第二十五話 功績とその代償
--フランドル王国--グレムリン伯爵邸
「お待ちしておりました。ヘクトール男爵そしてミレア様」
「久しぶり」「お父様は元気かしら?」
「はい、お変わりなく。」「現在は自室で書類の整理を行っております。」
「まったく、こういう時でも仕事なのね」「せっかく孫が遊びに来るっていうのに」
「まぁ、そんな気に病むことないさ。グレムリン伯爵も多忙の中お時間を作ってくださったんだ」
--グレムリンの自室--
ガルバーダとジェラルドが倒された。幸いガルバーダの方は魂が無事だったため肉体を再構築すれば復活する。
問題はジェラルドの方だ。
魂もろとも両断されている、ガイアめ、、、
つくづく私を不快にさせるのが好きなようだな。魂の再構築には肉体と違ってかなりの時間がかかる。
それに人間の身では使用できる神の権能が限られる、魂の再構築となると1週間は身動きが取れない。
その間に奴らに攻め込まれでもされたら終わりだ。
どうする、、、
ペカリオの行方も依然不明なままだ。
《だいぶ不満げだな、憎しみの創造神》
「発言を許した覚えはないぞ、"リーゲンタル"」
《わしの体じゃ、喋りたい時に喋りたいことを喋る》《お主とは長い付き合いじゃ、今どういう気持ちかなんて手に取るようにわかるぞ》
「あの時、人格を消しておくんだった」
《さすればお主は肉体を維持できなくなり、また神魂の状態に逆戻りだったであろうな》
「これだから特異体質の者は厄介なんだ」「本来であれば受肉時に元の人格は消滅する」「だが、特異体質の者の場合は人格が残り、体や年齢の成長と共に人格も成長する」
《無理に人格を消そうとすれば肉体を維持できなくなり魂だけの状態になってしまう、そうじゃったよな?》
「勘違いするなよ、それはあくまで神以外の者が受肉を行った場合の話だ」「創造神にはそんな縛りなど存在しない」
《だが、ガイア様によって力の殆どを失ったお主ではその縛りを受けざるおえないと》
「そうだ、全てあの神気取りが元凶なのだよ」「いや、そもそも奴を生み出した全ての創造神、あいつが全ての元凶だ。」
《万物、理、概念、世界の根本の生みの親、全知全能絶対神全ての創造神様、あの御方がガイア様を、、素晴らしい》
「何も素晴らしくはない、奴があのバケモノを誕生させなければ私は人間や他の種族達から、、、」《何故だ?何故そこまで人間族達にこだわる》《お主への信仰は殆どが魔族であろう》
《なのに何故、、、そのせいでわしは物心ついた頃から肉体の主導権はお主にあった》《両親からも親友からも妻からも娘からも寵愛や親しみを受けていたのは全てお主だ》
《わしはただお主を通してそれを眺めることしか出来なかったのだぞ》《お主に分かるか?意識だけが残され体を思うように動かせない地獄を、声の届く場所にいるのに己の気持ちすらも伝えられない虚しさを》
「私はただ、、コンコンコン
「グレムリン様、ヘクトール夫妻がお見えになられました」
「そうか、通してくれ」
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--天空城パルテン--軍事会議室
「それでは始めようか」
「グリウォークくんの処遇の前に我々、空の精鋭の軍事法第12条を改めて認識しておきましょうか」
「今更そんなことする必要ないだろ」
「ならヨルガン、せっかくだから君に説明してもらおう」「今回は僕ら以外にもお客さんもいることだし」
「かしこまりました」
「軍法会議第12条、空の精鋭が独自で遂行している全ての事象に他種族を決して干渉させてはならない」「ただし、任務の遂行にあたって他種族の協力又は干渉せざるを得ない状況の場合は上の許可を得る必要がある。」「これは、他種族の信頼や命を最優先して作られた法だ、それをあやつは陛下の許可もなく自身の勝手な判断で関係ない人間を干渉させた」「到底許されることではない」
まさか、バルカンのやつそんな決まりがあることを知ったうえでオルターちゃんを巻き込んだのか?!
いや、確かにあいつはうぜぇ奴だけど規則を破るような腐ったやつではない。
あの場でオルターちゃんを追い返さなかったのはあいつなりの考えがあってのことだと思う。現に幹部の一人を倒してなおかつ二人とも生き残っている。
「ちょっといいですか?」
「なにか意見があるのかい?ショウタ君」
「ヨルガンさんでしたっけ?」
「如何にも」
「オルターちゃんを巻き込んだのはグリウォークだけじゃありません」「俺もその場にいました、だから今回の件は俺の責任でもある!」
こんなこと言ったところでバルカンの処遇が変わるわるだなんて思っていない。だが、言わないよりはマシだろ!
せめて俺にも責任があるってことをこの場で伝えなければ
「だから処分するならこの俺もいっしょに...「君はさっきから何を言っているんだ?」
「え?」
「初めから言っているだろ。これは我々"天翼族"の問題だ」「今回の任務、うちから他種族に協力要請を出したのは2人だけ」
「ガイア様と君だよ」「誰が通りすがりの少女もセットで付けていいって言ったよ」「要請を受けた側に責任を負う義務はない、つまり君が今できることは何も無いのだよ。分かるかい?」「だから今回君はただそこで...「いいや、分かんないですね」
「は?」
「俺、あんま頭良くないッスからこの国の政治やら法律やら分かんないっスけど」「結果的には2人とも生きて帰ってきたんだし、それに組織の幹部も1人倒してるんですよ!」「だからせめて少しでもっ...バン!
大きく机を叩く音が翔太が座っている右斜めの席から聞こえてきた。音の方に目をやると鋭い目つきでこちらを睨みつけてくる者がいた。銀髪でコモン・ローにした彼こそが空の精鋭2番隊隊長ゲルウェンである。
「黙って聞いてりゃぁぺちゃくちゃぺちゃくちゃ調子のいいこと抜かしやがって」「人間族のガキ1人に何ができるって言うんだよ!」
「ゲルウェン一旦落ち着け」
「あぁ?そもそもダナ、お前の息子がしでかしたせいでこんな事になっているんだぞ!」「それを分かって言ってるんだよな?」
「陛下の御前だ。恥を晒すな」ゴゴゴッ
「...っ、チッ」
なんだ、今の威圧、、、心臓を鷲掴みされたような感覚。
あの赤髪にキリッとした目元、間違えねぇあの人がバルカンの親父か。
まだ汗が止まらない。
「よし、それじゃあ意見をまとめようか」
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--2時間後--
あれから意見が代替まとまり、最終的な判決がウィリアムさんからバルカンに言い渡された。
内容は以下の通り
『此度の件で被告人は無関係な一般人を巻き込んだことにより、称号剥奪と除隊を言い渡されるのが本来の規則。ただし今回の成果として三大組織の敵幹部の討伐及び拠点の破壊に大きく貢献したこと。また七星王"ガイア"、"ウィリアム"の温情により称号剥奪と除隊は免除される結果となった。』『ただし、免除される代わりに半年間の謹慎処分加えて職務停止、また所有している武器の没収、魔法の使用を一切禁止。これらがグリウォークに言い渡された処罰』『もちろん1つでも破れば称号剥奪と除隊が即言い渡される上に"天空牢獄バビロン"に投獄される。』
余談だが会議の最中バルカンはどこにいたかと言うと城の地下牢に入れられていたらしい。
☆おまけ☆
登場キャラ紹介
名前:ゲルウェン、ドゥレアス
性別:男
年齢:421歳
種族:天翼族
身長:193cm
体重:88kg
所属:空の精鋭
使用する武器:両刃の両手斧
得意魔法:疾風、光聖、雷撃、無類
性格:荒っぽく曲がったことが嫌い。また誰よりも規律を重んじ遵守する。そのため破る者は全て悪と決めつけ徹底的に排除すると言う思想を持ち合わせている。