16.リアがいない!(ヒューリー)
リアの気配が途切れたっ!?
今日、リアは父殿に会うために城へと来ていた。
僕は城に無事に着いたのを確認してから、城にいる昔なじみの精霊に会いに行くためにリアの側を離れた。
その僅かな時間。
その間にリアの気配が断たれた。
僕は慌てて、リアが向かったはずの父殿の執務室へと向かった。
《父殿っ!! リアは? リアは何処っ!?》
「ヒューリー殿? リアは来てませんが……リアがいないのですかっ!?」
《城に入るまでは一緒にいたが、少し離れた隙に気配が感じられなくなった》
「な、何ですってっ!?」
そんな……リアがここにいない……?
「ヒューリー殿、リアは、リアとはどこで別れたのですか!?」
《……馬車付き場で馬車から降りて、入り口を入ったところだ》
「アスター! すぐに入り口に向かって、そこからここまでの通路でリアを見掛けていないか確認してこいっ!」
「は、はいっ!」
必死にリアの気配を探すが、一向にリアの気配が見つからない。
リア、何処だ……。
《どうしたー?》
気配がないとわかっていても、それでもリアの気配を探していると、さっき会いに行った風の精霊が現れた。
会っている時に僕が慌てて飛び出したので、心配して付いてきたようだ。
《僕の契約者の気配が途絶えた……》
《死んだのかー?》
《っ!! 死んでないっ! 気配が途絶えただけで契約は切れていないっ!》
悪気はないんだ。
こいつはこういう奴なんだとわかっているが、僕の声に力が入る。
《悪い悪い。怒るなよー。じゃあ、あそこにいるんじゃないかー?》
《……あそこ? 何処のことだ?》
《ほら、ちび共が近づけない邸があるって言っていたから、そこじゃないのか?》
精霊が近づけない邸?
何だ、それは……。
「精霊除け……」
父殿がぽつりと呟いた。
精霊除け……そんなものがあるのか……。
精霊が近づけないということは、そこに僕の力が届かないということだ。
じゃあ、リアはそこにいる可能性が高い!
《何処だそこはっ!》
《案内するかー?》
《頼む》
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
すぐにでもリアの処へ行こうとしたら、父殿に止められた。
そして、騎士を用意するから一緒に連れていってくれ、と。
騎士?
そんなのいらないだろう?
犯人?
そんな奴ら、僕が全部潰すに決まってるじゃないか。
え、その場にいる奴だけで全員と限らない?
全部とっ捕まえるのにはその犯人が必要?
「それにリアを怖い目に遭わせた奴らを楽に死なすなんてとんでもない。ふふふっ……。リアに手を出したことを後悔させてやる……」
実は父殿も静かにキレていたらしい。
しかも、僕以上に黒い考えがだだ漏れだった。
◇ ◇ ◇
リアっ、何してるんだっ!?
精霊除けが施されたの貴族の邸。
そこに辿り着くと、リアはすぐに見つけられた。
だって二階の壁にリアが張り付いていたんだよ!
え、逃げ出そうとして窓から出たの?
その高さから落ちたら怪我しちゃうよ!
僕がいる時ならまだしも、一人の時にそんな危険なことはしないでよっ!
助けに行こうにも、やはり邸自体には近づけなかった。
その代わり、人間の騎士達は次々と邸へと突入していった。
《緑の。力を貸してやろうか?》
《何っ!?》
《俺ならあの子を受け止めることが出来るぞ。ただし、あの子があそこから飛べるのならな》
《風の。本当だな》
《勿論》
何も出来ず、見ていることしか出来ないでいると、風のがそう言ってきた。
この昔なじみの風の精霊は、僕と同じ上級精霊。
リアが壁から後方へと飛べば、僕達の力が届く。
風のなら、リアのことは風で簡単に受け止めることが出来るだろう。
《リア、飛び降りろっ! 後ろに向かって飛んで!》
「ヒューリー殿っ!?」
父殿が驚いたような声を出していたが、それは無視した。
そして風のは、リアが絶対に飛べないと高を括っている。
だけど僕は確信している。
リアならきっと出来る、と。