考える我が輩。傘について
21号だか22号だかで、ちょっと飛べた。死ぬかと思った。
我が輩は傘である。名前はまだ無い。何処で生まれたかとんと見当がつかぬ。
みたいな事を千円札の人が言っていた気がする。
そうやって出だしをパクってみたものの、我が輩は傘ではなかったりする。驚天動地。
考えてみれば、千円札の人も猫ではない。あの人は紙である。しかも日本にはいっぱい居る政府公認のクローンだ。
一体どれだけ居るのか知らないが、彼は単体では千円の価値しかない。人を金額で測るなどというのは非人道的であると我が輩は思うのだが、政府公認で「アイツは千円」と定められているので不平は唾と一緒にゴクリと呑み込む事にする。我が輩、上の者に巻かれて生きていきたい。下手に文句をつけて政敵とみなされ、ある日突然、政府の暗部に殺されては堪ったものではないからだ。だから、我が輩は隙あらば媚びを売る事も忘れない。
日本万歳。
単体千円とは言ったが、もう一度言うが、彼は政府公認のクローンであるからして、いっぱい居る。
代わりがいる三人目とかそういう次元ではない。
どちらかと言えば、 「ナツメはナツメは2万人だと言ってみたり」の方が近いかと思う。裏で兄弟と呼ばれているに違いないし、レベル6を目指す人に一万人ほど焼かれたり、破かれたりしている筈だ。まぁ、千円札を平気で破く人はその時点でレベル6みたいなものじゃないかと、我が輩は我が輩は思ってみたり。
千円の人はどうでもいいのだ。所詮は一万の人の十分の一の実力しかないし、我が輩が本気になれば一万の人さえ紙切れ同然で破壊出来る。
絶対にしないけれども。
我が輩、千円の人の話をしようと思った訳ではない。傘についてだ。
流石千円というべきか、思考を誘導され危うく千円に溺れてしまうところだった。
望むところだ。
それでまぁ、最初に戻るのだが、我が輩は傘である。訳はない。何処で生まれたかは、タグを見れば多分書いてある。メイドinジャパンだと嬉しい。我が輩、日本が好きなので、やはり生まれは日本が良い。
これだけ言えば暗殺の魔の手が遠退いた気がする。
我が輩が傘でない事は周知の事実だとして、何故我が輩が傘の話をしようかと思ったかと言うと、今年、我が輩の好きな日本は、記録的な台風に見舞われた。しつこい位に。
そうやって日本の気象庁様が記録を更新される中、我が輩の傘の買い換えも記録的な回数と相成った。
何故そうなったかの説明をする為には、まず我が輩の性格を説明する必要がある。
我が輩、嵐が来るとワクワクする。
不謹慎とか言われても、ワクワクしちゃうので仕方ないのだ。
思春期男子がおっぱいを見てムラムラしちゃう様に、我が輩は嵐が来るとワクワクしちゃうのだ。
ムラムラもするけども。
我が輩、ワクワクしちゃうと強風の中を歩きたくなる。はしゃいで走ったりはしない。我が輩大人なので。
そう、我が輩大人なのだ。コレがいけない。
子供だったならば、強風そして傘の夢の共演により、きっと自由に空を飛べる筈である。子供は軽いので。
傘で空を飛ぶなんて、なんて素敵な事だろう。
素敵な事なので大人な我が輩、諦めきれないのである。傘で空を飛びたいのである。
しかし、大人は重いのだ。
あ、女性は軽いですよ。はい。
我が輩、大人なのでこういう気遣いとか気の利いた事言えます。大人なので。
大人の男性は重いので、傘で空を飛ぼうと思っても、傘が壊れてしまいます。逆パカです。逆パカって今の若い人に通じるのか?
分からないという人の為に説明すると、逆パカとか言うのはアルパカが驚いて後退りする事を言います。本当です。ミラバケッソなのでOK Googleしないでください。大人なら空気読んでください。
話を戻しますが、人を金額で測るのはどうかと思います。
それはまぁいいです。プライスレスとか何とか言ってお茶を濁すので。
傘についてです。たしか。
傘で空を飛びたいんですよ、我が輩。
それでですね。
挑戦し続けた結果、傘が何本も壊れた訳です。アルパカです。
壊れる度に、我が輩は傘を買い換える訳ですよ。記録的に。
買い換えるのは良くは無いけど、まぁ良いです。我が輩大人なので財布からスッと千円の人を取り出して傘を買いますから。リッチなので。
リッチと言ってもアレですよ? 骸骨貴族的なリッチじゃないですよ?
我が輩は傘である。
いやまぁ、傘でも無いんですけども。ちょっと何が言いたいのか分からなくなってきた。おのれナツメ。
唐突に傘の耐久力の話をします。訳分からないので。
まず、傘って耐久力低いよね。
皮と骨しかない感じ。リッチではありません。傘は不死属性どころか、記録的に買い換える位に雑魚いので。
雑魚いなら身体を鍛えたらどうか、という話です。
まず皮をドラゴン並にします。もうここで既に強そうです。
次に骨。
骨の部分はオリハルコンです。硬度は良く分からないけど、強そうです。
きっとここまでやれば強風にも負けず、我が輩が空を飛べそうです。
ドラゴン素材な時点で強風なんか利用しないでも飛べそうな気はするけども。
しかし、問題もある。
価格です。そんな傘は間違いなく高価です。買えるのはお金持ちだけでしょう。リッチです。不死属性の。
我が輩はそういうお金を持ち合わせていません。大人なのに。
なので、我が輩がドラゴン仕様の傘を手に入れるには、誰かから譲り受けるしかありません。
しかしながら、我が輩にそんな高価な物を贈ってくれる様な奇特な友人はいません。そもそも友人が居なかった様な気もします。
というか、それ以前にドラゴンを見つけなければいけません。
異世界にはいっぱい居るそうですが、我が輩は未だかつて生のドラゴンを見た事はありません。察するに、我が輩の世界にドラゴンは居ない可能性があります。
居ないのならば、やはり異世界に行かないと行けないので、転移するか転生する必要がある。
ただ、我が輩は転移しても我が輩なので、異世界で生きていく自信がない。ならば転生だ。
転生なのだが、今現在、我が輩は傘の事で頭がいっぱいである。恋わずらい的に。
そんな状態で転生しようものなら、間違いなく我が輩は異世界で傘になってしまう。
傘になった時点で我が輩、生きるのを早々に諦めてしまいそうだ。だって傘だから。
まぁ、万にひとつ。我が輩が生への渇望を諦めなかったとして、更に傘になった我が輩の元に異世界人が現れたとする。
その時の我が輩の第一声は決まっている。
「我が輩は傘である」
我が輩の事なので絶対言うと思う。
まぁ、喋れるかという問題もあるけれども、そこはまぁ、我が輩気合いでどうにか出来る自信がある。
自信の根拠を聞かれても、我が輩だから、としか答えようがない。
ほら、我が輩ってそういうとこあるから。
それからまぁ、我が輩はなんやかんやで最強の傘を目指して頑張るのである。
先端で突いてよし、開いて守ってよし、皮部分にあらかじめ魔法陣とか描いておくと良いかもしれない。傘を広げた瞬間に魔法が発動するのだ。便利そうだ。
みたいな話を、傘を壊しまくった言い訳に家族に言ったら、「折角、異世界に行くなら普通に飛ぶ魔法覚えた方が早いよね」と言いくるめられてしまった。
我が家の千円や一万円を司る女神の言葉。
至極もっともだと思った。
我が輩、ロケット鉛筆を繋げていつか月に行きたい。彼の生き様を見届けたい。