第十六話 天翼族のプライド
--ピレウス王国--アダブ廃教会
ピレウス王国の外れに位置する廃教会。
かつては神を崇める場として利用されていたがいつしか使われなくなり人々からも忘れ去られた。
そのため取り壊させることも無く、長い間ずっと放置されたため建物の外壁は苔で覆われ一部破損してる箇所もある。
だが、そんな廃教会をある組織が秘密裏に利用してるとかしてないとか...
--アダブ廃教会--地下室
ドンッ!
「なぁ、こんな面倒なことしてねぇで今からでも潰しに行こうぜ!」
【黒の十字架団、クロスウォリアー№5 黒拳の"ガバルーダ”】
「オイオイ誰かね、我々の中にオークを招き入れたのは」
【黒の十字架団、クロスウォリアー№4 魔の芸術家"ヴェンチダ”】
「あ?貴様を今すぐオークの餌にしてやろうか?」
「いや私としては君の四肢をもぎ取りそれを人体標本にする方が芸術的だと思うがね」
「なんでもいいがやるなら早くしてくれ、このあと商品の入荷があるんだ」
【黒の十字架団、クロスウォリアー№3 吸血の"ジェラルド”】
「てか、グレアスの姿がないけどまさか遅刻じゃないわよね?」
【黒の十字架団、クロスウォリアー№2 狂殺姫"サギリ”】
「んなことより俺はこのマッドサイエンティストをどう料理してやるか考えるので忙しい」
「あの人が時間通りに来ること自体が珍しいでしょう~、それに私は科学者ではなく芸術家だがね」
「お前らの事情など知るか、こっちにはまだ仕事が残ってるんだ」
「これだから男共は」
カツカツカツ
部屋の出入口から聞こえた足音。
4人が一斉に出入口の方に視線をやる。
暗くて目視できないが誰が来るかは言うまでもない。だが、どうしても油断できないという微かな警戒心をこの場にいる4人に抱かせる。
「ごめん遅くなった、それじゃあ幹部会議を始めようか」
【黒の十字架団、クロスウォリアー№1 漆黒者"グレアス"】
「おい、てめぇから呼び出しておいて遅れるとはいいご身分だな」
「だからごめんと言ってるだろ、それにここに来るまでに面白いものを拾ってね」
ガバッ
ドスン
「ほう、これは興味深い」
「なんだこいつ誰だよ」
グハァ!
ゴホッゴホッ
「最近黒の十字架団をしつこく嗅ぎまわってる冒険者パーティ"青薔薇"の1人さ」
「なるほどねこの子が、でももう虫の息じゃない」
「あぁ、ここに向かう途中で待ち伏せされてね、遅れたのもそれが原因さ」
「そういうことか!ならこいつを殺せば一件落着だな!」
「いや、この者は私が生きたまま解体して人体標本にします」ニヤ
「この事を言うためにわざわざ俺らを呼んだのか?」
「いや、他にも伝えようと思ってることがいくつかあるんだ」
--レブーン王国--冒険者ギルド
「それではこちらがお二人の新たな冒険者ライセンスでございます」
「ミスリル級冒険者への繰り上げ昇級おめでとうございます」
「お〜!なんか派手っすね」
「受け取ったなら早く行くぞ」
「おいおいそこのお二人さんちょっと待てよ」
「えっと誰でしたっけ?」
「あ?」
「ドーベル忘れられてるわよ」
「彼からしたら眼中にないみたいだね」
「おい、翔太行くぞ」
「あ!待ってくださいよ」
タッタッタッタ
「...」
「まぁ、これが現実だってということだ」
「俺は兄貴に一生ついていきますよ!」
「天才からしたら凡人なんて興味すらないでしょうね」
--冒険者ギルド--出入口前
ガチャッ
「悪い遅くなった」
「いえ、私も今来たところですので」
待ち合わせしてたカップルかよ、、、
猫かぶりやがって、俺の時との態度の温度差みたら風邪ひくわ!
「いや~意外と時間かかっちゃいましたもんね」
「貴様のせいでガイア様の貴重なお時間が失われたのだ、自覚しろ無能が」
「あ?お前さっき今来たとか言ってただろ」
フン
こいつマジで八つ裂きにしてやろうか
流石の俺でも堪忍袋の緒が切れるぞ
「いがみ合いしてねぇでさっさとピレウスに向かうぞ」
「それでは馬車乗り場に向かいましょう」
「馬車?なんで馬車なんか使うんだ」
「ではどのような手段でピレウスに向かうんですか?」
「空を飛んでいくにしても数日はかかりますよ」
「分かってねぇなバルカン君や、俺と師匠がそんなかかるわけないじゃない」
「ガイア様ならまだしも貴様が天翼族と同等のスピードで飛行できるわけないだろ」
「フフッ、それはどういう意味かな?」
--数十分後--
ビュン!
なんなんだこの2人は!?
空は我ら天翼族のテリトリー、それなのにも関わらず天翼族である俺より速いだと!?
確かにピレウスまで馬車で行くより空を飛んで行った方が早い。だが、俺のような隊長格ならまだしも他の空の精鋭の奴らでもレブーン王国からピレウスまで数日はかかる。
しかも、なぜ貴様が俺の前を飛んでる!全力で飛行中だそ!
それになんだその紺碧の翼は、天翼族の翼と似ているがなんとも汚らわしく醜い色だ。
翼というのは純白でなければならないのだ!
純白の翼は高貴かつ潔白の証、より白く輝く翼が美しいとされているのに貴様はその薄汚い翼で俺の前を飛ぶとは、なんという侮辱。
後で覚えてろよ!
「あ、見えてきましたね!」
「あぁ」
「本当に数分で到着するとは、、、」
「それじゃあ行くぞ」
「はい」
「ガイア様すいません、少しお弟子さんとお話をしてもよろしいでしょうか?」
「構わねぇがあまり遅くなるなよ」
「はっ」
「いや、俺は許可してないよ?」
「貴様の了承など必要ない、これは命令だ」
なんなんだよこいつ、とことん自分勝手だな
天翼族ってのは殆どかこうなのかよ、だとしたら今後は関わりたくねぇな
「で、話ってなんだよ」
「その翼なんだ」
「は?」
「貴様のその翼はなんだと聞いてるだ!」
「おい、話があるって言うから何かと思えばこれか?」
「その醜い翼を俺に見せるな!」
「なんだよ聞いてきたのはそっちだろうが」
「どこでその翼を手に入れた」
「どこも何もこれは俺の技能だわ」
「なに?」
「神話級技能の一つ飛翼神之力だ」
なに、技能だと?
しかもこいつ今なんと言った?神話級技能?
有り得ん、神話級技能は世界的に見ても一部の猛者のみしか会得できん生物を超越した力だ。この俺ですらまだ会得できてないと言うのに
はったりか、いやだとしたら俺の飛行スピードを上回れるはずがない。
「もういいだろ、早く師匠のところに行かないとまた怒られちまう」
「おい、まてまだ話は、、」
ヒュン!
面白い、ここまでプライドをズタズタにされたのは何年ぶりか。
いいだろ、ショウタとか言ったか。
今は無理でもいつか貴様を越して俺がガイア様の隣並ぶ存在になってやる
--天空城パルテン--王執務室
「陛下、うちのバカ息子は上手くやってますか?」
「あぁ、グリウォークはいつも上手くやってくれてるよ」
「今回の任務も張り切ってたし」
「それは、あの御方とご一緒に行動できるからなのでは?」
「まぁ、それもあるね」
「あいつは昔からあの御方の大ファンでしたから、粗相がないといいのですが」
「でも、僕は彼からまた別の闘志を感じたけどね」
「それは、どういう?」
「さぁ、そこまでは僕も解らないよ」
「それより、君の部隊の任務は大丈夫なの?」
「えぇ、それに関しましては問題なく進んでおります」
「なら良かった、じゃあ頼むよ"ダナウォーク"」
「はっ!」
【空の精鋭一番隊隊長兼空の精鋭総隊長"ダナウォーク、バルカン】