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巨人族の村と、ついでに覚悟

 現地を見てマーケティングをしようと言うアレックス君の提案はもっともだった。確かに俺が巨人族をきちんと見ていないことは事実だし、どのみち何かを啓蒙するなら深く関わらねばなるまい。

 と言うことで、一旦情報を集めよう。村を回るのは王の仕事でもあるのだから。

 ということで、マリーも連れていく。正直、彼女からの意見も欲しいのだ。


「ということでだ、マリ―。アレックスとも相談したんだが、とりあえず現地視察しようと思う」

「現地視察……」


 現地視察、という言葉に恐れおののいているマリー。

 アンドラもユリさんも、似たような感じだ。まあ、気持ちはよくわかる。

 俺だって、俺以外の巨人族からクールビズとか言われたら困るしな。

 お前ら半裸がデフォだろ。


「彼らが求めている物でもなく、彼らに必要な物でもなく、彼らが受け入れてくれる物を探したい。君の意見も欲しいんだ。それに、一回君にはダイ族の生活を見て欲しい」

「まあ……気を使っていただいてありがとうございます」


 なんか、マリーは巨人族の生活を知りたがっていた。

 見て楽しいものではないし、参加すれば尚楽しいものではない。

 しかし、一度体験した方がいいだろう。無理解は理想の押し付けになってしまうのだから。


 駄目になって帰ってしまっても、それはそれで仕方ないだろうし。

 幸いこの屋敷の中では、彼女の暮らしはそう悪いものには思っていないようだし。

 最悪、ユビワ王国にかくまってもらうこともいいだろう。

 選択肢の多さは、いつだって心に余裕を持たせてくれるものだ。

 とまあ、そんな理由で俺はマリーとアンドラを連れて、各村を見て回ることにしたのだった。



「おっ、タロス王じゃねえか!」

「なんだ、例の鉈か! ありがとうよ!」

「こりゃあいいぜ、握ってみろよ!」


 何気に、巨人族が人間の道具を使いたがらないのは、体格が違いすぎて使いにくいからである。

 実際、俺も食器を使ってて結構うまくいかなかったりするし。

 子供用の食器、と思えば大体想像できるのではないだろうか。


 さしあたり、と一頭の猪を運んでいる俺に巨人族の若いのが話しかけていた。

 俺よりも若いので、幼いに分類されるのかもしれない。


「また獲物を配ってくれてるのかい、悪いねえ」

「今日は他の村の連中はいねぇな」

「そうか、鉈配るついでってか!」


 新品の鉈を振り回して上機嫌である。

 素人の打製石器と専用の金属器では、そりゃあ便利さが違うだろうしな。

 村に一つしか配らないつもりだが、きっと重宝してくれるだろう。

 もちろん、野ざらしにされてそのまま、と言う可能性もあるのだが。

 物を大事にしない奴らだからなぁ……。

 砥石の配給とその使い方ぐらいは教えた方がいいかもしれない。


「ああ、ついでにお前達の村でも見に行こうと思ってな。良ければ晩飯でも、と思っていたところだ」


「「「え?」」」


 ものすごくびっくりしているガキども。

 まあ、気持ちはよくわかる。

 今までとことん村に立ち寄りたがらなかったし、立ち寄っても殆ど不機嫌だったからな。

 なので、こうやって積極的かつ友好的な接触は驚いたはずだ。

 というか、人間の嫁さんまで捕まえたし。みんなの前でお披露目もしたからな。

 そりゃあ、普通は今まで以上に疎遠になると思うだろうさ。


「不満なら、この獲物と一緒に隣の村に行くつもりだが」


「いやいや、不満なんて、なあ?」

「おう、大歓迎だ!」

「こりゃあ歓迎だな!」


 俺から猪を受け取ると、皆が意気揚々と村に向かって歩いて行く。

 そんなに喜ぶことでもないと思うんだが。


「受け入れてもらってよかったですね」


 とことこと、俺の足元についてきているマリー。

 確かに、まあ悪いことではないだろう。しかし、それはそれでなんか嫌だな。

 我ながら、理不尽極まりない話である。


「アンドラ、マリーが具合を悪くしそうだったら、その時は頼んだぞ。最悪、邸まで連れ帰ってくれ」

「受けたまわりました」

「……そんなに、危険ですか?」

「色々と不衛生なんだ。だから、君の健康を害するようなことには、極力気を使いたい」


 はっきり言って、文明人には過酷すぎる環境だ。

 生水や地べた……体を洗わない住人、汚臭……マリーを守らねばなるまい。

 そして、俺も嫌だけど我慢せねば!


「行くぞ、巨人の村へ!」

「タロス王、貴方の氏族では?」

「そうだけども……」

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