00.Prolog
「そなたは十五歳という若さでありながら百年間続いた戦争を収め、人々に平和をもたらした。その栄光を、私たちは忘れることはないだろう」
騎士として最低限度の誇りをもって、俺は王の前で膝を折って首を垂れる。そして誰にも顔が見られない位置まで下げると、静かにあくびをした。
退屈だ。叙勲などもう幾度と貰ったし何の喜びもない。周りからの羨望の目にも、もううんざりだった。俺は好きで剣を持っているわけじゃない。
俺には、やりたいことがあるのだ。
「もうそなたを縛り付けるものは何もない。好きなことを何でも、叶えて差し上げようぞ」
その言葉を聞いた瞬間に、自分の鼓動が強く脈打ったのが分かった。
「何でも、か」
「そうだ。何でもよい。剣士として更なる高みへ向かうか? それとも騎士として今後も騎士団長を務めるか?」
俺は瞑目し、息を呑む。
王の言葉も、兵士たちの期待も、市民からの尊敬も、ありがたく受け取るけれど、その望みは裏切ることになってしまう。
「じゃあ、これは返すよ」
そう言って、俺は最後の決戦の前に王から授かった伝説の剣である気血の剣を鞘に仕舞った状態のまま背中から取り、その場に置く。
「なっ……もうそなたには伝説の剣は要らぬと?」
「ああ、俺はもう剣は持たない」
「!! 本気で行っておるのか!?」
場がざわめき、王が目を見開いた。そして信じられないような目でこちらを覗くと、王は頭を抱える。
「もう一度問う。本気で言っているのか?」
その問いは、俺に今一度考えなおせといっていた。しかし、答えは変わらない。そもそも好きなことを叶えると先に言ったのは王の方だ。今更前言撤回などと言われたらたまったもんじゃない。
「俺、魔法を学びたいんだ。だから望みは、隣国の魔法学校に入学させて欲しい」
「あそこはかなりレベルが高いが……分かった。もう何も言うまい。手続きなどは私が済ませておこう」
「助かる。あと、俺が元騎士なんてのは伏せといてくれ。まっさらな状態で入りたい」
「しかと聞き入れたぞ」
膝を伸ばして、俺は王に一礼し長い長い廊下を歩いていく。豪華絢爛の一言で語れる廊下だ、そして華美で盛装な着こなしをした婦人や伯爵の横を通り抜けていく。
その途中、自分の銅像が飾られているのを見て、心の中で嘆息する。皆の思い浮かべる俺はいつだって剣を握っている。
「本当に、ありがとうございました」
その言葉をもってして、俺は剣の呪縛から解放された。
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