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西 遊 補  作者: 原 海象
22/22

第二十二回 梧空 虚空菩薩に叩き起こされ、青々世界から帰還、結局は三蔵の肉が目当て

初めまして!原 海象と申します。

今回は『西遊記』の外伝(SS小説?)である神魔小説『西遊補』を編訳したものを投稿致しました。なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は千六百年頃の明の時代に書かれたとされております。原作者は董若雨です。

本書は削除版ですので、原書が読みたい方は東洋文庫(鏡の国の孫悟空「西遊補」)をお読みください。多分絶版になっているので図書館で検索すればあるかもしれません。


<西 遊 補>

第二十二回 梧空 虚空菩薩に叩き起こされ、青々世界から帰還、結局は三蔵の肉が目当て



梧空はすぐに我慢ができなくなって、天宮を大混乱に落とし入れた折の、三面六臂の本性を現わし、空中でやたらに如意棒を振りまわしました。すると、後ろから大声で呼ばわるものがおります。


「梧空は空を悟らず。梧幻は幻を悟らず」


梧空は振り向いて尋ねます。

「てめえはどっちの味方だ。大胆にも俺に盾突くとは」

頭をもたげると、蓮台が見え、一人の尊者が坐っており。再び叫びました。

「梧空よ、今でもまだ目覚めないか!」

梧空はやって如意棒を振り回すのをやめ、尊者に向かって「あんたはどちらさんで?」


「わたしは虚空菩薩だ。おまえがニセの天地に長居しているのを見かねて、わざわざ目をさまさせに来てやった。お前の本物の師父は今や空腹だぞ」

梧空は少しずつ意識がはっきりし、これまでの出来事はみんな心の迷いだと気づきました。


懸命に気持ちを静めると、もはや疑いを持たず、ひたすら虚空菩薩に合掌して教えを請います。

虚空菩薩「梧空、おまえはさっきまで鯖魚せいぎょの気の中におり、やつにとりつかれていたのだ」


梧空はまた尋ねます。「鯖魚せいぎょはどんな妖怪です?天地世界を造り出せるとは」

「天地が初めて分かれたとき、清浄なものは上へ、濁ったものは下へ、それぞれ分かれて行った。半ば清浄半ば濁ったものは真ん中に残った。それが人間だ。


殆ど清浄でわずかに濁ったものが花果山に帰着し、梧空が生まれた。殆ど濁りきって、わずかばかり清浄なものは小月洞に帰着し鯖魚が生まれた。


鯖魚せいぎょと梧空は、同年・同月・同日・同時にこの世に生まれた。けれども梧空は正、鯖魚は邪で、神通力の広大さは梧空を優ること十倍だ。その体はとてつもなく大きく、頭は崑崙山にのせ、足は幽迷国に届く。いま実部の天地は狭すぎて、かりの幻部に住み、青々世界と自称しておる」



「幻部・実部というのは何なのです」

「大自然は三部に分かれ、一つは夢幻部、一つは幻部、一つは実部だ」

そこでを唱えます。

また春の男女も無し  これぞ鯖魚のこん

また新天子も無し   これぞ鯖魚の能

また青き竹箒も無し  これぞ鯖魚の名

また将軍の詔も無し  これぞ鯖魚のふみ

またさく天の斧も無し これぞ鯖魚の形

また小月王も無し   これぞ鯖魚の精

また万鏡楼も無し   これぞ鯖魚が成す

また鏡の中の人も無し これぞ鯖魚の身

また頭痛世界も無し  これぞ鯖魚がおこ

また緑珠楼も無し   これぞ鯖魚の心

また楚の項羽も無し  これぞ鯖魚の塊

また虞美人も無し   これぞ鯖魚の目くらまし

また閻魔王も無し   これぞ鯖魚の境

また古人世界も無し  これぞ鯖魚が成す

また未来世界も無し  これぞ鯖魚が凝らす

また節卦の帳も無し  これぞ鯖魚の宮

また唐の旦那も無し  これぞ鯖魚のもてあそ

また歌舞の能も無し  これぞ鯖魚の性

また翠嬢の鳴くも無し これぞ鯖魚の尽り

また点将台も無し   これぞ鯖魚の動き

また蜜王の戦も無し  これぞ鯖魚のさわぎ

また鯖魚なる者も無し これぞ孫行者の情


を唱えおわると、つむじ風が起こり、梧空は元の山道に吹き戻します。

ふと見れば牡丹の木にさしている日脚はまったく動いていないではありませんか。


さて本物の三蔵は春のうたたねから目を覚まし、目の前にいた男女もとっくにいなくなっていて、大喜び、ただ梧空だけが見当たらず、梧能余悟浄余と呼び起こし

「梧空はどこへ行った?」と尋ねます。


八戒も悟浄も「存じません」



ふと気づけば観音菩薩の弟子の木叉もくさが上品な和尚を連れ、東南の方から瑞雲に乗って降りて来ながら、叫びました。


「唐よりお越しの和尚さま。新弟子を取ってくれませんか?大聖はすぐに来られます」

三蔵はあわてて地にひざまずき拝礼しました。

木叉もくさは「観音菩薩はあなたが西方への途上で苦労していることを考え。弟子をもう一人送って来られた。ただしまだ若いので、色々気をつけてください。観音菩薩は梧青ごせいという法名を既につけられました。また観音菩薩は『梧青は和尚の四人目の弟子になるが序列は梧空の下、梧能の上とせよ。四人合わせると空・青・能・浄の四字になる』と言っておられました。」

三蔵は観音菩薩の法旨みむねを承ると、弟子として受け入れ、木叉もくさを見送りました。


実は鯖魚の精が梧空の心を惑わしたのは、三蔵の肉を食わんがため、というわけで、大聖につきまとう一方、小坊主の姿に化け、三蔵をだましにかかったのです。

意外なことには、大聖はすでに虚空菩薩によって目覚めへと導かれていました。まさに「妖邪千般の計を用い尽くすも、心正しければ従来いっこうに魔をおそれず」であります。


さて、梧空は空中を飛んで来るうち、師父のお側に小坊主が一人坐り、そこから妖気が高々と上がっているのを見て、これは鯖魚の精が化けたものと察知し、耳から棒を取り出すと、有無を言わさず打ってかかりました。小坊主はたちまち鯖魚の屍に変わり、口から赤い光を放ちます。梧空が見つめていると、赤い光の中に、楼台が出現、楼の中には覇王項羽が立ち

「虞美人、こっちにおいで」と叫んでいます。


その赤い光はまっすぐ東南の方角へ消え去りました。

三蔵は言います。「梧空、私はホントに腹ペコだ」

梧空はそれを聞いてあわただしく向き直り最敬礼。この間の出来事を初めから終わりまで語りました。実は三蔵は梧空が来ずに、いらいらしていたところへ、帰って来たと思ったら、新弟子を叩き殺してしまいました。ぐっと頭に血がのぼりまして二言も三言も文句を言ってやろうと思ったのですが、新弟子が鯖魚の屍に変わったのを見て、何もかも梧空の好意からなのであり、新弟子が妖怪だったとそこは納得したのです。さらに梧空の話はとてもすごいものだったのでやっと怒りが喜びに変って言いました。

「弟子よ、ご苦労だったな」

八戒「梧空は遊びに行って、苦労をねぎらわれるのに、おいらたちが苦労をして来ると、師父は遊んでいたとおっしゃりそうで」

三蔵は八戒を怒鳴りつけて黙らせると、梧空に尋ねました。


「お前は青々世界で幾日も過ごしたらしいが、こちらじゃあ何故一刻しか時間が経たなかったのか」



「心は迷うが、時間は迷いませんから」

「心の方が長いのか、時間の方が長いのか」

「心が時間より短い人は仏で、時間が心より短い人は魔物です」



沙悟浄は言います。「妖魔はすっかり退治され、この世は静かになった。師兄、やはり先の村まで托鉢に行ってくれ。師父にはしばらく静坐してもらい。それから西方へ出発しよう」

梧空は承諾してさっさと歩きだします。



百歩あまり進むと、突然土地神に出会いました。

梧空は怒鳴りつけ「ほんとうに馬鹿にしている。俺がこないだお前さんにものを尋ねようと呪文を唱えたとき、ちっとも出て来なかったじゃないか。世の中にこんなに態度がでかい土地神がいたとは、さっさと足を伸ばせ、百叩きにしてからのことにしよう」

土地神曰く「今まで大聖様は情魔のため人外境に引き込まれておりましたので小神の力にも限りがあり、人外境にかけつけて頭を地面にすりつけてご挨拶致すなど、どうしてできましょう。どうかお願いがございます。手柄を立てましたので、罪一等を減じてください」

「どんな手柄を立てたんだね」

「猪八戒さまの耳の穴につまっていた花びらのかたまりを小神それがしの手で取ってさし上げました」

これを聞いて梧空はただちに土地神をどなりつけ退散させると、ひたむきに托鉢に向かいます。急ぎ空中に飛び上がり、桃の花咲くあたりを見渡しますと、一筋の炊煙が森からほのかに立ち上がっています。すぐに雲を下へ向け、近づいてみると、案の定ちゃんとした大家でした。梧空はその中へ駆け込み。早速托鉢しようとしたところ、不意に学舎に行き当たったのです。学舎の中には先生が一人、生徒を数人か集めてある書物を講釈しています。どういう箇所を講釈していたと思われる。ちょうどやっているのはここでした。

『天地を範囲して過ごさず』


*天地の化を範囲として過ごさず。易は千変万化してとりとめがない

天地の造化の流れを鋳型にはめ、人間に示す


最後まで読んで頂きありがとうございます!

これにて西遊補は終わります。本書のテーマは『情』でして色々な情により梧空は惑わされるということらしいです。しかし、西遊記のSS小説というより原作者の詩文が多く前回の南遊記と比較すると面白くないです(苦笑) 是非、私の編訳した南遊記もお読みください!!

話のなかで始皇帝やその鈴はどうなったかなどは未記載ですのでどーなったのでしょうか不明です。

気になったお方は東洋文庫の鏡の中の梧空をお読みください。

ありがとうございました!! 三拝九拝

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