EDその3
【ED3】
403が最多得票。かつ404が二重人格ではないことを突き止められなかった。
※「404は二重人格ではないのでは?」という旨の話が、全体会議、もしくは402と403の密談時にされていなければOK。
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403号病床の夢遊病者こそ、『河童男』を殺した犯人である。
これが、議論の末に辿りついた答えであった。
逐次、電話越しに警察と連絡を取っていた主治医が、患者たちに告げる。
今夜は今冬一番の降雪だった為に、警察の到着は、早くても明日の朝になるだろう、とのことであった。
「け、警察……?!」
医師の口から『警察』という単語を聞くや否や、夢遊病の男は顔面蒼白になる。
居ても立っても居られなくなり、男は慌てて駆け出した。
看護師や警備員やらの制止を振り切り、病院を飛び出す。
患者着のまま、裸足で雪の中を駆けて逃げた。
「俺なのか?本当に俺がやったのか?
わからない。何もわからない。
何も覚えていない。俺は何も覚えていない!」
うわ言のように何度も叫びながら、雪の山道を、あてもなく走った。
ただ、あのまま、あの場所に居るのが怖くて堪らなくて、逃げた。
凍てつく寒さで徐々に手足の感覚が鈍る。
手足が完全に動かなくなっても、まだ、這ってでも、遠くへ逃げたい。
男は必死にもがき、逃げた。
翌日、数人の警官が、逃げた男の捜索に当たったが、見つけたのは、昼の時間を幾分か過ぎた頃のことだ。
病院から半里も行かぬ山の林の中。
夢遊病者は、凍死体となって発見された。
男が現場から逃げ去った事もあり、彼こそが犯人であると、警察は事件が解決したものと処理した。
事件から三月後、404号病床・元学生の退院が決まり、彼は晴れて自由の身となった。
清々しく病院を後にする彼とは対照的に、402号病床の男は日に日に酷くやつれてゆき、歩くこともままならなくなっていた。
白い壁に囲まれた病室で、一人きりになった彼は、青年から託された荷物を開けた。
中身は大量の睡眠薬の包み。
退院する時、青年は彼だけに、こっそりと告げたのだ。
「河童男を手にかけたハイド氏はあなたなのだよ。
わかるかい、善意のジキル博士。
あなたの中にある、悪意のハイド氏を消せるのは、あなただけだ。」
翌朝、『ジキルとハイド』の男は、死亡しているのが見つかった。
ベッドの脇には、大量の睡眠薬と思しき包み紙が散乱し、彼が愛した妻子の写真を胸に抱いて、眠るように、彼は亡くなっていた。
犯罪者完全勝利ED。