ちはだかるそのモンスターは、植物なのか動物なのかはわからないものだった。

「新種でも何でも討伐に限る!クトニオスの魔剣の威力をみせてやるわ。覚悟しろ!」

 とケントが剣を振り上げ、向かおうとするのを私は必死で止める。

「それ、普通の剣よ。闇雲に突っ込まないで」

 ケントは魔剣を過信するあまり振り回されていた。そのため魔剣を封印中なのだ。

 目の前にいるのはバオバブの木のような太い幹とその上にラフレシア(東南アジア島嶼部でみられる世界最大の花)のような大きな花を咲かせているモンスターだ。枝を手足のように動かして頭の花を大きく揺らしている。なんとピンクの粒はそこから飛散していたのだ。これだけでも恐怖なのに何と、こいつ根っこが足になっていて走り回る。つまり移動できるのだ。

 こんなモンスターとどう戦うのか全く見当がつかない。

「アマビエはこいつを倒して燃やせばウイルス花粉の飛散を食い止められるっていっていたわ。こいつが媒体となって飛散させているの。先ずはあの花をどうにかしなきゃいけないわ」

 私は何とか策を考えた。ラフレシアの変容だとしたら、ラフレシアの弱点である寒さを武器にしたらいいかもしれない。あの氷結魔法だ。

「パリン、氷結魔法でこのモンスターを包んで」

 私の言葉に頷いたパリン。怖いだろうにモンスターの前に進み出る。

 

「氷気よ、わが元へ集え。フローズンミスト!」


 これで町からまた氷がなくなるかもしれないけど、ごめん、今緊急事態だ。

 パリンの氷結魔法はたちまち発動し、氷にモンスターが包まれた。しかし……。

 何かの割れる音がしたかと思うと、そのモンスターは氷の塊から出てきたのだ。確かに頭の花は氷気にやられて腐った感じだ。とてつもない腐敗臭が立ち込め、思わず吐きそうになる。ダメージを食らったかと思ったのに下の幹は寒さに耐性があるのかピンピンしている。走り回り、咆哮をあげながら私たちを餌にしようとしている。

「こいつ……なかなかしぶとくて俺をその気にさせてくれるな」

 アルフォードがケントとふたりで進み寄っていく。

「え……何あれ」

 私はあることに気付いた。何と、このモンスターは既に繁殖をしていた。周りに小さな赤ちゃんモンスターがいる。赤ちゃんモンスターの花はまだつぼみだ。こいつらが大きくなれば花が咲き、また病気を媒介してしまうだろう。

 そして事態の悪化はそれだけではなかった。マリスが赤い顔で倒れ込んでしまったのだ。

「マリス!」

 何とマリスまで発熱している。お守りのはずのアマビエの絵をどうしたのだろう。

「あのアマビエの絵をリンリンに渡したんだ。リンリンの方が必要だと思って……」

 倒れたリンリンの為に……ああ、でも美談だなんて言ってられない。彼をとにかく後方へ下がらせる。もう私たちは各々の武器を手に戦うしかなかった。


 ウヒヒ……ケケケ……。


 ピンクの粒が笑いながら漂う。その一粒一粒に顔があり笑っているのだ。なんてホラーなの!こうなったら妖怪でも何でも召喚させてやりたい!

 そう、あいつだ。半ば自暴自棄の私は神と崇められていい気になっているあいつがそばにいるような気がしてならない。

「そこにいるんでしょ。隠れてないで出てきなさい」

 私は隠れているあいつに向けて叫んだ。気配が感じられるのはなぜかわからないが、私の一言で神とされたのだから関わりたいのだろうか。


 テヘペロ。


 お決まりの可愛い子ぶりっ子の顔をしてそいつは現れた。神ならぬ妖怪アマビエである。

「様子を伺っているなんて趣味悪いわよ。アマビエ、あのわけのわからない植物モンスター相手に私たちはてこずっているの。力を貸して」

 とは言ったものの、アマビエは戦う妖怪ではなかったような……。

 この私の無理なお願いを知ってか知らでかアマビエは蒼い髪の毛をたなびかせながら私に両方の翼を差し出してきた。このしぐさにおばさんが弱いことを知っているのってずるいわよ。要するに抱っこをしてほしいのだ。

「こんなときに……仕方ないわね。甘ちゃん」

 私はため息をつくとアマビエを抱っこした。アマビエは再びテヘペロとやって見せる。


 さてこのモンスター、どうしたものか。どうにか弱らせないとサラマンドラの火焔だけでは不十分だろう。


 ウガガガ!


 腐った頭の腐敗臭が漂い吐き気をもよおす。後方にはマリスが倒れている。森の方ではリンリン。回復できるのかわからないが、マリスがアマビエのお守り絵をもたせている。やらねばならない。


「力を貸そうにも何分、わたしは可愛過ぎてぇ……」

 相変らずのぶりっ子スタイルである。この非常時に何言ってんのよ、全く。するとこれを聞いたパリンがちゃんとやってくれたわよ。


「エンゴーシオ!拡大せよ」


 するとアマビエは私の腕から離れてどんどん大きくなっていく。

「ほええ……」

 アルフォードとケントも目を丸くしている。あのかわい子ぶりっ子アマビエは巨大化されてまるで小怪獣だ。

「あーら、似合うじゃない。アマビエも妖怪から怪獣へ進化したのね。これでモンスターと同等に戦えるわよねえ」

 私はわざと大きな声で言ってやった。そうだよ、隠れてみている悪趣味何ぞくそくらえ!正々堂々と戦いましょう。困惑したアマビエの顔。うーん……美味しい。

「困りますぅ。元に戻してくださいよお」

「アマビエ、元に戻りたかったら力を貸しなさい。見事討伐出来たらスタリオン司祭に報告してさらに崇めてもらえるようにするわよ」

 取引が汚いなんて言ってられない。何とかしないとこのモンスターは増えるのだ。


 ぴえん……。


 今や死語となった言葉を発し、泣きべそ顔のアマビエ。それでも覚悟を決めたようだ。体をブルブルふるわせたかと思うと下半身魚の部分からうろこがモンスターめがけて飛んでいく。そのうろこはどうやら一枚一枚が刃物となったのか、モンスターの体に突き刺さっていった。

 

 ギャアー!


 空へつんざくような叫び声。マンドラゴラは土から引っこ抜かれると耳の鼓膜が破れそうな叫び声をあげるが、こんな声なのかもしれない。私たちはおもわず耳をふさいだ。

「よっしゃ、奴らの動きが鈍くなった!切り込むぞ」

 アルフォードの声掛けでケントと私も切りつけにかかった。ふたりの剣はモンスターの体を切り捨てていく。赤ちゃんモンスターも可哀そうだが情けを掛ける訳にいかないのだ。赤ちゃんモンスターは私の役目と考え、頭部の花がつぼみの内に切り離していく。


 ふと見るとピンクの粒の飛散が止まっている。花を先に腐らせたりつぼみの内に切り離したりした成果だ。

「行け!サラマンドラ」

 パリンの掛け声でサラマンドラが飛び立ち、モンスターファミリーに向けて火焔を放った。


 ボボボボボボ……。


 火焔がモンスターを包み込んでいく。

 

 ギャアー!

 

 炎の中で苦しみもだえるモンスターファミリー。ごめん、あんたに可哀そうなんて思うことができないんだ。しばらくするとそれらは消し炭さえ残らないほど燃やされてしまった。最後の煙が一筋登るころには森に静寂が訪れた。

「これで安心するのはまだ早いです。感染してしまった人の病気平癒をしないと死んでしまいますよ。もういいでしょう、元に戻してくださいよお。私はこの世界で可愛い神として存在したいんです。こんな姿を信者がみたら怪物にされてしまう。どうか元に戻してください……」

 切なるアマビエの訴え。もちろんパリンは意地悪じゃないからちゃんと元に戻したわよ。


 元に戻ったアマビエを抱くと、くちばしをパクパクさせて喜んだ。ってまたかわい子ぶりっ子している。


 ピンクの粒を飛散させていたモンスターを倒した私たちにはまだやらねばならないことがある。アマビエのお守りを渡したことで自ら感染してしまったマリスはアルフォードが肩を貸している。リンリンはというと、マリスから待たされたお守りが効いたのか、熱が引いたようだ。それでもまだぐったりしている。動くことのできないふたりを拡大させたサラマンドラに託し、私たちは町へ急いだ。


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