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家族と、ついでに友人関係

「へへ、お久しぶりっす」

「納品に来たぞ~~」


「おお、悪いな」


 ユビワ王国に住まうシャケとアレックスが、どっさりとした量の鉈や包丁を持ってタロス王の屋敷に訪れていた。都度二人が思うのは、やはりタロス王の屋敷は魔王領の中では随一の大きさだということだろう。

 少なくとも、ユビワ王国にここまで大きい屋敷は無いわけで。

 やはり羨望を隠せないところである。


「おう、二人ともよく来たな。こんな重いもん担いで大変だっただろう。ゆっくりしていくと良い」


 温かく迎えたタロスは、二人が背負っていた多くの荷物をとりあえず降ろさせた。

 鬼人族と人間が運んできた多くの鉈は、とりあえずアンドラの部下が小分けにして屋敷の中に運んでいく。後日、これまでと同様に各地へ配られていくのだろう。

 そして、それと入れ替わるようにユリの部下がずらりと現れて来た。

 手にはどっさりと、体を洗うようのスポンジなどを持っている。

 それを見て、アレックスもシャケも互いに口がにやけるのを隠せなかった。


「それにしても、遠いのに悪かったな。こっちも色々とあってな」


「いやあ、タロス王にそんなことさせちゃあ申し訳ねえってもんですよ!」

「ああ、全くだ。正直毎日通いたいぐらいだしな!」


「お前ら……俺の屋敷を風呂屋だと思ってないか? まあいい、まずは体を洗ってくれ」


 まともに体を洗うこともできない旅の生活をしてきた二人である。

 その体が汚れているのはある意味当たり前だった。

 なので、それを綺麗にしてもらうのも当たり前。

 そういう雑事をメイドがするのも当たり前。

 メイドが夢魔族しかいないので夢魔族のムチムチなお姉さんたちが体を洗ってくれるのも当たり前だった。

 そんなお姉さんたちに裸にしてもらって、綺麗にしてもらう時に鼻の下が伸びるのも当たり前だった。


「いやあ、タロス王ほんと感謝っす……!」

「お前毎日これなんだろう? いいよなあ、ずるいよなあ」


「いかがわしいお店を経営している風に言うな」


 タロス王としては、ある意味失礼なことを頼んでいるという認識もある。

 なにせ『遠路はるばるよく来たね、さあ風呂に入れ』だもの。

 流石に目上の魔王や他の氏族の王には、そんな失礼なことはしていない。

 そもそもの動機が自分の屋敷を汚してほしくないという物だからだ。

 なのでオカカ王がこの屋敷を訪れた時は自分の館が汚れているところを涙を呑んで堪えたという。

 よって、あっさりと体を洗ってくれる二人には感謝さえしているのだが、その二人が何とも幸せそうにしていると複雑な気分である。

 メイドたちも幸せそうなところがたちが悪い。

 まあ、こんな熟れた体をもてあましている彼女達に、手を出していない自分が悪いのかもしれないが。


「とにかく、色々話したいこともあるから上がってくれよ」


 とはいえ、喜んでくれるならこんなありがたい話は無いだろう。

 どちらも友人であり、無下に扱うつもりなどさらさらないのだ。



「デカ?!」


 生まれて一年も経っていないヨチヨチ歩きの子供を見て、アレックスはとんでもなく驚いていた。

 ひと汗流して屋敷の中に入った二人の前にタロスの妻と子が現れたのだが、どう考えても縮尺がおかしい。


「よく入ってたな……」


 アレックスから見れば、マリーの弟と言った方が信じられる大きさだった。

 数カ月前まで、子供が彼女の中に納まっていたとは信じられないところである。

 改めて、異類婚姻の大変さを思い知っていた。本当に、相当『身重』だったに違いない。


「いいや、最初はもうちょっと小さかったんだぞ」

「本当に、みるみる大きくなって……」


「やっぱダイ族の子はデカいっすねえ。ツノ族よりデカいっすよ」


 その一方で、鬼人族のシャケは余り驚かなかった。

 何せ自分も巨人族の次にデカい氏族の生まれである、これぐらいだろうなと概ねの察しは付いていたのだ。


「う」


 人見知りをしているのか、母親に陰に隠れているデイダラ。

 しかし、デカくて既に腰の位置に両手が回っている。


「相変わらず幸せそうで妬ましいな……俺にもいい話とかないかなぁ……」

「まあ俺もそういうのが欲しいところで……」


「ああ、それなんだがどうにかなるかもな」


「「え?」」


 今回タロス王は魔王からの緊急の依頼をこなしていた。

 もちろん元をただすと魔王に借りを作って赴いていたのだが、今回の一件は魔王の道具が原因である。

 よって、多少の報酬は期待できるところだった。

 とはいえ、夢魔族の女を都合するとなると、その負担はバラ女王に向かうことになるのだが。

 その辺り、魔王はどう夢魔族に配慮しているのだろうか。


「アレックスにはちょっと話したが、人間の国に赴いてな。まあその時に魔王様の作った道具を悪用した奴が出た。その穴埋めで一戦交えてな、もしかしたら何か褒美やらもらえるかもしれん。とはいえそこまで当てにされても困るがな」


「じゃあ遂に俺の家にもヨル族のメイドがどっさりと……」


「厚かましいぞお前……そこはせめて嫁さんと言え」


 なんでどっさりともらえることを前提に話を進めるのかわからない。

 そもそも、だったらいいねぐらいの話なのだが。


「いやまあ、タロス王には色々申し訳ねえと思ってますぜ……げへへへ」


「お前もお前だな、シャケ」


 類は友を呼ぶと言うが、まさか自分も世間から見ればこうなのだろうか。

 数少ない同性の友人を前にして、タロス王は自分の友人関係を情けなく思っていた。

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