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敵の姫様が綺麗だったので、略奪婚してしまった巨人の俺  作者: 明石六郎
第四章 説得と言う名のおせっかい
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俺が巨人の王に成れたわけと、ついでに納得のいかないメザ

 いくつか当たり前の話をしよう。

 巨人族と鬼人族と剛人族は、程度の差や個体差はあっても筋力に優れた氏族である。

 それこそ、火薬やそれに続く銃器でも発明されない限り、一対一でこれらの氏族を他の氏族が越えることはまずない。

 それこそ、ニホンザルとゴリラぐらい生物として性能差があるので、剣や槍で武装したぐらいでは勝ち目などないのだ。

 加えて、俺は巨人族最強の男である。

 猿山の大将と言えばそれまでだが、ゴリラの森で最強のゴリラ、と言えばそれなりに説得力も生じるだろう。

 俺を倒せる生き物など、それこそ俺の背後で観戦の構えをしている剛人族のカナブ王ぐらいである。

 然るに、目の前のメザという娘っ子も似たようなもんである。なにせ、彼女も鬼人族。比喩誇張抜きにメスゴリラだ。むしろゴリラよりもゴリラかもしれん。

 ぶっちゃけて言えば、この森の中に建てられた食糧庫周辺で、彼女と戦って勝てるのは俺かカナブ王ぐらいで、他のメンバーは数の勘定に入れられないのだ。

 まあ、伝説の武器を使えばその限りではないだろうが、ラッパ王もバラ女王もそんなに乗り気ではなさそうである。

 つまり、王が八人いる状況でも戦えるのは俺とカナブ王ぐらいで、他は当てにできないのだ。


「ぶっ殺してやる!」


 勢いよく殴りかかってくる鬼人の娘。

 頭が完全にノーガードなのでそこが狙い目だが、それは最悪の一手である。

 というのも、鬼人族という生き物にはある武器がある。


 剛人族は九氏族全体から見ても極めて背が低いのだが、その体重は巨人族に匹敵する。非常に筋肉質で、屈強で、頑丈だった。

 彼らは力むことで体を鉄よりも硬質化させ、人間の盾や鎧を中身と一緒に殴り砕いたり、剣や槍の一撃を軽々と受け止めるという。

 そんな彼らだが、一つだけ苦手としているものがある。

 鬼人族の角だ。

 ツノ族と名乗っているだけあって、彼らの角は非常に硬質で鋭利だ。

 何ともたまげたことに、この角は剛人族の肉や骨さえも切り裂いてしまう。

 仮に、俺が彼女の額を殴ってしまえば、角に触れた俺の拳が切断される、ということもあるのだ。

 だが、だからと言って鬼人族が絶対無敵で最強と言うわけでもない。


「うがああああああ!」


 そもそも、俺は如何にして巨人族の王になったのか。

 それは衆人環視の元、公正な素手の試合によって、真正面から他の巨人族と戦い勝利したからに他ならない。

 そして言っておくが、俺は生憎と神様からチート能力を渡されて、それを好き勝手に使って優勝した、と言うわけでもない。

 とはいえ、当時十五かそこらの俺が勝ったのには、いくつかの理由がある。

 それは、生前の俺が格闘技を習ったことが無くても、格闘技を知っていたことに起因する。

 猿真似ならぬ、ゴリラ真似と言うわけだ。


「ふん!」

「がほっ!」


 まず、普通に前蹴りである。

 組み付きあい、頭突きの間合いになればこの上なく脅威となる鬼人族の角も、頭突きができる間合いでなければ意味がない。

 体重とリーチの差を生かして、蹴って突き放す。

 なにせ、俺とこの子は一メートルほども身長差があり、倍とは言わぬがそれに近い体重差があるのだ。

 普通に蹴っ飛ばせば、大きく吹き飛んで近づけない。

 要するに、頭突きの間合いに近づけさせなければ、巨人族にとって鬼人族など子供も同然なのだ。

 頭を殴らずに、他を殴る。

 それだけで、巨人族は鬼人族に勝ててしまう。


「こ、このぉ!」

「ふん!」


 加えて、俺には巨人族の王になるために鍛えていた『必殺技』がある。

 いや、もちろん必ず殺す技でもなんでもないのだが、巨人族の娘と結婚したくない一心で鍛えてきた技があった。

 それは『ギャラクティカなんちゃら』とかのスーパーパンチでもないし、『ほにゃららバスター』とかの投げ技でもない。

 それは……。


「ってぇ!」


 近代兵器、ローキック。

 脛や足の甲で、相手の足を蹴る。

 ただそれだけの、非常に地味な技である。


「ふん、ふん、ふん!」

「っでええええ!」


 だが俺は、このローキックで巨人族の王に至った。

 まず、このローキックは滅茶苦茶習得が簡単である。もちろん総合格闘技とかそんな感じの、一流どころから見れば雑だろうが、素人でも練習すること自体は難しくない。

 ハイキックと違って、受けられても足をつかまれるとか、そんなことにならない。

 鬼人族を相手にする場合は更に有効で、角で防御できる範囲よりも下であるし、リーチの差から一方的に蹴り続けることもできる。


「く、クソ……!」

「おらぁ!」

「がはあ!」


 加えて、足を蹴られていると普通に痛いので、視点がどうしても足に向く。

 そうなれば頭の防御がおろそかになって、角という攻撃的な防御手段を持つ鬼人族を相手にも安全に顔面に一撃を入れることができる。


「くそ……そんな腰の入ってない拳で、私が負けるか!」


 とはいえ、全体重を込めたフルスイング、と言うわけでもない。

 形は滅茶苦茶だろうが、ジャブ程度の軽いパンチだ。

 人間なら首が折れるだろうが、鬼人族はそこまで柔ではない。

 少し顔がはれる程度で、すぐに立ち向かってくる。

 だがそれでいいのだ。俺は全く慌てない。


「ふん、ふん、ふん!」


 鞭のようにしなる足、というわけではない。

 だが丸太のように太い脚で、彼女の左右の足を内側から外側から蹴りまくり、機に応じて顔を軽く殴る。

 凄い地味で姑息で時間がかかるのだが、相手が一人で素手ならこれぐらい慎重に立ち回るのが正解だろう。

 これは戦争でもなんでもない、ただの喧嘩だ。喧嘩でケガをするのはつまらない。


「ち、畜生! ちくちくやりやがって……!」


 ただでさえ赤い彼女の肌だが、その両足は更に腫れ上がっていた。

 骨折こそしていないものの、内出血しており痙攣している。

 根性の問題ではない、肉体が限界を迎えているのだ。


「悪いが、少年少女の自己主張に付き合うほど、俺は大人じゃないんだ」

「う、うるさい! なんなんだよ畜生、これは!」

「文化の力だ」


 もはや彼女は、まともに走ることもできまい。


「俺に力があるだけで勝てると思うなよ」


 これぞ文武両道、と言うことにしておいてほしい。

 俺はゴリラの森のゴリラ王だが、格闘技を知っているゴリラなのだ。

 王になった当時よりも大きくなっている俺が、この形式で戦って鬼人族や巨人族に負けるわけがないのである。

 指導を受けていないなんちゃって格闘技でも、最大のゴリラがやれば魔法のように強力なのだ。


「く、くそ……」


 そして、もう一つこのローキックには利点がある。

 足が折れる程度で済んで、死ぬということがないということだ。

 このまま、折れる勢いで蹴りまくろう。


「どうした、腰が引けてるぞ?」

「チマチマやりやがる……それでもダイ族の王か!」

「生憎だが、俺はツノ族の内輪もめなんてどうでもいいんだよ」

「なにぃ?!」

「悲劇のヒロイン気取りにはうんざりだ!」


 と、叫びながら彼女を中心にしてステップして、ゆっくりと彼女の背後に回る。


「クソ、待てよオラ!」


 俺に背を向けて、他の誰かに襲い掛かるなら背後から襲い掛かるだけ。

 そして、案の定彼女は俺を正面に捕らえるべく、足を引きずりながら体の向きを変えていく。

 ああ、これはもう倒せる。俺は彼女に前蹴りを叩き込んだ。

 ダメージを与えるというよりは、押し込む蹴りだ。

 それだけで、彼女は大きくよろめき、地面に尻餅をつく。


「勝負ありだな……」

「クソ……何なんだよ……」


 実際鬼人族の娘を暴れさせていたら、怪我人が出るぐらいじゃすまない。

 こっちは斧を使わないだけでも大分配慮していたのだ、そこはご理解をして欲しいところである。

 もちろん、理解してもらわなくても、俺は一向に構わないのだが。


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