36.お勉強をします
「正解です。ヴィクトリア様は本当に優秀ですね」
「……ありがとうございます」
とうとう王弟との勉強は始まってしまった。
室内には侍女が控えているとはいえ、実質は王弟と一対一。
緊張するなと言うのが無理な話である。
「算術に関しては教えることはありませんね」
今日は私の実力を知るために、歴史、地理、算術などなど……いろいろな分野から問題が出され、それに回答していった。
私の前世はとっくに成人した大人だからね~。
足し算、引き算はもちろんのこと、掛け算、割り算なんてお手のものである。
その代わり、歴史や地理は一からスタートだ。
子供らしく見せて手を抜くことも考えたが、それは私自身が無理だと判断して、ありのまま回答していった。
そもそも、精霊に関してだったり薬草や化粧品などなど、既に突き抜けたことをやらかした後だったので繕う意味がなかったしね~。
「今後は歴史と地理、国の特色などを中心にしていったほうが良さそうですね」
「お願いします」
「はい、お願いされました」
「……」
にっこりと笑う王弟は凄く眩しい。
キラキラの金髪もそうだが、何故か存在そのものが眩しいんだよ。
はぁ……さて、どうしたものか。
関わってしまった以上、ここは王子と同様に私のことを知ってもらって、陰でこそこそと嫌がらせなんてするような人物ではないとわかってもらうほうが得策かな?
となると、やはり普通に勉強を教えてもらうことにしよう。
目指せ、優等生だ!
「他にご要望はございますか?」
「要望……ですか?」
「ええ、学びたい内容ですね。まあ、植物や薬学に関しては誰よりも詳しい方がお側におりますから、それは必要ないと思いますので、それ以外でですね」
植物、薬学のエキスパートはヒューリーのことだね。
王弟はそのことまで把握しているんだね~。
「そうですね、生き物についてなど知りたいですわ」
私ってこの世界にいる動物とか全然知らないんだよね~。
まだ私は王都から出たことがないが、そのうちお出かけしてみたいと思っている。
というか、近いうちに森とかに遊びに行こうと密かに計画している。
なので、無害そうな小動物に見えるけど、実は危険な生き物……とかいたら危ないから勉強しておきたい。
まあ、ヒューリーをはじめ、精霊達は知っていると思うんだが、どうしても精霊から見た知識になるので、頼りっきりでは危ない。
だって「あれは凄く弱い生き物」とヒューリーが言ったとしても、人なら屈強な男が三人いてやっと倒せる……なんてことがあったら困るしね。
いや、絶対にある。
うん、自分のためにも勉強しておいたほうがいい!
「なるほど、生き物ですか。わかりました。次回までに資料を用意しておきましょう」
「わぁ、ありがとうございます」
「いえいえ、勉強熱心な教え子のためですからね」
「……」
嬉しくてつい笑顔になると、王弟もにっこりと微笑んでくる。
うん、凄く眩しい。
本当に、本当にもの凄ーく!
これ……私、やっていけるんだろか?
耐えるか、慣れる……慣れるものなのかな?