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妄想・想像・空想のちがい

 

 妄想していると、境界線が分からなくなる時はありませんか。

 現実とのさかい目のことです。


 ある小説家の話を目にしました。


 築60年の一間に住む自称小説家です。彼の作風は、冴えない中年男の日常と恋愛です。簡単にまとめてしまうと、自分の立場や環境に大きく依存した設定に、理想的な女性像を付け足した物語です。彼の職歴は、あるところでぽつり、またあるところでぽつりと働いてきたとあります。彼の作品のなかの主人公も職歴は似たようなもので、空想上の賜物なら、実際の数十倍、いや、主人公には現実的でないステータスを持たせてあげたっていいものなのに、律儀に自分を投影してしまっているのか、年齢は40才程度、無職です。日常は相応にヒマであることが伺えるも、これまで経験してきた仕事場の工程描写には妙な熱が入っていたりして、仕事人の誇りっぽさが伺えます。続く文章には「3ヶ月で辞めた」とあるけれど。なぜ、彼はフィクションの世界ですら、現実の環境に縛られるようなマネをしてしまうのでしょうか?


 これは想像ですが、おそらく現実から逃げられないのではないでしょうか。逃げられないと学習してしまっているのかもしれません。息をしていれば明日がくること。仕事をしなければ食べていけないこと。かたや、仕事をしなくても食べていっている人たちがいること。一見楽そうに、自分にだってできそうな仕事を、仕事と思わずこなす人々をみて、彼には才能があったのだと決め付けるほうが、現実とのおりあいをつける上で大切なことを。

 それか、もしかしたら妙に決め付けっぽいのかもしれません。世の中とはこうである。恋愛とは私にとってこうである。日本は戦争に負けたが、我々のご先祖様が骨身を削って復興したのである。アメリカは敵である。世界は手を取り合うべきである、などと、表面的な言説を、掘り下げて噛み砕くこともせず、自分のものにする労力を惜しんで、多数派に落ち着くことの居心地の良さに首まで浸かっていたら、抜け出せなくなってしまったのかもしれません。

 これも想像ですが、怖いのかもしれません。飛び立つのが、環境を変えるのが。自分が他人のものさしを当てられる対象になることが。周囲に、自分のスケールを看破されることが。それか、労力が惜しいのです。自分ひとりが、虚しさをそれと思わずに唇を噛んでいれば済むものを、他人から「それは虚しい」と指摘されて、必死に弁護すること自体が疲れるのです。なぜなら、いつもは妄想していれば目を背けていられるものだから。自分の行いに誇りがないから、自信がないから。後ろめたいから。


 ここで明言しなければならないことは、決して蔑みやこき下ろしのために特筆したわけではないということです。お互いに悪いことをしているわけではありません。おまけに真実かどうかは分かりません。ただ少しでも真実に近づくためには、ある程度の事実を必要とします。


 実は、想像と前置きをしながら並べ立てましたが、これらはおおよその事実に基づいています。

 いちばん最もらしいのはこんな理由です。

 彼には現実を変えたい願望がありました。小説で食べていく日を夢見て、約20年、物書きを続けていたのです。彼自身、小説のなかのキャラに自分自身を投影してしまっていることを、彼の出版した本の末尾で認めています。彼には空想的な翼は不要でした。若返ればやりなおせるといった想像的物語も彼には不必要。現実を突き抜けた妄想が、彼にとって必要だったということです。


 つまり、妄想は一時的に自分を満たすためのもの、想像は可能性を考える場合、空想は創造的な場合です。


 なんとなくの感覚ですから、違うと思います。が、これをメモにしておきたかったので、補足のような駄文を付け足したりしました。

 雑記なので結論は用意していませんが、例に挙げたようなどつぼにはまらないためには、人の話を聞く準備をしておくこと、変わらずずうずうしさを持ち続けること、やらなければならないことを先に済ませること、嫌なことは妄想ではなく実際に変化を起こしてみること、時として経験は捨ててしまうこと……あらら結局きりがない。これですとメリハリがよくありませんのでこれにて。お読みいただきありがとうございました。

(登場人物はフィクションです。)



 みつまたやり

 



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