表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/36

赤道通過

「赤道通過」

 兵学校でも日曜日、祭日などの休日はありました。

その前の日になると1号生徒から4号生徒までが一つの班をつくり学校からカッターを借りて江田島の近くの島までミニ航海をします。

 もちろん生徒とはいえ船乗りの卵ですから事前に海図を見てどの島に行くか、食料はどうするか、テントや寝袋の手配はだれがするかなど準備は万全にして行動計画表を学校側に提出してから許されるのです。

 島に着くと、今でいうキャンプファイヤーを囲んで、持ってきた飯盒でご飯を炊き、野菜や肉、海で釣った魚などを調理して全員で食事をした後、星空を見上げながら流行歌を歌ったり、将来の夢や故郷の話、近所の女の子の話などをして朝まで語り合ったものです。

 

ここではもはや学校内の先輩と後輩という関係はまったく無く、ただ星の下で語り合う人間同士という関係で心の底から思っていることや考えをお互いにぶつけあったものです。

 その行きと帰りに必ずカッターで通過する小さな海峡があります。

学校のある江田島の沖合いにポツンポツンと1000メートル間隔で赤い浮きが浮いていました。この浮きと浮きの間を結んだ眼に見えない線を我々は「赤道」と呼んでいたのです。

 実際に遠洋航海などでは赤道を通過するときには必ず船の上で「赤道通過祭」というお祭りをするそうですが、我々はこの小さな「赤道」を越えるときには必ず「赤道通過!」と大きな声で叫びます。

この意味はこれから以降は1号生徒から3号生徒までが学年の隔たり無く無礼講で接することができるというルール変更の合図なのです。

 また帰りは逆で同じく「赤道通過!」の声がかかるとまたルール変更で学年の上の言うことを絶対聞かねばなりません。つまり無礼講の終了を意味します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ