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西 遊 補  作者: 原 海象
18/22

第十八回 梧空 三蔵が俗欲にまみれ激怒し、小月王を殺害するが未遂に終わる

初めまして!原 海象と申します。


今回は『西遊記』の外伝(SS小説?)である神魔小説『西遊補』を編訳したものを投稿致しました。なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は千六百年頃の明の時代に書かれたとされております。原作者は董若雨です。

本書は削除版ですので、原書が読みたい方は東洋文庫(鏡の国の孫悟空「西遊補」)をお読みください。多分絶版になっているので図書館で検索すればあるかもしれません。


<西 遊 補>

第十八回 梧空 三蔵が俗欲にまみれ激怒し、小月王を殺害するが未遂に終わる



梧空はどんどん歩いて、一座の飲虹台いんこうだいに到着しましたが師父が見当たりません。

梧空はいよいよ苛つきますが、ふと振り向いて見れば目の前は広々とした緑の水面、真ん中に水殿が一つ、殿中に明時代で流行した方巾ほうきんをかぶった人が二人坐ってます。

梧空は少し疑念を抱き、忙しく楼に近接する山の上に飛び上がり、とあるくぼ地に身を潜ませ、子細に観察します。見れば殿上に美しい青色の文字が四つ。



関雎水殿かんしょすいでん



まことに壁は錦にまちがえるような色をつらね。床は刺繍に間違えるような文をなし。

木製の棟に蘭の横木、梅の敷梁しきばり、麗しきねや

殿の周囲はすべて珊瑚を組み込んだ欄干で、長い年月を経て碧藍の水苔がむして古代文字のようです。殿中には御両人、一人は九花太華巾きゅうかたいかかきんを被り、もう一人は当世風の洞庭巾を被ってます。

その九華巾を被った方は色白で赤い唇、眉涼しく真っ白な歯、三蔵の姿そのまま、ただ被り物一つが余分なのです、梧空は驚くやら喜ぶやら

「あの九華巾の方はあきらかに師父だ。どうしてかんむりなど被ってるのか?」

と思いました。


小月王を見ても別に妖怪らしくなく、ああでもなおこうでもないと疑っては胸にしこりが残ります。今にも正体を現し師父を連れ去ろうとしますが、はたと思い直し

「師父に万一邪心があれば、西天まで行き着いても、やっぱり無駄なこと」

梧空は山のくぼ地に身を潜め、瞳をこらしてよくよく眺め、ただ一心に師父の正邪を見分けにかかります。と、下の方に見える洞庭巾の人物が三蔵に向かって

「夕焼けが大変きれいです。陳先生ぶらついてみましょう」と言います。


九華巾をかぶった例の三蔵は「小月王さま、どうぞお先に」と言い、二人手をたずさえ、欲滴閣よくてきかくの上に登ります。閣上には掛け軸が何幅か、どれも名士の書画です。かたわらにはまた、小さな色紙が1枚、緑の字が記され



青山 頸を抱き 白澗 心を穿つ。 玉人は何処ぞ、空天と白雲



二人がしばらくぶらぶらしているうち、竹林の向こうから何か声が聞こえてます。


冠をかぶった三蔵はそこで欄干にもたれて耳を傾ける、そのとき一陣の松風が言葉となって吹き寄せます。三蔵はその歌を聞き終わり、頭を低くたれて涙をこぼします。


小月王は、「陳先生はおそらく、長いこと故郷を離れていて、こういう歌声が聞こえたので、とても悲しくなられた。まずは挿青天楼で弾詞だんしを聞きに行きましょう」


また、二人はひとしきり話をしながら欲滴閣よくてきかくから降りて来ましたが、突然見えなくなります。


というのも挿青天楼と関雎水殿とは、まだ一千棟の建物をへだてており、眺め渡せば至るところ咲き誇る華が軒を取り巻き、翠の柱が道筋を分け、垂柳が一万本、高桐が百尺のありさま。二人はその中を曲がりくねって歩いており、梧空が向かい側の山のくぼ地にいて、どうして見えましょう。


一時もしてから、ふと見れば一棟の高楼の上に、三蔵と小月王が二脚の椅子に相対して腰をおろし、碧糸模様の急須が1つ、漢代風の方形茶碗が二つ並べられます。低い石の腰掛にはまた目のつぶれた若い女が三人坐っており、皆盲人ですけれど、あふれんばかりの色香で、つややかな白玉の胸に、そっと琵琶を抱きます。


そこで小月王は娘に「お前はいくつぐらい故事はなしが歌えるか」と言います。

「王さま、故事はなしは本当にたくさんありますが、ただ陳さまがどのような話をお望みかによります」


「陳さまは大変に通でおられる。まずは一つや二つ言ってみろ」

「古いところは申すまでもないこと、目新しいものだけをいいましょう。玉堂暖話、天刖怨書、西遊談……」

『西遊談は目新しい、それにしろ』


娘は承知して、琵琶を弾き声高くセリフを合わせます。


『……三蔵は紅孩児こうがいじの吹かせた狂風にさらわれてしまい。次は舟もろとも黒水河に沈んでしまった。車遅国では道教仏教は互いに抗争すべきではなく。梧空に術を破られた怪物は地面に紅の血を流した。ごくうようかいに勝てず心・神は分離してしまい。さんぞうしぼがに出会い水を飲んでしまったために妊娠して大いに困惑。二つの心<梧空と六耳獼猴ろくじびこう>の闘争に天地は暗黒となり、1対の知恵ザルが観音菩薩の目まで迷わせた。芭蕉扇は火焰山の火を滅ぼしつくし。

青柳につないだ馬のたずなを解きまた西方に旅立った。


万鏡楼の中では昼も夜も緩慢に推移。いつになったら御仏さまに会えるのかしら』



娘は歌い終わり琵琶を横たえて、長い溜息つくと、風のように引き下がりました。

さて梧空は山のくぼ地で「万鏡台」の三文字を聞き、疑惑がわいてきました。


思いますに、「万鏡台での出来事は昨日起こったばつかり、何故あの歌女は知っているだ」

梧空は怒りがこみ上げ、激怒し、小月王を打ち殺して事態がはっきりすると思いつめました。


梧空は山のくぼ地で「万鏡台」の三字を聞いてから、頭に血が上り、耳から如意棒を取り出し、挿青天楼に飛び込んで、殴りかかりましたが、空振りの終わり、また殴りかかりましたが、やはり空振りです。


梧空はすぐ罵りました。

「小月王、貴様どこの国王だ。大胆不敵にもおれの師父をこんなところにペテンにかけるとは」


かの小月王、何も聞かなかったように元通り談笑しています。梧空はさらに罵ります。

「この瞽女ごぜめ!くそあまめ!なんで髪を伸ばした和尚にくっついて歌いやがる」


弾詞の女芸人三人とも知らぬ顔です。

「師父、もう行きましょう」と叫んでも、三蔵は何の反応もしません。


梧空は大いに不思議がり

「俺様は夢を見ているのか。あるいは青々世界の住民はみな目も耳も舌もないのか?

何とも奇怪至極、師父の真偽を見極めてから、天宮で暴れた時の腕前を見せてやろう。

今あわてちゃいかん」


如意棒をもとに収めると、向いの山の上に飛び上がり目を見開いて観察します。


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