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招かれざる者

泉はその場に泣き崩れた後、昴にこう言った。

「私の代わりに岬を生き返らせるって事は出来ますか?!」

「まさか…、泉を殺して岬を生き返らせるっていうのか?

!」

「お願いします…!」 

昴は考えて首を振った。

「駄目だ、俺の力を使えばそれは出来るかもしれない。だが無理だ。お前は魂こそ抜けてるがまだ生きている。」 

「私の事なんか良いから岬を現世に戻して下さい!」

「何度も言うが…、自分が大事じゃないのか?」

泉は岬の事に必死になる余り、何もかも見えなくなっていた。

「お母さんもお父さんも私じゃなくて岬の事を可愛がってるし大事にしている。二人に必要なのは可愛げのない私のなんかじゃないよ!」

「本当にそうなのか?」

昴は泉の肩を持ち、真剣な眼差しで見つめた。

「生憎俺はまだ子を持つ親の気持ちは分からない。だけど、ご両親は泉の事を心配しているはずだ」

「そんな嘘みたいな事はない!」 

「泉!」

泉は現実から目を背け、自分の事ですら大切に思えていなかった。

「どうすりゃ良いんだよ…」

「泉ちゃん!」

するとそこへ真莉奈が現れた。

「母さん!現世に行った訳じゃ無かったのか?!」 

真莉奈は泉に近づいた。

「昴さんにもお母さんって居たんですか?」 

「俺が何から産まれたっていうんだよ…」

「泉ちゃん、あなたのご両親はずっと目が覚めないあなたの事を物凄く心配してたんだよ?」

「そんな…、そんな訳…」

「だから…、帰ろう?」

「嫌だ…、可愛げのない私なんか…」

その時だった。泉の影が形を変えて実体化し、岬の影になった。

「お姉ちゃん…、ひどいよ…私を置いていくなんて…」

「岬?!岬なんだね?!」

「お姉ちゃん…、私はお姉ちゃんと…」

「騙されるな!それは幻影だ!」 

だが、今の泉には昴の静止の声は全く届いていなかった。

「幻影なら!無水晶…、この力を解き放て、『神化』!」

真莉奈は直ぐ様冥府仙女の姿になると、岬の影に虚月を振り下ろした。

「『幻影月破』!」 

だが、岬の影は消えなかった。

「おかしいと思ったんだ…、岬はもう死んでるし生まれ変わる準備は出来ている。なのにまだ生まれ変わっていない。それは恐らく現世の未練に引きずられてるからじゃないか?」

「それはどういう事なの?」

「霊は本人の未練だけじゃなくて周囲の未練にも影響を受けるんだってさ、だから何としてでも泉の未練を解き放たなくては…」

岬の影は泉に纏わり付いている。するとそこへ、黒い髪を灰色のバンドで巻き、黒い水晶を首と腰に着け、王族とよく似た衣を纏った男が現れた。

「汝は華玄か、こんな所で何をしている?」

「グルーチョ…、冥府神霊の長が何故ここに…?」

「決まってるだろう?汝が持つ華玄の魂、それを奪って我のものにし、月輪様を復活させる」

グルーチョは空へ飛び上がると、巨大で禍々しい龍の姿になった。

「我の力を受けよ!」

グルーチョは空から大量の鏃を放ち、一同を襲った。

「母さん!泉!ここは逃げろ!」

「分かった!」

真莉奈は泉を庇い、攻撃から逃れた。

「どうしよう…、岬…」

その時だった。岬の影の動きが突然止まり、泉の影から黒い怪が現れた。

「ずっと見張りをしてたらまさかこんな事になるなんてな」

「あなたは…?」

「俺はエクサ、冥府神霊のエクサだ。昴様に任されてずっと見張ってたんだ。お前、中々良い影してんな、と思ったら突然こうなって…」

「そうだったんだ…」

「しかしこの影はなんだ?詳しく話をしてもらわないといけないかもな」

「えっ…?」

「真莉奈さん、あなたはもっかい現世に戻って泉の身体を見てくれないか?」

「お父さんが一応見てくれてはいるけど…うん、分かった」

真莉奈はそう行って何処かに行ってしまった。

「なぁ…、どうして泉は自分よりも岬の方が大事なのか?」

「それは…」 

「まさか自分が可愛げのない奴だと思ってないのか?」

泉にとっては図星だったが、態度には現さなかった。

「お前は生きたくないのか?」

「うっ…」

泉はエクサからも目を背けていた。



「お父さん!」

真莉奈は、ずっと泉の身体を見ていた智に声を掛けた。

「真莉奈…、」

「お父さん、異変は無かった?」 

智は頷いた。

「お父さんは戻ってて、私が見張っておく。」

智は真莉奈を見ると、そのまま窓から出ていった。

「でも、なんでお父さんじゃなくて私に…」

その時、扉が開いて中から泉の両親が現れ、真莉奈は慌てて隠れた。

「何か居るの?」

「隠れてないで出て来なさい」

真莉奈は灰色のローブと黒い仮面を着けた状態で現れた。

それを見て二人は恐れ慄いた。

「嘘…、死神?!」

「まさか…、死神が二人を殺したのか?!」

「違います違います!」

真莉奈は慌てて否定をしたが、二人の気持ちは収まりそうにない。

「次は私達を狙ってるのか?」

「何で私が連続殺人犯みたいな扱いされないといけないんですか?!」

「それじゃあどうして…」

「とりあえず…、その仮面と服を外してくれませんか?」

「あっ、はい…」

真莉奈はローブと仮面を外し、黄緑色のワンピースの姿になった。

「お騒がせしてすみません、私は風見真莉奈といいます」

「真莉奈さん、ですか…」

「死神も人間と大差ない姿をしてるんですね」

「そうですね…」

真莉奈はベッドで横たわっている泉を見ながらこう話しだした。

「泉ちゃんは今、魂が抜けてる状態なんです」

二人は驚きを顔に現した。

「そしてその魂は冥界に居るんです」

「えっ…、泉が冥界に?!」

「そして、抜け殻となった身体に別の何かが入らないように私が見張ってたんです。二人は知っての通り、岬ちゃんはお亡くなりになってますよね?」

「はい…」

「泉ちゃんはそれを知らないで冥界を彷徨ってるんです」

それを聞いた二人は哀れみの目を泉に向けた。

「泉…、岬の事は良いから帰って来て」

「泉…、お前まで居なくなるのは…」

真莉奈は泉の身体をもう一度見た。

「あの…、泉ちゃんが戻って来るまで見張ってていいですか?」

「あっ、お願いします…」

それから三人はしばらく病室に居た。

「なっ、真莉奈さんの方が良かっただろう?」

エクサが真莉奈にしか聞こえない声でそう言った。

「うん、私の方が話がつけやすいってね、名案だったと思うよ」 

真莉奈はそう言って影に向かって笑ってみせた。

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