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死亡ルートを回避せよ!  作者: 水無月 静琉
準備期間です。
17/40

17.女は度胸です

《リア、飛び降りろっ! 後ろに向かって飛んで!》


おお?

今のはヒューリーの声だ。

え、今、ここから飛べって言いましたか?

空耳じゃないですよね?

ここは二階なんですが……。

むむ。

だけど、ヒューリーが飛べと言うんだから、きっと大丈夫なのだろう。

うし、女は度胸だっ!


「それっ!」


私は思いっきり壁を蹴って、後方へと飛んだ。

ガクンッと体が落ちるが、落下する感覚は一瞬だけだった。

すぐにふわりっとした温かいものに包まれて、体はゆっくりと下降していく。


《リアッ!》


ヒューリーだ!

気付けば、大きくなったヒューリーの腕の中にいました。

無事に下へと下りられたようだ。

よかった~。

私はほっとして、そのままヒューリーにもたれかかった。

すると、近くから笑い声が聞こえてきた。


《はははっ~。何、この子っ! 飛んだよ! 躊躇いなく飛んだよっ!》


あれ?

この方は精霊さんですね。

緑色の髪と瞳の中学生くらい男の子が、宙に浮きながら笑っていました。

ヒューリーの髪や瞳の色よりは薄い緑。

緑の精霊さんではなく、風の精霊さんかな?


《ねぇ、君。なんで飛んだのさ》


風の精霊さん(仮)が私に話しかけてきました。

え、飛び降りた理由ですか?

そんなの決まってるじゃない。


「ヒューが飛べって言ったから」

《ヒュー?》

《僕のことだよ》

《え、じゃあ緑のが飛べって言ったから飛んだのか? マジで? それだけで飛ぶかっ!?》

「ヒューはリアに危ないことはさせないもの。あの状況で飛べって言うなら、その後は絶対に助けてくれるもん」


普段からヒューリーは私の行動を止める側の人間(精霊)である。

危ないから触っちゃダメ、そっちに行っちゃダメ、って。

些細なことでも危険と判断すると止めるヒューリーが、飛べと言うなら危険はないという事だ。


《……。随分と信じているんだな。精霊は気まぐれな者が多いんだぞ?》

「そうなの?」

《ああ。俺の気が変わって、助けなかったどうするのさ》


あ、さっき落下した時にゆっくりと降下したのは、この風の精霊さんの力だったのか。

大変、それはお礼をしないと!


「遅くなりましたが、助けて頂いてありがとうございました」

《いや、だから……》

「ん? ヒュー、こちらの風の精霊さんが落ちるリアを受け止めてくれたんだよね?」

《そうだよ。こいつが力を貸してくれたんだよ》


うん、合ってたね。


「あ、ヒューも助けに来てくれてありがとうっ!」


ヒューリーにもお礼を言ってませんでしたね。


「あとね。心配掛けてごめんね」


絶対に心配させたよね。

突然いなくなったし、疎通が出来なくなったのはヒューリーも気付いていたよね。


《うん。リアが無事で良かった》

「うん!」


ヒューリーは優しく微笑んで、またぎゅっと抱きしてくれました。

私もぎゅっと抱き返しておきましょう。


《なんなんだよ……》

《ん? 素直で可愛いだろ?》

《お前、性格が変わってんぞっ!》

《そう?》

《そもそも、俺が受け止めるつもりがなかったらどうすんだよ!》

《ん? その時は多少の衝撃はあるかもしれないが、リアの下に蔦を巡らせて受け止める気でいたよ?》

《お前、そんなこと企んでいたのかよっ! 信用してないじゃないかっ! 前言撤回する。お前は昔と変わらんっ!》


この風の精霊さんとヒューリーは、実は仲良しさん?

なんか、気の許した親友って感じがするぅ~。






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