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敵の姫様が綺麗だったので、略奪婚してしまった巨人の俺  作者: 明石六郎
第二章 結婚式と言う名のお披露目
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チュートリアルと、ついでに古い王の昔話

 非常に今更だが、魔人に分類される種族は寿命が非常に長い。

 この大陸に十の知的生命体が降り立ってから二千年ばかり経っているらしいが、未だに一度も代替わりをしていない。

 王族は存在するが、当代の王もまだ当分は現役だ。おそらく俺が生きている間は健在だろう。

 ちなみに巨人族を含めた野人は人間と大体同じで、六十年ぐらいが寿命とされており、半人たちはそれよりも少しばかり寿命が短い。

 まあ、このご時世で天寿を全うするのは一種天文学的な確率なので、寿命と言うか成人するまでの時間と考えるのが妥当だろう。

 魔人は幼少期も長く、俺と同い年でもまだハイハイしているそうだ。

 とはいえ、魔人を含めた他の氏族の赤ん坊など、一々見たことはない。

 日本でも、外国人の赤ん坊を見たことがない奴が多いのと変わらない。

 俺が特別なのではなく、これはある意味当然のことだ。

 例外と言えば、半鳥族ぐらいなものだろう。アイツらは郵便配達の都合上、よく赤ん坊とかを見に行くし。


「この屋敷はいかがですか、タロス王」

「ええっと……とても文化的でいい感じだと思ってる」

「それは良かった」


 巨人族仕様のサイズのテーブルで、梯子付きの椅子に座っている両魔人の王。

 もちろん俺も普通に椅子に座っているし、マリーもその脇に座っている。

 なお、アンドラは俺の背後で片膝を付いて、ユリさんは正座に近い姿勢で控えていた。

 なんかものすごく面接っぽいぞ、コレ。

 相変わらず、目ぐらいしか見えない服装をしている、森魔族の王。名前は確か……ラッパだったか。楽しそうな名前とちがって、滅茶苦茶生真面目な御仁である。


「では、我が配下アンドラの働きぶりは如何か」

「よく働いてもらっている。狩猟といい各所への連絡といい、実に手際がいい」

「なるほど、報告の通りだ。やはりタロス王はダイ族とは思えぬほどに聡明なようだ」


 何だろうか、俺は今まで一般的な巨人族扱いだったのだろうか。

 いや、風貌を多少身ぎれいにしていただけで、基本蛮族だったからな。

 戦場で目についた娘さんをさらったりしていたし。


「では、私のひ孫の……」

「バラ」

「あらいいじゃないの、別に本当の事なんですもの」

「王には節度が求められるのだ」

「アンドラちゃんも貴方の……」

「バラ」

「もう、仕方ないわね。分かったわよ」


 え、こいつら王族なの?! 王の子孫なの?!

 まあ、それを言ったら俺だって昔王をやっていた男の子供だし、現役の王だからかしこまる必要は全くないけども。

 それに、王族って言っても長命な分子供も多そうだしな……。


 さて、なんとも緩い性格の割に、何とも肉感的な体の割に、清楚な服装をしている夢魔族、ヨル族の女王バラ。女王なのにバラとはこれ如何に、というかそれは風評被害であろう。

 薔薇の女王と書けば何とも彼女にぴったりである。

 ユリさんを知った後でも、いや知った後だからこそその魅惑の差にびっくりする。

 やはり王だけあって、格が違うようだ。年の功だとは言わないのが人生の智慧である。


「ではタロス王、ユリはどうしているかしら?」

「家の事を任せている、こちらも、その、夜のことも世話になった」

「あら、それはよかったわ。ユリ、可愛がってもらいなさいね?」

「はい、バラ女王」

玄孫やしゃごの顔を楽しみしているわね、タロス王」


 ぶっちゃけ、その前にマリーとの子を楽しみにしてほしいのだが……。

 そういうところで順番を間違えないで欲しいところである。

 というか、その場合夢魔族の女王が姑的な扱いになるのだが……。


「バラ、タロス王のことを気にかけるべきだ」

「あらごめんなさいね……でもアトラスの子孫とは思えないわ。アイツってウーサーとも張り合ってたもの」

「その辺りの恥をさらすな。彼らにとっては偉大な王なのだぞ」


 すみません、俺初代の王の名前知りませんでした。それどころか魔王の名前も忘れてました。

 魔王魔王呼んでると、役職が固有名詞になっちゃうよね。


「まあそう咎めるな、ラッパ王。して、どのような要件だ? 古参の王が二人そろってとは穏やかではないが」

「違いない、では要件だが。魔王シルファーより大斧ズィーベンを起動してもらったと聞いた」

「ああ、大分切れ味が良くなった」


 流石に刃からビームが出るということはないのだが、それでも大分切れ味が増していた。

 試しに熊の頭をカチ割ろうとしたところ、すっぱりと胸のあたりまで斬っていた。なんというか、大分非常識な切れ味だった。

 ごとり、と置いた斧を見て二人は納得してくれたらしい。


「ふむ」

「まあ……」


 なんというか、呆れている二人。

 そうだよね、まずそもそも魔剣を人間の娘にあげちゃったのが間違いだよね。

 魔剣が無ければ、伝説の武器もただの朽ちない武器だもんな……。


「ラッパ王、バラ女王。お二人はこの地を切り開いた十人の王の内の一人ですよね? やはり静鎖ツヴァイと幻灯アハトをお持ちなのですか?」

「その通りだ。我が手には魔王シルファーより送られた静鎖ツヴァイがある」

「幻灯アハトを私は持っているわよ」


 目を輝かせているマリーに応じるように、二人の王は頷いてそれをテーブルの上に置いた。

 ラッパ王は茶色の鎖を。バラ女王は赤銅色のカンテラを。機能は分からないが、それぞれが穏やかな光を纏っていた。


「魔王シルファーの作成した十の武器は、いずれもその種族用に作成されたもの。他の種族には真価を引き出すことはできない」


 淡々と説明していくラッパ王。

 やはりとても事務的で、いつも通りの頼もしさだった。

 こういう回り道をしない人がいると話が早くいていい。

 流石は仕事ができる森魔族の王だ、早い早い。


「そして、魔剣アインで起動させても、再びアインで停止させるか、使用者が死ぬか、その手元から離れれば休眠する。そうなればただの頑丈な武器となる」

「だから、本当に久しぶりなのよね、その斧が起きているのが」


 いくらカミ族にしか使えないからって、人間の娘にあげちゃうとかないよな……。魔王様、本当に馬鹿だ。


「シルファーって、あのリストって子には本当に甘かったのよね~~。最近機嫌がいいのも嫁いだ娘が実家に帰ってきたようなものらしいし」

「遺憾だ。示しがつかない」


 二人の王も呆れている。マリーも困っている。俺だって長命種の長話に耐えられない。

 なんというか予備知識がないので、その辺りのぶっちゃけ話をされても困るのだ。


「だが、タロス王もこれにてその斧の真価を引き出せるようになったのだ。その使用法を教えよう」

「使用方法? この斧は只の斧ではないと?」

「やはり魔王シルファーは教えていなかったようだ」


 なんの期待もしていなかったらしいラッパ。一種の悲哀が感じられる。

 その気持ちはよくわかる、上司が勝手だと困るよね。

 悠久の時を越えてそいつの尻ぬぐいしてたんだもんね……。


「ということで、私達が来たのはそれを教えるためだ。今後は残る四つの氏族も何れ遠からず与えられた武器を起こすかもしれないのでな」

「と言うことは、残る伝説の武器も各々の氏族が持っているのですか?」

「ええ、そうよ。どの部族も王権を示す神器として祀っているわ」


 つまり、普段から王様がぶんぶん振り回している巨人族がおかしいと。

 知ってた。

 でも、俺も便利だし文明的だし、結構好き勝手に使ってたもんな……。

 斧が好きと言うのではなく、木をざっくり削った棍棒を使いたくなかっただけなのだ……。


「それはありがたいが……時間がかかるなら流石に断るぞ。このまま長く領地を空にしていれば、その内口減らしでも起きかねん」


 何を前時代的なことを、と思うかもしれない。

 しかし、生憎と巨人族は原始時代に生きているので、普通に口減らしをする。

 地力で動けない老人は、まあギリギリ許容できなくもないが、そもそも巨人族にそんな老人はいない。俺の知る限り、大抵病気かなんかで『天寿』を全うしている。

 だが、子供は別だ。もうすぐ働き手に成れる年齢なら労働力として生かすが、そうではない場合山に捨てられるだろう。

 仕方がないのだ、別に特定の誰かが悪と言うわけではない。

 そもそも、そこまで追い詰められた段階で、村にいても食べるものなどないのだ。

 いっそ全員で死ぬ、というのもアリだとは思うが、全員死ぬよりはマシと思うことも当然だろう。

 少なくとも、哀しい事ではあるが止められることではない。

 第一、それをした奴を罰したとして、食料はどうするのか。

 分け与えるだけの食料があるのなら、最初からそうしていろと言う話だし。

 時折悪役にされている孤児院だが、今にして思えば存在そのものが良心的である。巨人族にそんな良心は無いのだ。


「本当にお優しいのね、タロス王は。アトラスなら獲物を取れずに死ぬようなダイ族など死んで当然だ、とか言ってたわよ? 他所から略奪することを良しとはしなかったのだけどね」

「昔の話だ、バラ。それよりも始めるとしようか」


 なんというか、わくわくしてくる話だった。

 こう、新アイテムをゲットしたことによる、わくわく感的なものがある。


「では、表に出てください。これより指導を行いますので」

「『十人の王』の方から伝説の武器の真価を教えていただけるなんて……タロス王! 凄いですね!」


 なんというか、マリーが凄く楽しそうだった。

 こういう目を輝かせている姿は、本当に魅力的だ。

 そんな笑顔のために、俺は頑張りたい。


「ああ、そうだな……マリー、見ていてくれ。君の夫がもっと強くなるところを」

「はい!」

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