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第一話 演歌命です!(4p)
消しゴムの欠片を投げてきた方向、
そう、苦手な高橋の方へと視線を向ける。
物凄く嫌だけど、其れを悟られない様に薄ら笑みを浮かべ乍言葉を掛ける。
『何だよ』
にやにやと腹が立つ笑みを浮かべ乍高橋は、
『お前、まだ演歌聴いてんの?』
と、揶揄う様に聞いてきた。
もう本当お前に関係無い。
『なぁなぁ、演歌面白い?』
わかってるくせに、まだにやにやしながら聞いてくる。
完全に馬鹿にしてるのがわかる。
だから、こう返してやった。
『演歌めっちゃ良いよ、特に北島さん!高橋も聞いてみる?』
と、満面の笑顔で。
『は?今時演歌なんて聴くかよ。つか、高校生で演歌聴いてんのお前ぐらいじゃね?それよりお前もラップ聴けって、超かっけェから』
明らかに呆れた声で返してくる。
余計なお世話だっつーの。
俺の夢は演歌歌手だっつーの。
誰よりも心に響かせる演歌を届かせてやるっつーの。
あれ、てか、つーの言い過ぎじゃね、俺。
『高橋、高橋、』
不意に声がし、斜め迎えの席から此方をにやにやし乍振り返る相手に視線を向ける。
ラップ仲間の一人、佐々木 柊和。
高橋とよくつるんでいる。
高橋と同じく苦手な一人。