ワイ、おっさん、他の子を泣かせて親に睨まれ咽び泣く
「隣の国が攻めてくる」
昔はそれなりだったおっさん。昔、事故を起こして悪役を被り、免許剥奪されて止む無く離職追放。
その時に拾った竜の子供と辺境でのんびりスリーライフな日常をと決め込んでいたが、そんな噂に踊らされ、慌てて本国に帰国するため、子連れで港町にやってきました。
おっさんは半ば強引に現役復帰させられ、その打合せ中に子供が外で遊んで怪我をしてしまいました。早く医務室に連れて行きたいのですが、保安検査場を通る必要があり、色々ざまぁな展開で泣きたくなります。
【!!!微グロ表現注意!!!】
おっさんの足元では、相変わらず子供達が泣き喚いている。
「いだいよー! だいぢょー! だっごじでー!」
「たいちょー! おしっこ行きたい!」
「おとーさーん! おかーさーん!」
おっさんも泣きそうだ。
上の子のおしっこを済ませ、子供達を全員抱きかかえて、保安検査場に向かう。
下の子は、今はおっさんの頭の上に鎮座して泣き止んでいる。これが狙いだったらしい。
目の前に、検疫用の燻煙通路が見えてくる。
子供達がそわそわしだす。子供は大抵風呂好きだと思っていたのだが、苦手なのだ。
「…煙風呂の時間だぞー!」
「おふろ、きらい!」
「熱いのは嫌!」
「ずっと、あついなかに、いるんでしょ?」
「…体や荷物に付いた悪い虫や動物を煙で駆除するんだ! 我慢! 我慢!」
逃げられない様にしっかり保定しようとすると、係に誘導されて、子供用の燻煙通路に案内された。
迷路風の遊具のような燻煙通路になっていて子供が首を出せるようになっている。
さっきまでの態度はどこへやら。今は嬌声を上げて駆け回っている。
…いいなぁ。俺が子供の時はこんなのは無かったよ
次に、おっさんは役付き専用の燻煙通路に案内される。窮屈な通路の中で、出来るだけ体を広げ、くまなく燻煙剤が行き渡る様にする。
先に出た子供達が待ちくたびれて喚いている声が聞こえる。急がないと。
出口で係と同伴で、背負った荷物を荷解き、中を念入りに荷物を点検すると同時に燻煙する。
やっと荷物検査が終わって、医務室の場所を確認しようとすると、係に呼び止められた。
「お連れの方に、少し問題があるようです。お待ち下さい」
「…はい? 連れって、子供達のことですか?」
「いえいえ、あちらの方です」と後ろを指す。
編成を拒否した、あの若い奴が半べそかいて突っ立っていた。みっちり叱られている。
上から覘くと思わずドン引きした。卓上には小鬼の入った籠が並んでいる。
「小鬼は指定病害獣です! 国外への持ち出しは禁止です!」
小鬼は勿論、しっかり燻煙されて、口から泡を吹き排泄口から糞尿を垂らしピクピク痙攣して死にかけている。籠を包んでいた紙や、中の荷物も小鬼の体液に塗れている。汚い。
若い奴は必死に弁明しだした。なんでも都では小鬼を飼う事が流行っているとか。これは誰それのために買っただとか。全く弁明になっていない。
「おっさん、助けてくれよ!」
「…知らないな!」
「無免許のくせに!」
「…お生憎様」おっさんはできたばかりの臨時免許証を見せる。無ければここは通れない。
「なんだ、臨時免許証じゃないか! 俺の方が格が上だ!」自慢げに隊長職の仮免許証を見せた。
確かにその若さで仮隊長職は凄いが、おっさんだって臨時隊長職だ。云うほど大したモノではない。
「お知り合いですか?」と係官。
「…いいえ、全く。今朝の編成の打合せで声を交わした位です」
成程と係官は頷き、若い奴は別の担当者と共に奥の部屋に消えて行った。
死にかけている小鬼は、脇の大きな屑籠にポイっと投げ捨てられた。小鬼の死骸で一杯になった屑籠が沢山並んでいる。屑籠の底からは潰れた小鬼の体液が染み出て異臭がする。不潔だ。
「…多いですね」
とここで、おっさん達の目の前を赤い影が横切った。子供だ。
「そうなんですよ」係は何事も無かったかの様に話を続ける。「この時期は、農奴として飼っていた小鬼を持ち出そうとする方が多くて」
「…所で、あの赤い子は?」
「竜の子です。この港にもいるんですよ。残念ですけど」
すると子供達が赤い子に反応して騒ぎ出した。
「え? え? え?」
「あ! あいつだ! 追いかけろ!」
「あのこのせいで、くすりがかえなくなったんだ!」
赤い子を追いかけてすっ飛んでいく。
「…君たち! 待ちなさい!!」おっさんも後を追いかける。
「あ! お待ち下さい!」係官も追いかける。
赤い子を子供達が追いかけて、子供達をおっさんが追いかけて、おっさんを係官が追いかける。
辿り着いた先は中央迷子預かり所だった。
中央迷子預かり所は一時子供預かり所も兼ねていて、大型遊具が沢山並んでいる。
赤い子は遊具の中に逃げ込む。子供達も後を追いかける。
広い広場の中で子供達がどこにいるのか大体分かる。
積み木広場では誰かの大作が崩れ落ち、お砂場では誰かの力作が踏みつぶされ、滑り台では誰かが突き飛ばされ、読書広場では誰かが読んでいた絵本が宙を舞う。
子供達の「ホットスポット」を先回りする様に、おっさんと係官も追いかける。
積み木広場では復旧作業中だった大作が完全倒壊し、お砂場では同じく復旧作業中だった力作が木っ端微塵に粉砕され、滑り台では玉突き事故が起こり、読書広場では本棚が倒壊した。
誰も彼もが、わんわん大声で泣いている。阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
何とか赤い子を係官が保定し、おっさんが子供達を保定した。係官もおっさんも全身汗だくだ。
親達の冷たい視線が、おっさん達に集中する。
…え? 悪いのは俺?
おっさんは泣きたくなった。
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さて次のお話は…
「ワイ、おっさん、小鬼を退治するが凹んで咽び泣く」
…です。