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ベッドの上の夫婦と、ついでに指導の話

 非情に今更だが、俺とマリーは夫婦なので同じベッドで寝ている。

 もしも俺がついうっかり彼女の上にのしかかったら彼女は命の危機なのだが、その辺りはミミ族であるアンドラが聞き耳を立てているので大丈夫だそうだ。

 最悪の未来は回避できるというだけで全く安心要素がないが、俺は寝相がいいらしく彼女と寝ていても彼女を困らせることはほぼなかった。


「それにしても、本当に子ができるんでしょうか」

「経験豊富なヨル族を信じよう」


 正直、入れるたびに良く入るな、と思っていた。

 まあ、入って出しているので、その内子供もできるだろう。

 そうユリさんも言ってるし、かなり信頼できる。彼女たちはその辺りに特化していて、およそ紛れはないだろう。


「それにしても、ユリさんもバラ様も、どうして男の子にこだわるのでしょうか……」

「彼女たちは、女の子しか産めないからな」


 夢魔族は誰と寝ても夢魔族しか産まない。それはつまり、女の子しか出産できないのだ。

 別に女の子が嫌いと言うわけではないのだろうが、男の子を産むのに憧れがあるのだろう。

 特に人間の女は混血児を産めるので、その辺りは余人にはわからない憧れがあるのかもしれない。

 短命の男からすれば、長命と美しさを兼ね備えている時点で、他の誰かをうらやむ要素など一切なさそうなのだが。

 そういう理由もあって、例の指輪に対して関心がある夢魔族も多いのかもしれない。

 でもまあ、俺は男でも女でも、健康な子ならそれでいいと思うけどな!


「それにしても……他のダイ族の方はタロス王の様に狩りをしないのですか?」

「する必要がない」


 当たり前だが、織田信長の様に長い槍を持たせた農民をズラリと並べてしまえば、そこらの人間でも巨人族を殺すことはできる。

 それはもちろん、身長三メートル半の巨人に対して、ある程度恐れを持たずに立ち向かえる程度の指導が必要だが、槍の長さは恐怖を忘れさせてくれるものである。

 武器の最大の強みは、分かりやすいほどに射程距離である。基本的に遠くから攻撃できる武器は、ただそれだけで強い。

 もちろん、作るのが大変とかそういう問題はあるのだろうが、とにかく武器とは遠くから攻撃できるから強いのだ。

 また、壊れても新しいのを使えばいいのも大きい。

 仮に金属製の兜を木の棍棒でブッ叩いて壊れても、新しいのを持ってくればいいだけだ。これが自分の拳だと替えが効かない。


 それに、言うまでもなく殺傷能力だろう。


 九氏族に体術がほとんどないのは、基本的にそんなものが不要で、態々素手で戦う理由がないからだろう。

 剛人族はその例外だが、あの連中は体の硬さが全てなので、そっちに関しては色々やっているのかもしれない。


「君は罠も仕掛けず猟犬も用いず態々素手で獲物をしとめる猟師がいたとして、それの真似をすると思うか?」

「そうですね……」


 鬼人族や巨人族にとって、素手で戦うのはある意味遊戯に近い。

 そして、その遊戯をとことん極めよう、とは思わないのだろう。

 仮に熊を素手で倒せる男がいたとしても、態々手間のかかることをするな、と怒られるに違いない。

 なんで危険の伴う仕事で、態々危険度が増す行為をするのか。狩猟は遊びじゃないんだよ、食料調達なんだよ。


「そりゃあよっぽど鍛えれば素手でも安全に狩猟ができるだろうけど、棍棒で良いだろ、棍棒で」

「そうですね……確かに、戦場でなら槍か剣か弓でしょうし」


 要するに、ダイ族には格闘技は必要ないから存在しなかったのであって、得意げになって教えるようなことではないのだ。

 やはり、本格的に教えるときになったら、その時はあらかじめ誰かに習っておきたいところである。


 だが前も思ったことだが、時間がかかりすぎる文化は、今の巨人族には余りにも不向きなのだ。

 それこそ俺のケンカ殺法のように、やり方さえ覚えればある程度再現ができる程度の難易度でないといけない。

 そして、その上で安全でなければならないのだ。


「今回は俺もいい経験をさせてもらえそうだよ。俺が王になるために鍛えた技を、王であり続けるために鍛えた技を教えてみるさ」

「彼が素敵なお嫁さんを見つけられるといいですね」

「ああ、そうだな」


 まあ、今頃夢魔族に食われてるだろうけども。

 その内、夢魔族と結婚したいとか言い出さないだろうな。

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