わたくしが悪役令嬢ですか?
突発的に書き上げました。
後悔はしていません。
「クリスティン・ベル・ラドンナ‼ 私の婚約者との立場と公爵家の権力を笠にしての悪逆非道な行ないとてつもなく赦しがたい。今日、只今を持って貴様との婚約を破棄してやる‼ 」
「はぁ、そうですの」
学園の卒業式を兼ねましたパーティでリバイラナ国の第二王子ヘンリック様に出会い頭そう宣告されました。
わたくしの周りにはエスコートしてくださいました弟と弟の同級生が集り、卒業の祝いの言葉をかけてくださいましたところですわ。
つまり、わたくし以外の女性がいないということですわ。
そこへ、訪れました集団が第二王子と最近噂になっております男爵令嬢と、取り巻き方です。
いずれも、侯爵家伯爵家の次男三男ですわ。
今回彼等はパーティには出席資格がありませんのに、姿を見せるのはいかがしたのでしょうか。
と、呑気に構えていましたのですが。
一直線にわたくしの元へ来るなり、滑舌悪くそう発言されました。
「なんだ、その態度は。仮にも私の婚約者ならば、礼儀をわきまえたらどうだ」
「殿下、礼儀を ……」
「お止めなさい、アンディ」
「しかし、姉上」
「良いのよ。本日は無礼講なのだから。多少の戯れは許されるわ」
抗議しかけた弟を嗜めました。
今日の善き日に水を指したくはありません。
わたくしが、我慢しましたら良いだけのこと。
ですが、遅すぎましたみたいですわ。
周囲の耳目を集めてしまいました。
無理もありません。
第二王子と男爵令嬢にその取り巻き方は、今や時の人ですもの。
ざわついていましたパーティ会場は、楽団の音さえも静寂に包まれてしまいました。
「姉が姉なら、弟も不敬だな。まぁ、今は弟にまで構っていられない。クリスティン、よくも私のリリアに傷を負わせたな。それに数々の暴言や持ちものや制服の器物損壊、はたまた階段から突き落とす行為。足首の捻挫で済んだが、下手をしたら死んでもおかしくなかったのだぞ」
「わたくしが、そのような行為に及んだと仰ります証拠や理由は、ございますの?」
「ある。貴様が私の婚約者の地位に執着したのが理由だ。証拠についても、目撃者が多数あるのだ。言い逃れはできんぞ」
「そうですの」
第二王子の腕にすがる可憐な女性が視界にはいります。
いかにも怯え震えていますが、だてに社交界の毒薔薇と呼ばれていませんわ。
演技が下手すぎでしてよ。
庇護欲がそそる顔立ちですが、言動が相手によって変わりますので、常識的な男子学生に敬遠されていましてよ。
学生会の会員でもありませんのに、わたくしの処に苦情が殺到して困りましたわ。
「では、その目撃者の方々には罰を与えねばなりませんわね」
「なんだと。一介の公爵令嬢が罰を与えるなど、司法官でもない貴様に何ができる。そんな傲慢が通る分けがないだろう」
「ですが、無実なわたくしを糾弾したのです。彼等は、偽証罪に問われますわ」
「はっ。何が偽証罪だ。大人しく罪を認めれば良いものを」
第二王子の言葉に弟達が激昂していますのがわかります。
けれども、先程のわたくしの制止に騒ぎ出すのは礼儀に反すると、抑えています。
可愛い子達ですわ。
対して第二王子側はパーティに祝福に来たと思いましたら、この有り様です。
パーティを台無しにさせてしまうのは、王子だからと言いましても赦されません。
権力を振り翳してますのは、第二王子側ですわね。
今日のパーティの為に在校生がどれだけ、準備に労力を費やしましたか労いもせずに、一方的な言動に少なからず不快に思いました。
それに、流石に哀れになってきましたわ。
一人の女性に溺れて勉学を疎かにしまして留年になってしまい、国王から謹慎を言い渡されましたのは、つい最近でしてよ。
よく、監視の目を潜り抜けましたわね。
「罪を認めますも、根本的にお間違えになっておりますわ。ヘンリック様とわたくしは婚約しておりませんのよ。どうして、婚約者でもない方の愛人に嫌がらせをしなくてはなりませんの?」
「婚約してないだと。嘘をつくな。父上から、ラドンナ公爵令嬢と私は婚約者だと聞かされ、毎月茶会に付き合ってやっていただろうが」
「そうです。嘘はやめてください。ヘンリック様とお茶をしていますのは、わたしだって見ています」
「彼女の言う通り、嘘は止められた方がよろしいですよ。ラドンナ公爵令嬢とヘンリック様の婚約は、社交界でも有名な話題になっているではありませんか」
「そうだ。我が伯爵家でも話題になっているぞ」
男爵令嬢を皮切りに、次々と取り巻き方が喚きだします。
いつ、貴方方の発言を許しましたか。
第二王子は王族だから無礼は許しましたが、貴方方の無礼は許しませんよ。
【黙りなさい】
言葉に魔力を乗せます。
第二王子以外の取り巻きと男爵令嬢の口を強引に閉ざしてあげました。
これで、不快な音が聴こえなくなりましたわ。
「なっ⁉ 魔法だと。貴様何をする」
「煩い虫を黙らせただけですわ。これで、ヘンリック様とゆっくりお話ができますわ」
「話だと。ふん、貴様の話聞いてやろうじゃないか。リリア、暫く我慢してくれ。私がこいつを絶対に地べたに這いつくばって謝らせてやる」
あら、ヘンリック様にそれが出来まして。
宣誓布告ですわね。
いいですわ。
受けてたちます。
ざわり、と周りが騒ぎ始めました。
パーティにおられる方々が証人ですわ。
「姉上、お顔が笑っておられます」
「あら、そう。ですが、しかたありませわ。楽しいのですもの」
「何が楽しいか。こちらは不愉快だらけだ」
「あら、わたくしも不快でしてよ。だって、格下のリバイラナ王国の王子に喧嘩を売られたのですもの」
「? 何を言っている」
「ですから、わたくしはラドンナ公爵令嬢では、ないと言っているではありませんか。彼女に頼まれましてお茶会には同席しておりましただけですわ。けれども、納得がいきましたわ。ヘンリック様ときたら、公爵令嬢ではなくわたくしとばかり話されるのですから」
「はあ? まて、貴様は同席していたあのぽっちゃりした女性がラドンナ公爵令嬢だと、言うのか」
「まぁ、彼女を貶さないのは及第点ですわね。そうですわ。彼女がラドンナ公爵令嬢でしてよ」
自分の婚約者が男爵令嬢に侍り、蔑ろにするあまり、ストレスで過食に陥ってしまいました公爵令嬢ですの。
恥ずかしさをひた隠してヘンリック様とのお茶会に出席してらしたのです。
お茶会でも話題に口を挟む事なく飲食してばかりでしたわ。
「ならば、貴様は何者だ。私のリリアに嫌がらせをした意味はなんだ」
「姉上が、そこな男爵令嬢に嫌がらせをするものか。ラドンナ公爵令嬢でもないのは、自明之理だ。自ら証明をしたのだからな」
「弟の言う通りですわ。わたくしは、ヘンリック様の婚約者では、ありませんもの。嫌がらせします意味がありませんわ。あぁ。問われましたから名乗りますけれども、この無礼はリバイラナ王国に還元させていただきますわ」
慌てふためくパーティ会場ですわ。
あら、周囲の皆様同罪でしてよ。
自国の王子を止められませんでしたもの。
講師の中にはヘンリック様のお身内がおられますわね。
学生会の会員も、学園長も、事の成り行きを見守っていますばかりで、無礼者を排除しようとなさらないのですから。
わたくし、怒っていましてよ。
「わたくしは、クリスティアナ・ベルリー・ベラドンナ。リバイラナ王国の宗主国ベラドンナ女王国の王太女ですわ」
懐から身分を示します紋章入りの短剣を取りだしまして、つきだしました。
一度やってみたかったのですわ。
気分が良いですわ。
「姉上。第二王子は気絶されました」
あら、軟弱な精神力ですこと。
でも、仕方ありませんわね。
我が国は女王国ですけど、頭文字に残虐非道とつきますもの。
逆らいます者には容赦無用ですわ。
わたくしとて、毒薔薇と呼ばれています女でしてよ。
無礼者には、相応な罰を与えねばなりませんわね、
「アンディ。この愚か者達を拘束しなさい」
「はい、姉上。すでにしております」
「あら、良い子ね。それでは、国に帰りましょう。愚か者を訊問しなくては」
「訊問ですか?」
「ええ、そうよ。女に狂ったお馬鹿さんが、どうしましてわたくしとラドンナ公爵令嬢と間違えましたのか。聞かなくてはね」
アンディと同級生な幼友達が、わたくし達の周りに結界を張りまして、部外者を近づけないようにしていますわ。
その中にはリバイラナ国王の姿がありましてよ。
息子の勘違いにあわよくばと願いましたのを、影達から情報がありましたので、わたくしの知るところですわ。
「成る程、あの様子では黒幕がいるねですね。流石は、姉上です。訊問には、僕も立ち会わせてください。姉上を侮辱しました数々、とても許せません」
「構いませんわ。アンディは将来の宰相ですもの。わたくしに否やはありませんでしてよ」
「ありがとうございます」
「「「王太女殿下、我等も後学の為に是非見学させてください」」」
アンディも幼友達たちも高揚しましたのか、瞳が輝いていますわ。
可愛い子達のお願いですもの、わたくしは構いませんわ。
訊問を張り切りますわ。
「うふふ。初めは不快でしたけど、楽しい玩具が手に入りましたし、楽しいですわぁ」
アンディに拘束されています男爵令嬢の怯えっぷりに、笑いが止まりませんわ。
ねぇ、ヒロインさん。
悪役令嬢にざまぁされたご気分はいかが?
ヒロインさんに相応しい悪役令嬢になります為に、わたくしとても頑張りましたのよ。
わたくしの地位を狙います姉妹を物理的に排除したり、弟のアンディをわたくし好みに教育したり、とても大変でしたのよ。
ねぇ、わたくしを糾弾したのですから、相応な覚悟を持ちまして挑みましたのでしょう?
因果応報をご存知かしら。
第二王子の権力を盾に随分と派手に遊んでいらしたわね。
人死もでていましたのよ、知っていまして。
わたくしが 、アンディの為に見つけた逸材でしたのよ。
その人格を見極めますためだけに、遊学していましたのですわ。
喪った時間の分、楽しませてくれなくては駄目よ。
「姉上。帰還の準備が整いました。? どうされましたか、姉上」
「何でもなくてよ。ヘンリック様方が、どう楽しませてくれますのか、思い馳せていただけですわ 」
「それならば、良いのですが。何事が、憂いがございましたら、お教えください。全力で排除致します」
まぁ、格好いいこと。
わたくし、感動ですわ。
あの小さな子が逞しく成長しておりますわ。
感無量とは、きっとこう言うことね。
「ありがとう、アンディ。それでは、帰還致しましょうか。この国での用はなくなりましたから」
「「「「はい」」」」
「それでは、皆様ごきげんよう」
ニッコリと笑顔で告げました。
結界の向こう側で、項垂れます国王がいますわ。
後の祭りでしてよ。
所詮は女と侮りましたのは、そちらでしてよ。
新しい玩具が楽しませてくれます限りは、リバイラナ王国に手は出さないであげますわ。
約束してあげましてよ。
言葉にはしませんけども。
足掻いて見せなさいな。
ねぇ、わたくしを楽しませて頂戴。
わたくし、退屈なの。
家族も姉妹も、みぃんな遊び相手にはなりませんでしたわ。
もう少しで、お気に入りなアンディを遊び相手に選ぶところでしたのよ。
わたくしを崇拝していますアンディの心を折るのは、とても感慨無量ですわね。
あぁ、その時が待ち遠しいですわ。
「うふふ、あはは。とおぅっても、楽しみですわ」
主人公な彼女の最後の言葉からこの話は出来上りました。
彼女は歪んだ思想な持ち主ではなく、生まれついた場所が悪く足掻いた結果があんな風に育ちました。
女王国の法では男児は、必要がありませんでした。
死産として処理されかけた弟を拾い上げたのは、単なる暇潰しでした。
それが、崇拝してきましたので、大事に育て上げることになりました。
多分、最期の時まで弟には、騙し続けることでしょう。