18.あ、これ犯人だ
「ヒュ、ヒューリー殿~。私にも、私にもリアの無事を確認させてくれ~」
あ、父もいたんだね。
ごめんね、今まで気づいていなかった。
「お父様ー。心配掛けてごめんなさい。助けに来てくれてありがとう」
「リアー! 無事で本当に良かったよー」
私はヒューリーの腕から父の腕へと渡り、父にぎゅっと抱きついた。
父も私をぎゅっ。
うぐっ!
ち、父よ、ちょっとばかし力が強いよ!
しかし、これが心配を掛けた償いとならば、私は堪えてみせるよ!
《リアちゃん、無事~?》
「あ、ミリアー。無事だよ」
《良かったわ~。怪我もないみたいね~》
「うん。心配かけてごめんね」
《いいのよ~》
父にぎゅうぎゅうと抱きしめられていると、今までいなかったミリアが現れた。
そして私の無事を確認すると、父の腕の中にいる私の頭を撫でていた。
ミリアにも心配かけちゃったね。
でもね、ミリア……。
「ミリアー。それは誰ー?」
……なんか、拘束した知らない男を引き連れているんだよね。
しかも口元から足首まで、緑の蔦でぐるぐると巻かれている……。
《こいつ? こいつはね~、これを持っていたのよ~》
「あっ!」
ミリアが見せてくれたのは私の白のポシェットだった。
誘拐された時に私が身につけていたもの。
《リアちゃんの鞄を持っているなんて怪しいでしょう? だから捕まえてきたのよ~》
あ、よくよく見ると城で声をかけてきた男だ!
「お父様、お父様ー。その人、城でリアに声をかけてきた人。もう一人男の人と一緒にいて、首にビリッってされたー」
「何だとっ!? こいつか、リアを攫ったのはっ!!」
父が目をくわっと見開いて、ぐるぐる巻きの男を見た。
おう……。
父よ、凄い形相をしているぞ……。
しかも、心なしか……気温が下がっていないか?
そうか……氷の宰相の由来ってこれか……?
父のデレ具合を知らなかったら、怖いかもしれない……。
《あら~? じゃあ私、お手柄かしら~。それにしても莫迦よね~。リアちゃんの持ちものも目当てだったのね~。だけどリアちゃんの鞄はリアちゃんしか使えないのにね~》
私の鞄の中身か……確かに、高価なものがごろごろ。
いろんなものが入り過ぎてすっごいことになっているしね。
貴族邸の金庫や宝物庫くらいの価値があるのに、持ち主は子供では金庫や宝物庫より盗みやすそうだもんね。
しかし実際は、金庫や宝物庫のお宝を手に入れるより難解だったりするのだ。
だって、私の所有する魔法の鞄は使用者制限がかけられているんだもん。
対象者は私とヒューリーとミリアだけ。
それ以外は人間だろうが、精霊だろうが鞄に手を入れても何も取り出せないのだ。
父や三人の兄達でさえ、私の鞄からものを取り出すことができないのだ。
《それじゃー、リアちゃんのお父様。こいつよろしくねぇ~》
ミリアは犯人を父の足下に投げ捨てた。
今、ゴトンって結構大きな音が聞こえたんだけど……頭打ってないよね?
死んでないよね?
私が犯人のことをじっと見ていたら、父が思いっきりに犯人を踏みつけた。
「うぐっ」と声にならない悲鳴が聞こえたから、生きてるね。
それなら、よし!
安心したところで、邸の中から騎士が出てきた。
あ、見張り役の男が捕まっている。
どうやら騎士達は中にいた犯人を捕まえていたらしい。
「宰相様。屋敷内にいた者は全て捕獲しましたっ! しかし、手下と思われる者ばかりで、主犯と思われる者はいませんでした」
「うむ。誘拐実行犯、二人のうちの一人はこいつだ。コイツを締め上げてもう一人の実行犯と、他に繋がっている者がいないが吐かせるぞっ!」
「はっ!」
「それで、精霊除けはあったか?」
「はい、こちらに」
おお!
父がきちんと仕事をしているところは初めて見た。
ちゃんと上司っぽい態度だ。
私の前では八割方デレている父だが、こうしているとやっぱり格好いいなぁ~。
…………ん?
ところで父、今、精霊除けって言った?
何それー?