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ジキルとハイドに告ぐ  作者: 詠み人知らず
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ハンドアウト②403号病床:無職の男

【403号病床・無職】


なんてことだ、この病室で殺人だって?!


確かに、被害者の男は面倒くさい奴で、幻覚の河童の話をされる度にうんざりしてたさ。

正直、早く死んじまえ、と思ってたよ。

でも、本当に死んじまうなんて……。


……誰がやったんだ?

同じ病室の奴らか?それとも、俺……なのか?

わからない。何もわからないんだ。

俺は『夢遊病』だから、眠った後のことは何にもわからない。


ああ、やはり俺は不幸だ。なんて不運な人生なんだ。


――――――――――――――――――――


【プロフィール】


俺は半年前まで、父親の知り合いの商店で、住み込みで働いていた。


だが、ある日に、俺は仕事をクビになった。

クビになった理由は、俺が夢遊病者であったからだ。


俺は夜、床について眠ると、無意識に『なにか』をしてしまう。

俺は眠っていて、全く身に覚えなどないのだが、夜中に布団から抜け出して、ふらふらと出歩いているらしい。

実際に、朝起きてみると、足が泥まみれになっていたりだとか、心当たりのない切り傷ができていたりだとか、不思議なことが幾度もあった。


最初のうちは、些細な違和感だったが、次第に、夢の中の俺はとんでもない罪を犯すようになった。

勤め先の商店の、商品や、売り上げ金を持って帰って来てしまう、盗っ人のようなことを、何度もしてしまった。


そして、解雇の決定打となった事件が、夢遊病でふらふらと歩いている俺を、引き留めようとした警備員を、突き飛ばしてしまった時だった。

突き飛ばした警備員に、骨を折る怪我までさせてしまったようだ。


住み込みの仕事を辞めさせられて、俺は実家の父親のところに転がり込んだ。

それ以来ずうっと、仕事もせず、新しい仕事を探すでもなく、自堕落に日々を過ごしていた。

そんな俺の様子に腹を立てた父親と、日に日に口論も増えた。

畜生め、働けと言ったって、しょうがないだろう、俺は夢遊病者なんだ。

働き口なんて、ある訳がない。


ええい、くそ。死んじまえ。死んじまえ。


実家が金持ちだったなら、俺は働かなくてもよかったのに。

金さえあれば、こんな設備のよくない田舎の病院なんかじゃあなくて、最先端の技術を持った医者のいる、よい病院に入院して、よい治療を受けられたのに。


ああ、10万円が欲しい。


――――――――――――――――――――


【事件当夜の行動】


事件当夜は、今冬一番の雪の日で、窓の外は暗く、何も見えない日だった。

当然、気温も相当に低く、一日中、布団の中で震えていた。


21時、夜勤担当の看護師がやってきて、医者の処方である、鎮静剤と睡眠薬を飲まされる。

薬のお陰で、10分もすると、俺は眠くなって、瞼を閉じた。


その日、俺は夢を見た。

俺のいる、この病室内の夢だ。

病室の小さな窓から差し込む月明かりに、夜闇中、何かがきらりと光ったので、それに手を伸ばした。


それ以降は、覚えていない。


気がついたら、裸足で病室前の廊下にいて、看護師に声をかけられていた。

俺はまた、夢遊病でさまよっていたらしい。


看護師に連れられて病室に戻ると、うつ伏せに倒れている被害者を見つけた。

何が起こっているかわからず、立ち尽くす俺を尻目に、看護師は、同室の患者たちの安否の確認をしていた。

寝ていた402号と404号の奴らも起きてきて、被害者の遺体を見て、驚いていた。


病室内が騒然となっている中、俺は、自分が手に何かを持っていたことに気付く。

それは、女性物らしき『帯紐』で、小さな鼈甲細工があしらわれていた。

もちろん、こんなもの、俺は知らない。俺のものではない。

よく見ると、帯紐には赤い血のようなものが滲んでおり、それを見た俺は、何故だか、とても恐ろしいものを感じた。

喉奥から、肝までが凍るように冷たい思いがして、どっと出た冷や汗が背をつたう。

周りの騒ぎの隙に、つい、俺は、その『帯紐』を懐に隠してしまった。


そんな俺には目もくれず、看護師は宿直室で休憩中だった主治医を呼んだ。


――――――――――――――――――――


【制約】


アイテム「帯紐」が開示されるまで、帯紐を入手した経緯を話してはいけない。


――――――――――――――――――――


【あなたの目標】


真犯人を見つける。 +4

殺人犯に投票する。 +4


――――――――――――――――――――


【あなたの事件当夜の行動】


21:00 消灯。看護師から鎮静剤と睡眠薬を受け取り服用。

21:10 薬が効いてきたのか、眠くなってきた。

    目を閉じていると、暫くして意識が無くなった。

22:50 裸足で廊下を歩いているところを、看護師に呼びとめられ、気を取り戻す。

    右手には、何故か、見覚えのない帯紐を握りしめていた。

22:55 看護師と共に病室に戻ると、被害者が死んでいた。

    何かわからないが、恐ろしい予感を感じ、思わず、手に持っていた帯紐を隠した。


――――――――――――――――――――


【あなたの持ち物】


『鉛筆』

 机の上に数本、無造作に転がっている。


『書きかけの手紙』

 「親父も、職場の奴らも、病院の奴らも、みんな、みんな、死んじまえ。死んじまえ。」

 いろんなものへの不満が綴られている。


『解雇通告書』

 「傷害及び、窃盗の罪で、懲戒解雇」解雇は半年前の日付。

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