27.読まれている?
「えっと……お父様、お兄様~大丈夫?」
風の精霊さん――ルークが現れてから静かに状況を見守っていた父や兄達に声を掛けた。
「「リア……」」
「リア……君って子は……」
家族全員に溜め息を吐かれた。
……何故に?
「リア、自分が凄いことをしたって、ちゃんとわかっているかい?」
「ん? えっと……精霊と契約できることが滅多にないのは知ってるよー?」
「そうじゃなくてね」
「ん?」
「三人目の上級精霊との契約を果たしたのだよ」
父が私に言い聞かせるように言ってくる。
確かに、私はまた上級の精霊と契約をしたが、今回はヒューリーが勧誘した結果だよ?
私が何かして、契約を取り付けたわけじゃないしねぇ~。
何と言われても、これは私の功績ではない。
「精霊と契約している人は、複数の精霊と契約しやすいのかもね。今回みたいに契約精霊が別の精霊を勧誘することもあるみたいだしね?」
「いやいやいや。今までそんな事例はないんだよ?」
「そうなの?」
「そうだよ。精霊と契約した者の記録は数多く残っているが、それには複数の精霊と契約した者の記録はないんだよ」
へぇ~、精霊の契約者の記録っていうのがあるんだ~。
で、精霊と複数契約した人っていないんだ~。
うん、意外だな。
だって、精霊と契約した人は少なからず精霊とコミュニケーションが取れるわけなんだから、こっちの子とも契約、って話が出てもおかしくないよね?
過去に契約した人達と私とでは何か違いがあるのかな?
「ねぇ、お父様~。じゃあ、上級精霊と契約した人はどのくらいいるかわかるー?」
「上級精霊と契約した人はかなり少ないよ。確か、二人のはずだ。な、エルントス」
「ああ、二人で合っている」
「えっ!」
少なっ!
いや、記録自体がどのくらい残っているかわからないが、その中でもたった二人だなんて。
《上級の精霊は易々と契約しないからな。二人と契約した記録が残っているのなら、多いほうだと思うぞ》
「そ、そうなの?」
ということは、私がかなり特殊例ってことだね……。
ってか、易々と契約しないわりには、私の契約精霊達はあっさりと契約したような……。
《リアは特別だ》
「そ、そっか~……」
うん、てか、さっきからヒューリーが私の心の中を読み取っているかのように、言葉をくれるんだけど……。
《契約を交わしていると、相手の心情を察しやすくなるからな。それに、リアの場合はかなり表情にも出るから、何を考えているのかがわかりやすい》
ああ……、読み取っているかのようにじゃなくて、ほぼ読み取っていたようだ。
私、そんなにわかりやすい顔をしているんだろうか……。
「わかりやすいな」
「「うん、わかりやすいよ」」
父と兄達にも言われた。
ちょっとショックだ……。
私の表情筋、もう少し頑張れ!
《よぉ~、戻ったぜー》
そんな話をしていると、ルークが何事もなかったように戻ってきた。
「あ、ルーク、おかえりー」
《風の……じゃなくてルーク、どこに行ってたんだ?》
《ちょっとなー。すぐにわかるさー》
ヒューリーが行き先を訊ねたがルークは返事をぼやかし、何やらにやにやと企んでいるかのような表情をしていた。
《変なことにリアを巻き込むなよ》
《大丈夫、大丈夫!》
すると、ノック音とともに近衛騎士の制服を着た青年が部屋に入ってきた。
「失礼します」
誰だろうね、この人。