王の心得と、ついでに武器の真価
ものすごく恥ずかしそうに、自分の『枝』をしまい込むツミレ女王。
確かに見た感じでは余りにも貧相である。なんで枝を友人に送るのか、魔王以外には誰にもわからない。
確かにどんな機能がその枝に備わっていたとしても、他の王権の武器に比べてみっともないところがある。
黒い魔剣、茶色の鎖、金色の金棒、緑色の弓、灰色の鉢巻、銀色の斧、赤銅のカンテラ、鏡の盾、この場に無い聖剣。
ときて、青い枝。劣等感を感じるには十分だった。
「では機能の説明をする故、よく聞いてほしい」
一方で、城の中庭に皆を集めていた魔王は上機嫌だった。
自分の造った武器が、十のうち九揃っていれば当然だろう。
彼の主観で言えば、二千年以上ぶりの集結なのだから。
もちろん、聖剣と魔剣を手放したのは彼自身なのだが。
「共通機能はチャージ、ダッシュ、ガードの三つ。チャージに優れているのが雲枝ゼクス、大斧ズィーベン、聖剣ツェーンの三つ、ダッシュに優れているのが静鎖ツヴァイ、念弓フィーア、猛帯フェンフの三つ、ガードに優れているのが獄棍 ドライ、幻灯アハト、鏡盾ノインの三つだ」
何とも自慢げに列挙していく。
おそらく、マリーは何が何だかわからないだろう。
だが、当の所有者たちは、ああなるほどと納得していった。
武器そのものにそうした力があるのだろう、あらかじめ知っているバラとラッパは当然として、他の諸王もするすると記憶ができていく。
魔剣によって目覚めさせられた武器たちは、己の主と設定された諸王に知恵を授けていった。
「固有機能に関しては、そう言うものがあると知れば理解できるように作っておいた。それに、アレは元々開拓のために作った物で城内で使うべきものではないからな」
そう言って、それ自体もカミ族が作ったであろう的を準備させた。
白い布を木に巻き付け、更にそれを人型にしたような、単純な物だった。
「ではエリア王よ、アレをダッシュしたまま射抜け」
「承知」
そんな的であっても、やはり遥か先祖が手にしたという伝説の武器が、その真価を発揮する一瞬である。
魔王に対する恐怖がないわけではないが、やはり初代以来の真価に心が震えている。
しかし、弓矢を操ることにかけては並ぶ者なしと称えられるユミ族。
まして、その王が無様を晒すわけがない。
心の震えは緑色の短弓には伝わらず、まして腕には現れない。
既に明鏡止水の姿勢に入った彼は、全身を緑色の光で覆っていた。
直後、数十本は入っていた彼の矢筒が空に成り、更に人形には淡く光る緑の矢がハリネズミのように刺さっていた。
その光景に、誰よりも驚いたのはエリア王だった。
既に髭の揃っている姿の成人は、余りにも意のままに射抜けたことに驚いてた。
「うむ、見事だ。弓矢の事は分からぬがな」
微妙にとんでもないことを言っているシルファー。
また、彼の言葉と同時に突き刺さっていた大量の矢が抜けていく。
白い布に思われた的は、しかし刺さっていた痕跡を一切残していなかった。
「ダッシュは体を早く動かせる機能だが、念弓フィーアの場合は射撃の速度を上げている。これを与えたキャンサは、大喜びで背に抱えられるだけの鳥を獲って戯れていた」
「料理するのは人任せなくせにね、キャンサはソボロやアトラスが大物を捕えてくると、それはもう気にしてたから」
「口を開くべきではあるまい。我らと違い、既に彼らは伝説の存在だ。武勇はともかく、そうした恥部は語るべきではない」
何やら、伝説の王の事に関して語り合っている最初の王たち。
マリーや半人に分類される者たちは、その王に関して逸話は知っていても、個人的な性格に関してはあまり詳しくない。
それを直接知る面々から聞きたいような、神聖なる存在であってほしいような。その辺りの心境は人それぞれだった。
「ふむ、違いない。では説明はこれまでにしよう。とはいえ……オカカ王は知らぬだろうが、先日他の王に語ったように、どうかこの武器を氏族の者に向けぬように願う」
その一方で、遥か古からすべての王を統べる王は、昔から何一つ変わらないことを全員に語っていた。
「この武器が真価を発揮せずとも、あるいは手元に無くとも、我が永遠の友とその子孫、即ちこの場の諸王の先祖は皆が任を全うしてきた」
これは、一種のおごりかもしれない。
例えば、この武器を有効に活用すれば、もっと良い社会を作れるのかもしれない。
あるいは、メザが嘆いたように、ケンチュウが怒っていたように、あの戦争で多くの死者が出なくてもよかったのかもしれない。
しかし、それはきっと分を越えた考えなのだろう。
「カナブ、タロス、ツミレ。この三人は既に何も要らぬほどに王である。ケンチュウ、エリア、オカカ。我ら長命の三人ではなく、短命の彼らをこそ見本とすることだ」
この武器が領分を越えた力、不要な力だというのなら、製作者である魔王の領分とはどれほどか。
そも、王どころか神の如き力を戯れの様に生み出す、この魔王は如何なる心境で己たち如きの頂点に君臨しているのだろうか。
「良き王となり、いずれ我が友の元へ行くが良い」




