ざ・ちぇんじ!─1
一緒に騒いでくださったきりしまさんに捧げます!
※ざ・ちぇんじ!と銘打ってはいますがとりかへばやではないです!!!
※性転換の要素を含みます。
それは、なんの変哲もないダンジョンだった。
エレノアの出した魔法の光に照らされて、通路の岩肌が露わになる。
デコボコとした岩壁に、薄っすらと水が染み出していれば、つやつやとした表面が蛙のようで気持ちが悪い。
ブーツの足裏が地面を叩く、小石を蹴っ飛ばしたのか、カラカラという音が小さく反響して遠くへ消えた。
四人が広がっても、無理なく歩ける程度には広い通路。道幅が広いうえ、天井も高い。見上げても、光の外に広がる闇には果てが無いと思える程だ。
まるで空でも広がっているような気分で、洞窟によくある圧迫感は無かった。
ジメジメしないのは広いからかなァ──と、気を抜いて歩いていたからだろうか。足先が地面の凹みに引っかかり、シキミの軸はぐらりと揺らいだ。
完全に身体のコントロールを失ったシキミの腕は、防御本能のまま壁へと向かう。
「ッおい嬢ちゃん! その壁はマズ──!」
「ほぎゃ!?」
テオドールの制止も間に合わず、手をついた先。しっかりとこの身を支えるとばかり思っていた岩壁が、ゆっくりと沈みこんだ。
途端、"ふしゅう"という音と共に、どこからか漏れ出した白い煙が、シキミたちの視界を覆う。
「エッ…………っげほ、うぇ……!」
否応なく器官に入り込む粒子に、嘔吐くように咳き込んでは、また咳き込む。
どうやらそれは、シキミだけではないようで。
苦し気な呼吸音が洞窟内の空気を暫し揺らした。
──で。まぁ、そんなことがあったわけでございまして。
だからまぁ、コレは……罠の作動、だと思うのだけれど。
なんだか視界が高いような──気がするのだけれど!!
何かが漏れ出す音は消え、徐々に煙は消えてゆく。
濛々と立ち込めた白の先、共に歩んできたはずの、頼れる仲間の姿は──すっかり変わり果てていた。
「おや、これは……」
「ヴブヘッ……だァァ……! んだコレ!?」
「あ〜。はい。うん」
胸元に美しい山を築き上げた「女」二人と、骨格がしっかりとし、嫌味のない美しい逆三角形を作り上げた「男」が一人。
で、視界を高くした己が一人。
──至急、思考の放棄を許可願いたく。




