20.お礼は大切です
父は騎士さん達と犯人を連れて城に帰ることとなった。
本来なら、私も一緒に城へ行って事情聴取ということになるのだが、疲れているだろうからと家に帰ることになった。
《あ、じゃあリアちゃんは私が預かるわ~》
ミリアは両手を広げた。
ちょうだい、とばかりに……。
私はものじゃないんだが……まあ、いいか。
しかし、ミリアの腕に渡る前に、父の腕からひょいと体が持ち上がられた。
あれ~?
今の流れだとミリアに抱きかかえられるものだと思っていたが、横からヒューリーが私を奪取。
私はヒューリーの腕の中にいた。
《ちょっと~。リアちゃんの独り占めはダメよ~》
《やだ》
《もぉ~。仕方がない子ねぇ~》
ヒューリーは絶対に私をミリアに渡そうとしなかった。
ここはミリアが大人な対応をして、ヒューリーに譲るようだ。
ごめんね、ミリア。
お家に帰ったら、一緒にお菓子でも作ろ……うか……?
「そうだ! 風の精霊さん、クッキーはお好きですか?」
《くっきー? 何だそれは》
「サクサクした甘い食べ物です」
お家でお菓子を作ると、強請りに来る精霊さんもいたりするくらいなので、精霊さんは意外とお菓子が好きなんだと思う。
だから、お礼といってはなんですが、風の精霊さんにささやかながらクッキーを贈呈しようと思うのです!
《ぼくもー》
《たべるー》
《ちょーだい》
《わたしもー》
《くっきー》
おお?
何故か、下級と中級の精霊さんがいっぱい集まってきました。
小さな女の子と男の子、小鳥、マリモっぽい子。
いろんな姿をしていますが、全部、風の精霊さんですね。
《この邸に近づけないって、俺に教えてきた奴らだな》
「そうなんですか?」
おぉ!
それならこの子達も私の恩人ですね。
「はい、どーぞ」
《《《《《 !!! 》》》》》
今の私の手のひらサイズのクッキーを一枚ずつ、小さな精霊さん達に渡していきました。
ミリアと一緒に最近作った新作のハーブクッキーです。
小さなこの子達ですので、一枚でも両手に抱えるくらいの大きさです。
精霊さん達は嬉しそうにクッキーを食べ始めました。
「美味しい?」
《《《《《 おいしー 》》》》》
どうやらお口に合ったようです。
まあ、ミリアの太鼓判があったので問題ないとは思っていましたが、精霊の種類によって味覚が違うかもしれないでしょ?
でも、大丈夫のようでよかったです。
カリカリと大きいクッキーを小さな口で食べている姿はとっても可愛い!
あ、助けてくれた上級の風の精霊さんがちらちらと見ています。
クッキーが気になるんですよね?
「いかがですか?」
私は改めて、ハンカチのような布で包んであるクッキーを風の精霊さんに差し出しました。
《ふうん。まあ、貰ってやってもいいぜ》
台詞は悪態をつくような感じですが、目だけはやはりクッキーをちらちら見ています。
この風の精霊さんはもしかしてツンデレさんですかね?
「はい、貰ってください」
私はニッコリ微笑みながら、クッキーを手渡しました。
《っ!!》
「あれ?」
風の精霊さんはクッキーを受けると、忽然と姿を消してしまいました。
《あ、逃げた》
《照れたのね~。恥ずかしがり屋さんなんだから~》
わぁーお。
恥ずかしくなって逃げちゃったんですかー?
やっぱりあの風の精霊さんはツンデレさんですね~。