EDその4
【ED4】
403が最多得票。かつ404が二重人格ではないとバレている。
※「404は二重人格ではないのでは?」という旨の話が、全体会議、もしくは402と403の密談時にされていればOK。
403号病床の、夢遊病者こそ、『河童男』を殺した犯人である。
これこそ、その場所に居た全員が、議論の末に辿りついた答えであった。
逐次、電話越しに警察と、電話で連絡を取っていた主治医が、患者たちに告げる。
今冬一番の降雪だった為に、警察の到着は、明日の朝になるだろう、とのことであった。
医師の口から『警察』という単語を聞くや否や、顔面蒼白になった夢遊病の青年は、慌てて駆け出した。
看護師や警備員やらの制止を振り切り、患者着のまま、裸足で雪の中を駆けて逃げた。
「俺なのか?本当に俺がやったのか?
わからない。何もわからない。
何も覚えていない。俺は何も覚えていない!」
うわ言のように、何度も叫びながら、雪の山道を、あてもなく走った。
ただ、あのまま、あの場所に居るのが怖くて、逃げた。
凍てつく寒さで、徐々に手足の感覚が鈍る。
それでも、必死にもがき、逃げた。
翌日、数人の警官が、逃げた男の捜索に当たったが、見つけたのは、昼の時間を幾分か過ぎた頃のことだ。
病院から半里も行かぬ山の林の中。
夢遊病者は、凍死体となって発見された。
男が現場から逃げ去った事もあり、彼こそが『河童男殺害事件』の犯人であると、警察は判断した。
そして、現場検証の後に、警察はもう一人の男をも逮捕することになる。
404号病床の青年である。
彼は、これまでに処方された薬を全く飲んでいないことが判明した。
二重人格と言った精神異常者などではなかったのだ。
過去、殺人罪で起訴された彼は、無罪を取り消され、再び裁判にかけ、然るべき罰を受ける事になった。
白い壁に囲まれた、広い病室の中でただ一人きりになった402号病床の男は、虚空に問いかける。
「本当に、これでよかったのだろうか?」
己の中にある、拭えぬ違和感は、いつまでも消えないのだった。
なにもわかんなかったED。