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ジキルとハイドに告ぐ  作者: 詠み人知らず
8/11

EDその3



【ED3】

403が最多得票。かつ404が二重人格ではないことを突き止められなかった。

※「404は二重人格ではないのでは?」という旨の話が、全体会議、もしくは402と403の密談時にされていなければOK。


――――――――――――――――――――


403号病床の夢遊病者こそ、『河童男』を殺した犯人である。

これが、議論の末に辿りついた答えであった。


逐次、電話越しに警察と連絡を取っていた主治医が、患者たちに告げる。

今夜は今冬一番の降雪だった為に、警察の到着は、早くても明日の朝になるだろう、とのことであった。


「け、警察……?!」

医師の口から『警察』という単語を聞くや否や、夢遊病の男は顔面蒼白になる。


居ても立っても居られなくなり、男は慌てて駆け出した。


看護師や警備員やらの制止を振り切り、病院を飛び出す。

患者着のまま、裸足で雪の中を駆けて逃げた。


「俺なのか?本当に俺がやったのか?

 わからない。何もわからない。

 何も覚えていない。俺は何も覚えていない!」


うわ言のように何度も叫びながら、雪の山道を、あてもなく走った。

ただ、あのまま、あの場所に居るのが怖くて堪らなくて、逃げた。

凍てつく寒さで徐々に手足の感覚が鈍る。

手足が完全に動かなくなっても、まだ、這ってでも、遠くへ逃げたい。

男は必死にもがき、逃げた。



翌日、数人の警官が、逃げた男の捜索に当たったが、見つけたのは、昼の時間を幾分か過ぎた頃のことだ。


病院から半里も行かぬ山の林の中。

夢遊病者は、凍死体となって発見された。

男が現場から逃げ去った事もあり、彼こそが犯人であると、警察は事件が解決したものと処理した。



事件から三月後、404号病床・元学生の退院が決まり、彼は晴れて自由の身となった。

清々しく病院を後にする彼とは対照的に、402号病床の男は日に日に酷くやつれてゆき、歩くこともままならなくなっていた。


白い壁に囲まれた病室で、一人きりになった彼は、青年から託された荷物を開けた。

中身は大量の睡眠薬の包み。


退院する時、青年は彼だけに、こっそりと告げたのだ。

「河童男を手にかけたハイド氏はあなたなのだよ。

 わかるかい、善意のジキル博士。

 あなたの中にある、悪意のハイド氏を消せるのは、あなただけだ。」


翌朝、『ジキルとハイド』の男は、死亡しているのが見つかった。

ベッドの脇には、大量の睡眠薬と思しき包み紙が散乱し、彼が愛した妻子の写真を胸に抱いて、眠るように、彼は亡くなっていた。

犯罪者完全勝利ED。

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