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死亡ルートを回避せよ!  作者: 水無月 静琉
準備期間です。
9/40

9.差し入れをしましょう

――コンコンコンッ。

私は城にある宰相の執務室の扉をノックした。


「ヴィクトリア様っ!?」


父の従者であるアスターが扉を開け、私がいることに驚いていた。

アスターは黒髪をぴしっと撫でつけた精悍な男性だ。

確か父と同じ年のはずだが、父が若く見えるため、アスターの方が少し年上に見えるんだ。


「アスター。お父様はいますかー?」

「ええ、いらっしゃいますよ。どうぞお入り下さい」


アスターは小さな私にもしっかりと丁寧な対応をしてくれる。

優しいうえに真面目で、見目だって良い方だと思うのに未だに独身。

結婚願望はあるようだが、モテないと嘆いていたのを聞いた事がある。

結構タイプなんだが、今の私にはちょっと年の差がな~。

残念だ。


「お父様ー」

「リアっ!?」


執務室へと入って父に声を掛けると、父が驚いて手に持っていた書類を落とした。

予告無しで来たのだけど、そこまで驚く事か?

城に来るまでは家の馬車に乗って来たし、城の入り口からここまでは案内がいたから迷う事もなく、ここまで普通に来られたけど?


「どうしたんだい? 寂しかったのかい?」


父は直ぐに私のところまで来ると、私を抱き上げた。

頬ずりのおまけ付き。

父は相変わらずだ。


「あのねー。お父様のためにジュースを持ってきたのー」


私は肩から提げた白いポシェットから、瓶に入ったジュースを取り出しました。

実はこのポシェット、中が拡張された魔法の鞄なんです!

しかも中に入れたもの品質が維持できるという優れものなんです!


魔法の鞄は精霊の中でも、稀少と言われる時の精霊さんが魔法を掛けた鞄なんです。

正確には時空の精霊――時間と空間を司る精霊さんですね。

ヒューリーとミリアが知り合いの時の精霊さんに頼んで作ってもらったの。

この鞄一つで、王都に邸が持てるほどの値段はするそうです。

それはポンッ、と作ってくれるなんて凄いですねぇ~。


「あのねー、これを飲むと疲れが取れるのよー」


さぁ、父よ!

私の愛が詰まった疲労回復ドリンクを受けってくれー。


「ありがとう、リア。じゃあ、頂くよ」


父はそれを受け取ると、アスターが用意してくれたカップに注ぎ、さっそく飲んでくれました。


「美味しいよ、リア………んっ!!!!?」


父の動きが不自然のまま止まった。

どうした?

試飲はしたから、不味いものじゃない事はわかっている。

父よ、その反応は何だっ!?


「ヴィクター様、どうなされましたか?」

「疲れが……」

「はい?」

「…………疲れが取れた」

「んん?」

「疲れからくる倦怠感とか、頭痛や肩こりが無くなったっ!」

「!!!?」


ああ、回復の効果に驚いていたようだ。

自分では実感できなかったのだが、ちゃんと効果があったようだ。

さすがヒューリーのお薦めの特製ドリンクだ。

それにしても………倦怠感に頭痛に肩こり?

父よ、相当疲れていたんだな……。

そこまで酷かっただなんて思いもしなかったよ。

道理で顔色が悪かったわけだ……。


「アスター、お前も飲んでみろ。リア、構わないだろ?」

「うん、いいよ!」


父がこれだけ疲れているのなら、常に同行しているアスターだって疲れているだろうしね。

ああ、それは父が飲みきって!

アスターにはこっちをあげるから。

ポシェットからドリンクをもう一本取りだして、アスターに渡した。

いや~、何本か作っておいて良かった~。


「では、失礼します……………っ!!!」


さっそくアスターも特製ドリンクを飲んでみると、普段、あまり表情を動かさないアスターが目を見開いて固まっていた。


「どうだ、アスター?」

「………体がすっきりしております」


おお!

アスターにも効いたようだ。

父の親バカ振りが発揮されて、疲れが取れたと感じただけではない事が証明された。


「リア、この飲み物はどうしたんだい?」


よくぞ、聞いてくれましたっ!


「それね! リアが作ったのー」

「「なっ!!!?」」


あれ?

父とアスターが目を見開いて固まった……。

何でぇ!?






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