第二十三話 不可視の一撃
--ピレイウス炭鉱跡地--入口前
あそこがバルカンの言ってた例の炭鉱跡地か。
入口には防護結界、その奥にも罠が張り巡らせているな。さらに奥に無数の生体反応、一つ一つ対処するのは少し面倒だな。
それに、あの妹想いの王女の頼みも聞かなきゃならねぇし。
--数時間前--イラリアの自室
「私と妹は元々仲が悪い関係ではありませんでした。」
「むしろ仲はいい方で幼い頃はよく城の中庭で遊んだものです。」
「ですが半年前」
「妹は人が変わったように口を聞かなくなり、さらには夜間の外出も増えたのです」「この国の王族は夜間の外出が禁止されています」「昼の間でも護衛を2人ほど付けていないと外出することができません」
「それなのにもかかわらず妹はここ最近一人で外出するのが増えている」
「城の者たちもそれを確認し、何度も注意をしたのですが全く聞く耳を持ってくれませんでした」「いつものあの子なら素直に聞き入れるのに…」
「なるほどな、お前らの仲はよく分かった」「ではやはり、妹の身に何かあったのですか?!」
「これ以上話すつもりはない、お前はただ妹の帰りを待っていろ」
「妹を連れ戻してくれるのですか?そのどこの誰とも分からないような方が」
「約束はできねぇな」
「じゃあなぜ」「さぁな、後のことはお天道様にでも聞いてみな」
「なんですかそれ」
--現在--ピレウス炭鉱跡地
入口の防護結界は無効化すれば簡単に侵入できるし、中に設置されている罠も俺には効かない。
奥にいる連中も認識阻害と透明化を駆使すればなんの問題もない。
あとは憎しみの創造神に繋がる手がかりを見つけるだけ。とっとと終わらせよう。
ん?アレは………なるほどな
つまりここは裏ルートで手に入れた武器や違法薬物などが運び込まれる、言うなれば炭鉱跡地を利用した倉庫か。それを地方の裏組織に売りさばいて金にしてる。恐らくペカリオが裏で権力を使って武器や薬の入手を可能にしてるのだろう。
他にも人身売買や臓器売買など他じゃ手に入らないものを次々と仕入れているのか。
「おい、聞いたか」
「何をだよ?」
「先日闇オークションに出されたスクベラの第二王女、フランドル王国のソニヴァート男爵が落札したらしいぜ」
「マジかよ、確かあそこ貴族って…..」
「あぁ、童顔の娘だけを自分の奴隷にしてやりたい放題やるって噂のやべぇ貴族だ」
「だよな、しかも童顔だったら人間以外の種族にも手を出すって噂もある」
「まぁでも、俺らからしたら金さえ入ってくれればなんだっていいがな」
バルカンの言ってた2週間前に攫われた王女のことか、そんでオークションで売り飛ばされてそのまま奴隷ね、、、
《上級無類魔法"分身体"》
シュッ
「攫われた王女を奪還し、他の奴隷も解放しろ」
「言われずともそのつもりだ」
ヒュンッ!
さて、こんな胸糞悪いとこはとっとと破壊しておくか。
--ピレウス炭鉱跡地【黒の十字架団第3拠点】--管理室兼ジェラルドの自室
よし先週取り寄せた魔法薬の売れ行きは上々、この調子で他の商品の売上も伸ばしていくか。
あとは、この報告書はまた別件か。『第5拠点に乗り込んできた侵入者2名。1人は空の精鋭の副隊長打首のバルカン、もう1人は最近新たに誕生したミスリル級の冒険者。』
『それぞれクロスウォリアーが対応したが、空の精鋭と対峙したガルバーダは死亡。ヴェンチダは自身の人口魔獣でミスリル冒険者を応戦』か、、、
冒険者の方は恐らく先日サギリの部下を殺した張本人だろう
まったく面倒事を起こしおって、結局後始末をするのはこの俺なんだぞ。なぜその辺を考えて行動できない。猿以下の知能持つ奴の考えは理解し難いな…
さて、そろそろ新しい商品が運び込まれるから準備をしないとな。っとその前に、、、
「そろそろ出てきたらどうだ?」「まさかそんなんで隠れてるつもりじゃないよな」
「さすが、組織の幹部なだけあるな」「この程度の隠蔽魔法は簡単に見破るか」
「何者だと聞くのは愚問か、大方第5拠点に侵入してきた奴らの仲間だろう」
「そう思うか?」
「まぁ、どっちにしろタダでは帰さん」「特別に選ばえてやろう、イカれた貴族連中の奴隷として売りに出されるかこのまま死ぬか」
「さぁ、どっちがi...「あ~ちょっと待て」
「は?」
《どうしたバルカン》
《ガイア様、突然の念話失礼します。先ほど幹部の一人を始末しました》
《そうか、で今の状況は?》
《はい、あらかた内部を調べたんですが、めぼしい物は何もなくこのまま帰還しようと思います》
《わかった俺もすぐに合流する》
《はっ!》
《ところで翔太はそこにいるか?》
《そのことなんですが》
念話か、、大方他の仲間と念話で情報共有をしているのだろう。そんなの黙って眺めてるわけないだろ。
売り飛ばすのはやめだ。ここで殺す。
《魂の聖っ....シャンッ
「俺もちょうど終わった。今向かう」
「は、何言って....スゥーーーズルッ
その瞬間ジェラルドの視界は半分に割れた。
アースが指を上に振り上げた瞬間ジェラルドの体は縦真っ二つにされたのだ。ジェラルドは決して警戒を緩めなかった。それでも尚認識することすらできないほどの攻撃
バルカンや翔太では苦戦するほどの相手でもアースからすれば虫を一匹殺すのと等しい。
まさに圧倒的な実力の差
アースと対峙した瞬間ジェラルドの負けは確定していた。
「結局、憎しみの創造神の手がかりも王女姿もねぇ、、」「ここを破壊してバルカンの元に行くか」
--アダブ廃教会--翔太サイド
シュインッ!
キンッ!
バチバチッ!
ザシュッ!
クッソ!こいつ何度切っても再生してくる!!
このままじゃあこっちの魔力が減っていく一方だ!
しかもこいつ魔法を吸収する度に傷口が癒えて回復していく、、
たくっキリがねぇ!
《グォォォォォォォォォ!》
ズドーーーーーーーーーン!
どうにかして、魔法以外でこのバケモノを倒す方法を見つけねぇと!
…
……
………
ん?待てよ、魔法以外…あるじゃねぇか、魔法を使わずに倒す方法がよ〜!
なんで今まで忘れてたんだ、これならこいつを跡形もなく吹き飛ばせる!!
--修行開始から1年が経過した頃--
ズドーーーーーーーーーン!
「まぁこんなとこだろう」
「…やば、、、魔力を一切込めず木刀と素の力だけで半径数百キロが更地になった……」
「ほら」スッ
「はい?なんすか?」
「今からその木刀で素振り10万回しろ」
「うん、絶対言うと思った…」
「もちろん魔力の使用は禁止だ。素の力だけでやらなければ意味が無い」
「よし始め」「いやいやいや!冗談にしても笑えないですって!」
「魔力なしで素振り10万回はもはや拷問ですよ!」
「それにこの木刀地味に重いし、これで素振りなんて流石に…」「いいか、1回1回本気の力を込めて振れよ」
「俺はその間に晩飯の用意してるから終わったら戻ってこい」
「待ってくださいよ本気で言ってるんっ…ガチャ
「あ、終わった」
「つまり終わるまで飯抜き…」
--現在--
あの時は本当に死ぬかと思った。いや、いつもマジで死にそうな感じだけど、あれだけは本当にヤバかった。
体だけじゃなくて精神もあそこまで追い込まれるとは思わなかった…
だけど、それがあったから今この怪物を葬り去ることが出来る!
《グガァァァァ!》
ズドスドズドッ
真っ直ぐこっちに向かってくるのは好都合!
できるだけ引き寄せてから叩き込む
、
、、
、、、ここだ
スゥーハァー
《素剣流"振り下ろし"》
ズバーーーーーーーーーーーーン!!!
.
..
...
....
ドサッ
ふぅ〜何とか倒せた…
もうしばらくあーいう感じのとは戦いたくねぇわ、、、
--天空城パルテン--
「へぇ〜中々やるねぇ、ガイアの弟子」
--東方大陸--蓮ノ国のとある宿
「お頭、明日にはこの国を出発して中央大陸方面に向かうけど準備できてんの?」
「…」
「どったの?タケマルのお頭」
「ヒビキ、おめぇはこの波長を感じひんのか?」
「は?何言って…ん!?この感じは?!」
「あぁ、また新たな世代が生まれようとしとる」
「方角はちょうど中央大陸の方だからお頭の楽しみが1つできたな」
「この事を他の連中にも伝えてこい」
「ヘイ!」
--ピレウス王国--王国騎士団訓練所
王城と隣接してるこの施設は本来騎士団員の訓練所として使われているが今は騎士団だけじゃなく召喚された勇者達の訓練にも使われている。
「なぁ最近この国騒がしくねぇか?」
「そうか?」
「そうだろ、この間なんて西方都市の路地裏で身元不明の焼き焦げた左足が見つかったろ」
「あぁ、そういえばそうだったな」
「お前少しは気にした方がいいんじゃないか?」
「むしろ矢部、お前が神経質になりすぎなんだよ」
【ピレウス王国所属勇者候補の1人"小早川 蓮斗"】
「俺はただいざって時に自分の身を守れるようにしておきたいだけだ」
【ピレウス王国所属勇者候補の1人"矢部 慎太郎"】