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敵の姫様が綺麗だったので、略奪婚してしまった巨人の俺  作者: 明石六郎
第二章 結婚式と言う名のお披露目
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応用の実践と、ついでにチャージのチュートリアル

 ガードのチュートリアルを終えた後、俺達は一旦森の中の幕、陣地に入ってみた。

 なんというか、こう、炊き出しの現場と言うか、給食センターの光景だった。

 大量の夢魔族が、割烹着のような清潔な服を着て、大なべなどの準備をしていた。

 全員立ち姿がエロすぎて、割烹着を着ていても欲情しそうである。


「夢魔族の方がこんなに……」

「ああ、ざっと見ても百人以上いるな」


 なんというか、彼女たちの汗が噴き出していて、周囲を異界に変えそうな勢いだ。よくもまあ、こんなに彼女達を集めたものである。

 非常に今更だが、人間と夢魔族は他の氏族と子をなせる。

 人間の場合は互いの特性を弱める形になるのだが、夢魔族は違う。

 夢魔族は子供を産むと、全員夢魔族なのだ。そして、夢魔族は全員女性である。

 男尊女卑もへったくれもなく、女しか生まれない一族であり、異類婚が前提の氏族である。

 つまり、ある意味では全員が純粋な夢魔族で、ある意味では全員が混血なのだ。


「ねえおばあ様」

「あらお母さま」

「おやおや、どうしたのかしら?」

「どうしたんだい?」


 全員妙齢の女性にしか見えないのに、おばあちゃんとか孫とか言い合っている。

 はっきり言って、非常にシュールだった。


「おばあ様、私今回みたいな大物は初めてで……」

「私もだよ。でも私のおばあさんなら知っていると思うから、ちょっと待ってなさいね?」


 スケールがでかいなあ、夢魔族。

 というか、視界の隅で働いている森魔族も似たようなものなんだろうか。

 どっちも少なくとも、二千年は余裕で生きるわけで……。


「ヨル族の方は、出産適齢期はどうなっているのでしょうか」

「知らん、滅茶苦茶デリケートだからあんまり触れたくない」

「そうですね、差し出がましい事でした」


 まあ、その辺りの種族差は、巨人族も同様だ。

 そもそも、三メートル以上の巨体と満載された筋肉は、十分にカルチャーショックである。

 第一、ハネ族が空を飛ぶことだって、今更ながらありえないほどの種族差なわけで……。


 してみると、今更ながら夢魔族や森魔族が他の氏族に献身的な理由を再確認する。

 魔王領に住む九氏族の安定も、武闘派である五氏族の奮戦によるものだ。

 寿命が何千年とあっても、刺されれば死ぬのだし。

 単に長生きができるというだけで、彼女たちは伝説の武器を持つ王を除いて脆弱だ。

 そりゃあ奉仕だってするだろう。

 そうしないと、力づくで従わされるだけなのだし。


「それにしても、沢山の方が準備をなさっていますね……」

「ああ、全くだ……だが、きょ……ダイ族全体に食わせるには大分足りない気もするな」


 いくら何でも、夢魔族の全員が此処にいるとも思えない。

 第一、半鳥族も多いことは多いが……どうなんだろうか。

 思い荷物を運ぶのは苦手な彼らである、巨人族が食う分を運びきれるとは思えない。


「ピストン運送にも限界があるはずだ……どうするつもりなんだ?」

「ご安心ください、タロス王。手筈はすべて整っております」


 やはり控えているラッパ王が、俺に安心するように言ってくれた。

 それはいいのだが……いや、気にしても始まるまい。


「狩場は近いんだろう、誘導してくれ。余り待たせたくない」

「わかりました。では、奥方はここに残るべきでしょう」


 なんというか、現実的な提案だった。

 少なくとも相手が大型の獣なら、それは当然の理屈である。

 大型の獣が、象より大きいことは確実であるし、群れであることも想定すれば傍にいるべきではあるまい。

 第一、俺だって相当心配であるし。ただ、彼女はやはりショックな様だった。

 まあ、ここまで来て、ちょっと待っててね、というのは良くないだろう。

 俺でも嫌な気分になるはずだ。


「……承知しました」

「ああ、待っていてくれ」


 だが、彼女も心得たものである。

 というか、単純に我儘だと自覚もしているのだろう。

 歩いてきたバラ女王に付き添われて、一番豪華そうなテントに入っていった。


「では、こちらです」

「ああ、わかった」



「それにしても……この辺りの木々は下手をしたらバラ女王やラッパ王よりも長生きしているんじゃないか?」


 そびえたつ木々、その雄大さに俺は圧倒されていた。

 ゆったりと森の中を歩くと、なんというか自分が小人になった錯覚を覚える。

 仮に、この森の木の葉を食べるとなると、空を飛ぶか百メートル以上の上背が必要になる。

 肉食獣がいたとしても、それを食べるほどの巨大な動物だろう。


「それはあり得ません、精々数百年でしょう」

「それもそうか……失言だったな」


 確かになあ、この木が数千年も生きている、ってなると流石に違うか……。

 縄文杉とか、写真で見たら朽ちかけていたしな。

 というか、こんな巨木より長生きしているのか。改めて尋常ではないな。


「そろそろ近いですね」

「そうか、分かった」


 背の低い植物の見当たらない、大きな木の根が支配する森の地面を歩いて行くと、そこに『巨大な獣』の群れがいた。

 群れ、というか十頭ほどが首を伸ばして大樹の葉を食っていた。

 それを見て、俺は背筋が凍っていた。

 非常に今更ながら、この針葉樹林の葉っぱを食うという巨大な草食獣を見て、その姿に圧倒されていた。

 巨人族などと人間が呼ぶが、彼らの前ではメダカと金魚ぐらいの差しかあるまい。


「なんだアレ」

「アレを我らはこう呼びます。サンダードラゴンと」


 そこには、竜がいた。

 長い首を伸ばして、もしゃもしゃと多くの草を食っている。

 枝ごとバリバリ食っている。

 一頭一頭がありえないほど巨大で、キリンなど眼ではない。


 イメージとしては、象の体にキリンの首が付いているような、そんな図体だった。

 いいや、はっきり言うとしよう。

 あれ、サンダードラゴンとかじゃない。

 サイズ的には違うかもしれないけど、あれ雷竜だ。

 っていうか、恐竜だった。

 ブロントサウルスとか、ウルトラサウルスとか、そういうタイプの巨大な草食恐竜だった。

 え、ここ『なんたらパーク』とか『ロストなんちゃら』だったの?!

 恐竜絶滅してなかったの?!

 哺乳類がここまで進化しているけど、恐竜も健在なの?!


 っていうか、アイツらとかを先祖は駆除してたの?!

 むしろ保護するべきじゃないの?!

 これからアレを料理するの?!

 そして巨人の食事にするの?!

 ものすごくもったいなくないか?!


「……迫力に押されますか、ムリもありませんが……ご安心を。その斧ならばたやすく捕らえられます」

「いや、俺はそっちを心配しているわけじゃないんだが……」


 いいんだろうか、アレをとっちゃって……原生生物って極力保護するべきじゃないかな。

 文明的かもしれないけど、文化的じゃないぞ、恐竜を食うとか……。

 学術的に考えたら……いや、そんなことを考えてる場合じゃない……。

 もしかして、何とかドンとかなんとかサウルスとかもいるんだろうか?

 同じのじゃなくても、似たようなのとか。


「急所は、あの長い首です」


 だろうな、俺も急所だよ、そこは。

 流石にそこらの木々よりは細いだろうが、俺の住処のどの木よりも太いぞ、あの首。

 皮膚も堅そうだし、筋肉もぎっしりしてそうだし、骨も図太かろう。

 正直、伝説の斧一本で相手どるにはハードすぎるが……。

 それでもまあ、確かに食えるなら量は確保できそうだ。


「ここで仕留めてもいいのか?」

「ええ、問題ありません」

「そうか、だったら……行ってくる!」


 銀色のオーラを帯びて、ダッシュする。

 一旦走り出した俺は、ただでさえのんびりと草を食っている巨大な恐竜の動きが更に遅く感じられる。

 というか、枝ごと葉を食っているので、単にのんびりしているだけなのかもしれない。

 だが、接近するほどに、その寒色の肌が壁のように巨大と分かるのが、とても恐ろしい。

 なんというか、ノミ、シラミほどではないが、彼らから見れば本当に金魚ぐらいじゃないだろうか。


「とはいえ……まあ最悪逃げればいいし……」


 幸い、相手は足を止めている。

 その足めがけて、俺は走っていた。

 そして、崖のぼりの要領でその恐竜の前足を垂直に登っていく。

 俺の重さを感じているのか、居ないのか。

 それとも動きが速いのか、恐竜はまるで動かない。

 何とも言えない足の裏の感触を感じながら、足から胴体に回り込み、そのまま首の根元に移動していた。

 当然だが、まるでうろたえていない。

 なんというか、こう……象の首の上に小鳥が乗った感じなんだろうか。

 人生で一番危機感を感じない狩りである。

 周囲の他の恐竜も、こちらに興味を向けずに、食べるのに夢中だった。

 まあいい、逃げられても面倒なので、二頭ほどを手短に片付けるとしよう。


「……流石に、この高さから落ちたらヤバいな」


 固有機能を使うとしばらく共有機能も使えない。

 その都合上、ここはチャージで攻撃するべきだろう。

 その足で、ダッシュによって駆け下りて、そのまま他の個体に乗り移る。

 そしてもう一頭も仕留める。そんな感じだろうか?


「とはいえ、チャージでこの首を何度振れば落とせるか」


 俺がこの首に抱き着いても、裏側に手を回すなど到底不可能である。

 俺と同じぐらいデカい奴が後四五人いて、それでようやく一回りという、太い首だ。

 仮に、チャージしていない、強化されているだけの斧で殺そうとして、何度振るう必要があるだろうか。

 常人が大木を斧で斬り倒す、そレぐらいの時間で済むだろうか?

 確実に暴れられるし、下手をすればこの巨体が転倒する。俺が潰されて、死ぬ。うん、あるな!

 そもそも試す必要性を一切感じられない。

 それこそ、殺してから解体するときにでも試せばいいのだし。


「要は溜め切りか……何十年ぶりだ、そんなこと言うの」


 銀色の片手斧を、両手でつかんで大きく振りかぶる。

 バチリバチリとうなりを上げていく。

 流石の高性能だった。

 なんというか、持っているだけで何ができるのかなんとなくわかる。


 この森にある、多くの巨木。そのどれよりも固いであろう、この首。

 一撃で切断できるという確信があった。


「死ねぇ!」


 我ながら芸のない叫びと共に、銀色の斧をぶん回す。

 フルチャージ、とは少し違うが、ため込んだ一撃はまるで素振りをするように手応えがなかった。

 だが、目の前の首は明らかに切断されていた。

 高い木の上まで伸ばした首の、その脳に行きわたるほどの高圧力で押し出された血液。それが傷口から解き放たれて、俺の体に噴き出していた。

 さらに言えば、膨大な重さを支えていた筋肉と骨格が切断されて、重機よりも更に巨大な首が必然的にずり落ちていく。

 巨大な恐竜には、体のいくつかの場所に脳みそのような神経の塊があると言う話を聞いたことがある。だがこれだけ景気よく血が噴き出ていれば、ゴキブリでもあるまいし絶命は免れまい。

 鮮血を浴びる俺は、それに背を向けてダッシュする。

 間違いなく、あの首が地面に落ちれば轟音が起きる。それこそ落雷のように。

 いくら鈍重でも一旦暴れ出せば、胴体を足場に首の前で大きく振りかぶることなんてできるわけがない。

 首が地面に落ちる音に気付くよりも早く、手近な獲物をしとめたい。おそらく、これだけの巨体なら食肉用にしても二頭で十分なはずだ。

 というか、早くこの巨体から飛び降りたい。そうでもないと、転倒に巻き込まれてしまう。


「……よし!」


 とにかく近いところにいる、こちらに対して脇を向けている個体に狙いを定めた。

 見たところそこそこ遠いが、とにかく飛び移らねば始まらない。

 ダッシュしてからジャンプするか、二段ジャンプか。

 とにかく走らなければ始まらない。


「おらあ、逃げるなよ!」


 既に傾き始めた体の上で、俺は銀色になりながら走っていた。

 声をだせばそれで逃げ出すかもしれないのに、俺は普段の調子で叫んでいた。

 もちろん、その顔が平常とは思えなかったのだが。

 多分、物凄く慌てて引きつっている。何というか、単純にこう、倒れている巨大な生き物から離れないと、という本能だった。


「やばいやばいやばいやばい!」


 足元は相変わらず水平のように普通に走れるが、しかし周囲の景色がずれつつあり、且つ背後では大きな音を立てて首が落ちていた。

 この巨大な恐竜たちは、俺を見ているだろうか? 取り合えず大きな音に驚いて、逃げ出そうとしているのだろうか?

 巨体相応の大声で叫びながら、倒れつつある同胞に背を向けて、逃げ出していく。

 俺が見えていないなら、自分の仲間の首がいつの間にか落ちていることに驚くだろう。

 俺の姿が見えているのなら、金魚程度の小人が自分の仲間の血で真っ赤に染まるところを見ていただろう。


「ああくそくそくそ!」


 どのみち逃げていただろう。

 だが、俺も逃がすつもりはない。

 こいつらの体重が何十トンで、その内のどれだけが食えるのかわからないが、ちまちま獲るよりは効率がいいのだろう。

 そして、逃げられると運ぶ距離が増える。

 それは良くない。


「待てこの!」


 ダッシュしてジャンプした。

 空中で体のバランスが一気に修正されて、やや左に傾いていた体が地面と水平になる。

 そして、ダッシュによって加速したままの速度で森の中を駆けていた。

 空中で足元をガードし、つまりはガードジャンプする。

 一歩一歩、まるで飛び石のように盾を出して空中を進んでいく。

 流石にガードをしながらダッシュはできないようで、一枚一枚出しては消してのシールドを踏んでいくも、どんどん遅くなっていく気がする。

 その上、動きは恐竜たちも巨大なりに歩幅が大きく、このままではおいていかれてしまう。

 これはまずい、とりあえず地に足を付けなくてはなるまい。

 なんというか……本当に文化的とは程遠い行き当たりばったり過ぎる狩猟だった。

 逃げる獲物を走って追いかけるとか、野生動物でももう少し頭のいい奴がいそうなものだが。


「だっ、だっ、だっ、だっ、だ!」


 階段を下りるように、足に負担がかからないように、段階的にシールドを出して降下していく。

 そして、最後には着地して再度のダッシュである。

 しかし、相手は走っている巨体。

 なまじ図体がでかい俺は、足を曲げるときとかに巻き込まれて潰される恐れもある。

 何より、逃げている恐竜の胴体の上でダッシュを解除すると、多分体制を整えることもままなるまい。

 であれば……少しは頭を使う。


「おおっりゃあ!」


 まずダッシュで追い抜く。

 なんのかんの言って、こちらには気づいていない。

 単に大きな音で、仲間の死でパニックを起こしているだけだ。

 ドタバタと緩慢な動きで逃げるブラキオサウルス的な恐竜は、俺がまたの下を通っても何の反応もしない。

 一方で大きく振られている尻尾は、木にぶつかるたびに大きくへこませていた。なんというか、こう、当たったらそのまま死にそうな威力だった。

 軽く振り向いて確認して、後悔する。


「せえの!」


 巨大な恐竜、その体よりも高い巨木を垂直に駆け上る。

 幸い針葉樹林の木はとてもまっすぐで、いっそ岩の壁よりも登りやすかった。

 逃げてくる恐竜が、こちらに向かっていることを確認する。

 その上で、ダッシュからシールドジャンプし、空中でチャージを行った。

 幸い、この尻尾も首も長い恐竜は、首を左右に大きく振って走っていた。

 長い首のどこかが、こちらにぶつかってくればいい。

 斧を大きく振りかぶった俺は、いつものように獲物へ片手斧を振り下ろしていた。


「死ね!」



 危うく、突っ込んできた胴体にひき殺されるところだった。

 なんというか、よく考えたら首を落さなくても、胴体を狙って背骨を両断すればよかったのではないだろうか。

 その内死んだのではないだろうか。

 とまあ、その辺りはおいおい考えるとして。

 とりあえず二頭分の肉は確保できていた。

 問題は、死肉を漁る肉食獣から、このクソ重い肉を守りつつ巨人族の所へ持ち帰るだけである。或いは、調理場に持ち帰るだけである。

 言うまでも無いが、例え切り落とした首一つでも運ぶのは重労働である。

 ましてや胴体部分は言うまでもない。こんなもん、例え地球人類の叡智でも相当の能力を要するだろう。

 アレだろうか、ワープ機能でもあるのだろうか?


「あらあら、流石はダイ族の王ね」


 と、背後から艶のある声が聞こえてきた。

 なんというか、声を聴くだけでびびってしまう。


「ば、バラ女王。どうした、マリーと一緒じゃないのか?」

「ええ、ご一緒させていただきました」


 と、ミミ族の格好をしたマリーもいる。

 なんというか、待っているというのは嘘なのか?

 いや、恐竜の群れが逃げ出す音が聞こえたから、ここに来たのかもしれないけども。


「それにしても、これがサンダードラゴン……なんという巨体でしょうか……」


 マリーは息絶えている二頭の恐竜を前に絶句していた。

 なんというか、確かに常識を超える巨大さであろう。

 これなら確かに、数頭いるだけで巨人族を数日養えそうである。


「懐かしいわねぇ……それじゃあ運ぶから下がってちょうだい」


 からん、と腰につけていた、火のついていないカンテラを構える。

 赤銅色のカンテラから、やはり赤銅色の炎が燃え上がっていた。

 これはつまり……そういうことなのか?


「ああ、妖艶にして美しきバラ女王がもつ幻灯アハトは、その炎で燃やした物を夢の世界へ呑み込んだと言います……!」

「あら、嬉しいわ、逸話が残っているのね?」


 なんというか、特殊な機能がある武器で、それによって運搬するということなのだろうか。


「では、呑み込みなさい、ライフイーター」


 カンテラの蓋が一瞬開き、その中から全くまぶしくない、色のついた炎が燃え上がっていた。

 そしてそれが収まったときには……その場に有ったはずの巨大な恐竜の死体は残っていなかった。

 燃やしつくされた、にしては周囲には灰さえも残っていない。つまり、カンテラが呑み込んだという事か?


「シルファーが作ったこのカンテラは、固有機能で燃やした物を保管し、好きな時に出せるのですよ」

「それがあれば、色々はかどるんだが……」

「そう安易に使うことはできないのですよ……なにせ……私弱いですから。出すときも固有機能を使わないといけませんし?」


 ああ、なるほど。

 運搬には問題ないけど、出すとき入れるときに隙ができると。


「それに……人間が相手の戦争で、このカンテラを使いたくないですから」


 そう言って、バラ女王は愛し気にカンテラを撫でていた。

 おそらく、しばらく待って固有機能のクールタイムを終わらせて、今度はもう一つの死体を燃やすのだろう。

 なんというか、少々手間だが、なるほど便利な道具だった。


「……じゃあなんでわざわざこの森の中にテントなんて建てたんだ?」

「あら、招待状替わりは必要でしょう?」

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