第十二回 梧空 覇王別姫して 気分転換に盗賊を打ち殺す
初めまして!原 海象と申します。
今回は『西遊記』の外伝(SS小説?)である神魔小説『西遊補』を編訳したものを投稿致しました。
なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。
原作は千六百年頃の明の時代に書かれたとされております。原作者は董若雨です。
本書は削除版ですので、原書が読みたい方は東洋文庫(鏡の国の孫悟空「西遊補」)をお読みください。多分絶版になっているので図書館で検索すればあるかもしれません。
第十二回 梧空 覇王別姫して 気分転換に盗賊を打ち殺す
朝の化粧が終わったばかりに、またもや項羽が飛び込んで来て,大声で
「虞美人や、玉門へ行くぞ」とわめき、梧空は大喜びです。
項羽は輿を用意させると、梧空は言いました。
「覇王さまは何て面白くないの?
ほんのひと走りの道で、ずっと松並木に山家つづきなのに、とことん無粋で
輿なんぞに乗るなんて」
項羽はすぐに輿をやめさせます。
二人は手に手を取って出かけまして、まもなく玉門関の前に着くと二枚の扉には何の封印が張られておらず、ちょっと押してみると、門は半開きになります。
梧空は「今行かなきゃ、いつまで待つか」と思い。
さっと身をひるがえし玉門関へ走りこみます。
項羽は大慌てに慌て梧空の衣装をつかもうとしますが、また空をつかみ転んでしまいました。
梧空は全くそ知らぬ顔、ただ一途に進んだのです。
梧空が玉門に突入してみれば、実は真下へ転げ落ちたのです。
転げ落ちること数里、耳には項羽の鳴き声と侍女の叫び声が聞こえ、さらに数里落ちて行きやっと聞こえなくなりました。
でも未来世界にはさらに到着できません。
梧空はあせって「あわわわ、俺様はこれまで他人をたばかりどおしで、今度は逆に項羽にたばかれて底無しの井戸に落としこまれたぞ」とわめきます。
とそのとき耳元で「大聖、ご心配なさるな。この辺で道程はほぼ終わり、もう一息で未来世界です」と叫ぶのが聞こえます。
梧空は言いました。「兄者、おまえさんはどこでしゃべっている」
その男は「大聖、私はあんたのお隣にいるのです」と言います。
「そうだったら、戸口を開けて家に入れて、お茶を一杯飲ませてくれ」
「ここは無人世界で、飲むお茶などありません」
「無人だったら、『無人』と言ってるのはどいつだ?」
「大聖はとびっきり賢いお方なのに、今日はなんてまた阿呆な!
わたしは肉体から遊離しているので、これまで肉体を得たことがないんです」
梧空は戸口が開かないのを見て、カッとなり、うんと力を入れてひところげ、まっすぐに未来世界へ落下します。
やっと地上に降り立って少し歩き出す。
梧空が三蔵法師に弟子入りする際に殺した追剥の六人に正面からぶっかります。
梧空は笑いながら「チェ、星のめぐりあわせが悪い、真っ昼間から亡者どもの相手か」
六人の盗賊は怒鳴りつけます。
「きれいな姐ちゃん逃げるなら、身ぐるみ脱いで、お宝置いていきゃ通してやる」
実は梧空が虞美人になっているとき大急ぎで玉門に突入で、
未来世界がどんな具合なのかばかり気がかりで、
これまで正体をあらさわなかったので
そのとき六人の盗賊の言葉を聞いて。
我に返り、急いで顔をひとなで
「盗賊ども、棒をくらえ」とわめきます。
盗賊どもは肝も玉もぐちゃぐちゃにつぶれ、道端にひざまずき、憐れぽく申し上げます。
「大聖慈悲菩薩さま。私どもは昔古木の下でふらちにも三蔵師父にたてつき、
大聖さまのみ心をかきみだし、兄弟六人一時に非業の死をとげました。
そのおり魂だけが古人世界へ逃げ込みましたが、古人世界では盗賊という評判があるからとて、
受け入れてもらえず、やむなくここで仮ずまい正々堂々の追い剥ぎ暮らし
、決してこれっぽっちも悪事を働いておりません。
何とぞ大聖、お命ばかりはお助けを」
「俺がてめえらを逃がしても。てめえらは俺から逃げられぬわい」
というや否や梧空は棒を取り出して、叩き潰しいて肉せんべいにし、
先へ先へと進んで一心に間道を探すつもりです。




