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new, clear world  作者: 梅干仔犬
1/2

終わりで始まり

 出勤ラッシュの満員電車に揺られながら英単語帳のページをめくる。

 1月15日、今日は共通テストの本番の日だ。ここまで1年間、いやもう半年ぐらいだろうか。それなりに頑張ってきた。まだ一般受験の日は遠いがここで何校か、あわよくば本命の大学に合格しておきたい。

 86点、なかなか手が届かない点数だ。だがまあ、本命は今日じゃない。気楽に行こう。そう考えながらページをめくる指は震えていた。

 しかしまあ、人が多いこと。今日ぐらい受験生に気を使って仕事休んだらどうかね!? ほんとこれだから日本人は……

 でもまあ、リーマンの方もいつもより混雑して腹立ってるだろう。どうにかならんもんかね――

――テロテロリン! テロテロリン!

 電車にいる全員の携帯から爆音でアラームが鳴り響いた。

「緊急速報です。たった今、北朝鮮から本国に向けて核ミサイルが発射されたと防衛省が発表しました。着弾予測地点は東京都立川市周辺です。現在東京都にいる方は、直ちにお近くの地下鉄駅内、または近くの建物に避難してください。繰り返します。現在――」

「おぅ?」

 騒然とする車内。全員が各々のスマホを凝視している。

 いやいやいや、ちょいちょいちょい待ってくれ。聞いてない聞いてない。え? 死ぬ?

 親から電話がかかって来た。

 ――大丈夫か、と。

「ほんとにやばいかもしれない!」

 親と電話なんかしてる場合じゃない! ――これまたなんて親不孝。

 駅に到着してドアが開く。全員が全力ダッシュだ。飲まれないように俺も全力ダッシュ。

 だが上手くいくはずもなくすぐに動けなくなった。駅の階段は細い。

 やっとの思いで改札を抜けると、全員が空を見上げていた。もちろん俺も空を見上げる。

 悲鳴がこだまする。

 ちょっとどっかで誤報だろうと思ってたんだろう。汗が吹きでた。言葉も出ない。

 ――カッ!!

 うっわ、眩し! 目が焼けるようだ。いやほんとに焼けそう。……熱い! ちょっとほんとに熱い!

 一気に衝撃がきた。まさしくインパクト。周りの人とグチャグチャになって後ろに吹っ飛ぶ。改札内に再入場。

 もう何も見えない。だが、今本当にヤバいのが迫って来ているような感じがひしひしと感じる。

 あー、ほらだんだん熱が上がって来た。やばいやばい。やだなぁ……


 ……いや、ちょっと本気で嫌なんだけど!? 待ってくれよ! 死ぬんか!? 俺ここで終わるんか!? ヤダヤダヤダヤダ! 死にたくなーい! めっちゃ勉強したのに! 1年とちょっと本気で頑張ったのに!うそやーん!待ってやー!人生こっからが本番やん!マジでヤダ!!!!


 ――体が溶けたのを感じた。



 


 

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