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【プロットタイプ】招きの栞

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

ものを買う時は大抵ギャンブルしている気分。

もうぐっちょぐちょで気持ち悪い。

瑠衣と私はあらゆる点で真反対だった。物の書き方一つとっても、生き様を残すか、死に様を残すか。執筆意外に何か興味があるか、ないか。動的か、静的か。

ただ一つ共通で言える事は、美しいと思う物にてんで弱い事だろう。


私の性格という物はあってないようなもの。常に自身の中にある駒を状況に応じて繰り出しているから。だから自分という物が無く、非常に熱しやすく冷めやすい。依存という言葉から遠くにいる存在でもある。つまり、依存しきって興が失せたらどうでも良くなってしまうのだ。

そうして今の暇潰しは栞集めである。たかが栞と侮るなかれ。世の中には数多の栞が存在する。紙製、金属製、布製、素材から形状に至るまで、様々なものが展開されている。その中でも一番心を惹き付けて止まない物は、金属で縁取られた金属製の栞だった。

元より、ステンドグラスは好きだ。目の前にすると何時までも見ていたくなる程に美しい。あの透明感のある色彩が、触れれば割れてしまいそうな脆さが、何よりも好きだった。

だから水族館や美術館、雑貨屋に訪れると、つい釘付けになってしまう。手が伸びてしまう。欲しいと……思ってしまう。どうせすぐに飽きる癖に。買って、集めて、忍ばせて、何もかも忘れてしまう癖に。それなのに欲しいと思ってしまうしまう。


今日もそんな日だった。瑠衣と一緒に雑貨店に訪れると、目の前にはアーチを形成した、ステンドグラス風の栞があった。描かれているのは、ずんぐりとした招き猫。ふてぶてしささえ感じるその表情は、何処か今いる隣人を思い浮かばせた。

買うべきか、買わざるべきか。そう思ってまずは値段を確認する。胸が締め付けられるお値段だった。それ故に数多の言い訳を並べ立てる。

すぐに飽きる。記憶の奥底に眠ってしまう。一つ買えば全シリーズ欲しくなってしまう。此処で歯止めを掛けなければ。

でも欲しい。スリーブに入れて、光に翳して、美術館に行けない時の足しにしたい。前に買った時もそうやって遊んだ。美しかった。買って良かったと涙した。

そう考えていると、胃がむかむかしてきた。頭の中で損得の天秤が揺れ動き、偏頭痛を引き起こした。

「ごめん。風に当たるために外出るわ。瑠衣たんはまだ居て良いからね」

「あぁ」

握っていた栞をフックに戻し、私は足早にその場を後にした。

物が欲しくて堪らない時。それでも必要性を感じない時。そういう時は欲しいものから物理的に距離を置くのが望ましい。見れば見るだけ苦しくなるだけだから。気持ち悪くなるだけだから。

そうして風に当たって、ぼーっとしていると、欲しかった物など全て忘れて無くなった行く。

よし。これで良い。このまま忘れてしまえ。というか人格を変えよう。女帝が良いかな。


隣人が居なくなってから、俺は彼奴が眺めていた栞に目を向けていた。ずんぐりとした、招き猫の栞。にこりともしない猫の顔はふてぶてしさを強調している。

彼奴は何も言わなかった。欲しいとも言わなかった。ただその栞を眺めた数秒間、瞳孔が伸縮を繰り返し、激しく揺れ動いた。彼奴が自分の人格に歯止めを掛ける時の癖だった。つまり相応な葛藤があったのだろう。

俺もその招き猫の栞を暫く見つめた後、この間の事を思い出した。彼奴は俺にギリシャの彫刻の栞を贈った。その借りをまだ返してない。まぁその借りを返したところで、『使う度に思い出してくれれば良い』などと言いそうだが。

俺は栞を裏返し、値段を見た。成程。金貨三枚分。やはり安くはないらしい。けどもまぁ、俺が見たい表情も見れたし、借りも返したい。だから。

「お願いします」


瑠衣が来るのを待ちながら、ぼーっとする。あれに手を出したら、歯止めが効かなくなる。全シリーズ集めたい。それこそ大して好きでもない物さえ集めたくなる。その癖飽きたら全て忘れて上書き保存。流石に物に失礼だ。

そう一人言い訳を連ねていると、瑠衣が店から出てきた。其れから何が薄いものを押し付ける。

「ほら」

「はい?」

「欲しかったんだろ」

渡されたのは招き猫の栞だった。ずんぐりとした、ふてぶてしい招き猫。同居人にも似た、何処か惹かれる栞。

凍りつく私を瑠衣は無言で見つめている。興味を持った顔だった。

「え、いや、その……払います……」

気持ちの整理が付かないまま出たのは、その言葉だった。『払います』という言葉を改めて反芻した後、私は鞄から財布を取り出す。

「この前、栞貰ったかんな」

「あれはこれの半分のお値打ち」

あの小さな栞が二つ変える。そもそも大きさが違う故に、値段も跳ね上がっているのだ。

「で?」

「せめて差額は払います……」

そう、金貨一枚と銀貨二枚を取り出して渡そうとすると、瑠衣は視線を逸らした。何かを考えている様で、沈黙が数秒続いた。

「俺はお前が知っての通り、人間が葛藤するのを見るのが好きだ。そしてそれに打ち勝つのを見るのが好きだ。だからその対価分」

顔は何時も通り無表情だった。だが瞳の奥が爛々と輝いている。そういえば、瑠衣はこういう人種だった。

「スリーブ入れて使う。使う度に思い出す。瑠衣たん死んでも形見にする」

「悪くねぇ発言だな」

とあるギャンブル漫画のワンシーン。

主人公ちゃんが、

『人生狂う程の多額の金銭を賭けて、笑うか泣くか分からない。現実さえ歪んで見えてしまう。これが堪らない……』

なんて仰ってましたが、あの気持ちが全然分からないので、ギャンブラーにはなれません。

泡吹いちゃうヨ!!

ちなみに買い物する時も似たような事になります。


私、物凄い飽き性なんですよ。ハマってる間は命は二の次でのめり込む癖に、飽きたらもうどうでも良い。

好きではあるけど、脳みそ焼かれる程じゃない。

依存しないのはただ単に飽き性だから。

『あ、君。もう良いよ』が来ちゃうから。


だから物を買う時、

『え、三日で飽きる癖に?』

『なんか美味いもの食べた方が幸せじゃない?』

『幅とるよ? 土地代どれだけ掛かるか知ってんの?』

『使わない。要らない。そんなの買ってどうするよ!!

売り切れ、個数制限あるほど人気なものなんだぞ!!

他に欲しい人いるじゃん!! その人に渡して愛でて欲しいって気持ち湧かねぇのか!!』

と言い聞かせます。


ただ夢中になってるときは

『でも欲じい〜!!』

『食べものは一瞬で消えるけど、物は未来永劫私のもの。監禁してやる!!』

『土地代は知らん。考えちゃ駄目』

『私だって大切に愛でるよ!! スリーブ入れて、光さえ当たらないところに監禁してやるよ!! ※大マジ』

なんて反論します。


※直射日光ってえげつなくて、劣化スピード凄まじいですよ。当てて大丈夫なの植物だけ。


まぁだから考えている間は気持ち悪い。

『これにウン十万賭けて、見返りあんのか? ないのか? 大丈夫なのか?』

モードに入るので、頭おかしくなります。


私の人格八割受け継いだ鏡花もそんな感じ。

人に渡す物は自分の元離れるから、どうでも良い。

どうしようと貴方の勝手。

『ただ出来れば思い出して欲しいかな!! うん!! クソデカ感情〜』という感じ。

でも自分の物にする時って『アンタそれ大事に出来んの?』との葛藤なんで、精神ぐっちゃぐちゃ。


ちなみに、この葛藤は瑠衣が好き。それ故に選んだ決断も好き。

『葛藤する』って事は人が真剣に何かを考えている証拠だから。そして『決断する』って事は一歩前に進めたという事だから。

この人間らしさ、何よりも一途な、人の強さを『美しい』と感じているから。

だから差額分は、『良いもの見れた』という鏡花へのお布施です。

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