34.七歳になりました
突然ですが、私、ヴィクトリアは七歳になりました。
乙女ゲームっぽいものが始まると思われる年まで、あと二年と迫っています。
ここまで、自分が巻き込まれるであろうルートをできる限り潰してきた。
自国の王子達、兄達、伯爵家次男のルートは限りなく潰したと言えよう。
だが……その他のルートは、残念ながら攻略対象者と出会っていないので保留状態だ。
まあ、出会っていないのなら、私が巻き込まれる心配はないと踏んでいるのだが……如何せん、どこでどう巻き込まれるわからないんだよね~。
だが、しかし!
婚約破棄は、婚約自体をしていないので絶対にありえない!
家が没落したり国外追放となったとしても、苦労しないで生活するだけの蓄えはある。
暗殺(毒)については、あらゆる解毒剤を用意してある。
「ん~、あとはどうしたらいいかな?」
《リアちゃん、何を悩んでいるの?》
私は考え事を口に出していたらしい。
ミリアが私の独り言に反応した。
「ちょっとね。まだ起きていないことなんだけど、どう対策したらいいかな~って思って」
《あら、何が起きてもリアちゃんには私達がついているから、大丈夫よ!》
「うん、みんなには助けられているし、頼りにしているよ!」
《ふふっ、本当にリアちゃんは可愛いわね~。もっと頼ってくれてもいいわよ~》
確かに、私には過保護と言えるほどの精霊達が常にいるので、厄介事に巻き込まれたとしても力押しで抜け出すことは可能だろう。
まあ、その場合は貴族としての体裁などお構いなしになるだろうけどな~。
《リア~、おやつをくれ~》
その時、ルークがおやつを求めて部屋へ飛び込んできた。
《もう、ルークったら》
「ふふっ。クッキーでいいのなら、ここにあるやつを食べても大丈夫よ」
《やりぃ~》
ルークはテーブルにあるクッキーをパクパクと口いっぱいに頬張る。
《リア、これ美味いな!》
「本当? それは良かった。そのクッキーにはうちに遊びにくる小さな精霊さん達が、お土産に持ってきてくれた木の実をいっぱい入れてあるんだよ」
《そうなのか?》
ルークは、今度は味わうようにクッキーを食べる。
《……ああ、これは北の森に実っている木の実か? ん? こっちのは東の森にあったか?》
味わう、というよりは分析しているようだ。
植物の精霊ならわかるが、風の精霊であるルークは木の実に詳しいのが不思議でならない。
だって、精霊っていう存在は、食べ物を必要としないのだからね~。
ルークがこうやって食べ物を強請ってくるのは、ただ味が好きだという嗜好によるものだ。
あれ、そうなると小さな精霊さんも食べ物に詳しいのはおかしいよな?
お土産を持ってくる精霊さんは、いろんな属性の子達なんだから。
「ルークもそうだけど、精霊って木の実や果実に詳しいの?」
《ん? ああ、昔、人間が採って食ってるのに興味を持ったことがあったからな。だから、食えるものと食えないものの区別くらいならできるぞ。ちび共もそうやってお土産に持ってくる木の実や果実を選んでいるんだろうな》
「そうなんだ」
なるほどね、人間のやることを観察して学んだから、精霊さん達はちゃんと食べられるものをお土産に持ってきてくれるのか。
《なあ、リア。リアはこの手の木の実や果実とかを持ってくると喜ぶのか?》
「ん? そうだね、美味しいものは嬉しいよ? こうやってみんなで食べるおやつを作れるしね~」
《そうなのか。それじゃあ、俺も何か持ってくるかな~》
「ルーク、お店や人様の畑から盗ってくるのは駄目だよ?」
《そのくらいわかってらー! ちゃんと森から採ってくるよ! 人間が近づかないような森の奥に行けば木の実や果実なんて腐るほどあるんだからな!》
ちょっとだけ心配したが、泥棒とかそういう心配はしなくても大丈夫そうだな。
というか、精霊さん達がいたらお金がない状態で没落したとしても食うには困らなさそうじゃないか?
最悪、森でスローライフというものありかもしれないな~。