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彼女

 葬儀は淡々と進んでいた。お焼香の際、遺影を見た。三十数年前のみずみずしい彼女の顔が思い出された。席に戻り、住職がお経を唱える中、もう一つ思い出したことがあった。あれは煌々の国語の授業の時だった。先生が前の週に書かせた短歌を何首か紹介した中に、彼女が詠んだものがあった。内容は前の席の男子が髪を短く切ったのを見て夏が来たのを感じます、みたいな感じの三十一音だった。私は部活の地区大会の前に気合を入れる意味を込めて髪をバッサリと切っていた。後ろの席は彼女だった。つまりは、私のことを詠んだのだった。それは教室内の誰しもにも理解できたようで、先生が詠み終わると視線が一斉に私に向けられた。私と言えば、後ろの席を振り返って彼女を見た。彼女はしてやったりみたいな顔だったような記憶がある。彼女と恋愛関係にあったわけでもなく、ただ男女の間では親しい方ではあった。彼女の友人に気を持った時など彼女に相談をしたくらいだ。懐かしい。

 住職のお経が終わった。もう一度遺影を見た。やはり私にはあの時の彼女の顔が思い出されて仕方なかった。



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