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異世界ダンジョンにコンビニごと転移したら意外に繁盛した  作者: あぼのん
第三章 婚約、魔王十二宮での闘い
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第六十四話 大賢者と夜の街①

 時刻は深夜一時二十分。


 帝都の夜は眠らない。東側に位置する繁華街は、不夜城と呼ばれているくらいに夜のお店で賑わっている。

 通りには女の子達のいる店が立ち並び、客引きの男達が店の軒先に列を成し行き交う仕事帰りの男達に声をかけていた。


「銀貨三枚ぽっきりっ! 三枚でどう? お兄さんっ!」


 その背後では胸元の大きく開いたドレスを身に纏った化粧の濃いオカマが気の弱そうなお兄ちゃんに絡みついている。


「サービスするわよぉん」

「ひ、ひぃぃぃぃぃいいっ!」


 ムキムキの二の腕を首に巻きつけられたお兄さんは、店の中へと連行されてしまった。お気の毒に。



 さて、俺は今ある人物の素行調査の為に尾行を行っていた。


 なるべく目立たない様に黒で固めたオタクファッションにグラサンという完璧な布陣だ。

 下を向くとメームちゃんと獣王も同じ格好で物陰から少し顔を出して相手の様子を窺っている。


「いいか? 尾行ってのは見つからないようにすることが重要ではない。もし対象にバレてしまった時に如何にしてその場を離脱するかが重要なんだ」

「おーけーぼす」

「わかったわん」


 俺の言葉に真剣な声で頷く幼女と犬。

 ベンリー興信所の調査員はボスである俺を除くと幼女が一人と犬が一匹しかいない。しかし選りすぐりの有能なスタッフである。

 あともう一人はこの時間になると完全に酔い潰れて使い物にならないし、もう一人は「夜更かしはいけません」とか言って自分ちに帰ってしまった。


 さて、俺とメームちゃん、そして獣王の二人と一匹で誰を尾行しているのかと言うと。



 “ぽっぴんぷりん”こと、ポプラ・スウィートミント(14歳)だ。



 あのやろう、ここ数日夜な夜な皆が寝静まった後に、こっそりコンビニを抜け出して夜の繁華街に繰り出してなにかよからぬことをやっているようなのだ。

 日中なんとなしにその事を聞いてみたところ「はて? なんのことやら? 寝ぼけてたんじゃないですか?」と、白を切る始末、店の監視カメラを動かぬ証拠として見せつけてやろうと思ったら、あのやろうしっかり録画を停めて出ていってやがったのだ。抜け目のない奴だ。


 と言うわけで、ここ三日ほどぽっぴんの後を尾行していたのだが、いつも同じところで見失ってしまっていた。

 この尾行がバレているのかとも思ったが、そのような素振りは日中には見せないので大丈夫だとは思う。


「ここだ、いつもこの路地裏に入ると姿が消えてしまうんだ」

「ああ、そうだわん。一体どんな手を使ってるのかわん」


 今日こそ見失わないようにと、俺達は慎重に且つ大胆に尾行を試みる。

 今ぽっぴんが振り返ったら間違いなく俺達の存在に気付かれてしまうだろう。正体まではバレないにしても、以降の尾行が困難になってしまう恐れもある。


 そしてぽっぴんが角を曲がった瞬間、俺達は後を追って走るのだが。


「くそっ! またかよっ! 一体どこに消えたんだ」

「ちっ、あの嬢ちゃん。実は幽霊かなにかなんじゃないのか?」

「べんりぃぃぃ。めーむもうねむいぃぃぃ」


 結局今日もぽっぴんを見失ってしまい、尾行はそこまでとなってしまった。

 メームちゃんを獣王の背中に紐で括り付けると俺達はコンビニへと戻ることにした。


「おまえ犬なんだから匂いとかで追えないのかよ? 役に立たねえな」

「なにか嬢ちゃんが身に着けている物の匂いとかが嗅げなければ難しいわん」

「あーそうかよ。じゃあこんど洗濯カゴに入ってるパンツを拝借しとくよ」

「え? パ、パンツ? べ、べべべ、べつになんでもいいけどお?」

「なに舌出してハアハア言いながら嬉しそうな顔してんだよ」

「し、してねえしっ! 犬がハアハアするのは普通のことだしいっ!」


 自分で犬とか言っておまえにはプライドというものはないのか?

 そういや十二宮編の時、こいつだけなにも聞かされてなかったんだよな。ネタばらしされた時に涙目で「べ、べつに悔しくねえし、それが俺の役割だったんだしぃ」とか言ってたのが憐れだったな。きっとあれでなんかもう色々吹っ切れたんだろうなこいつ。


 深夜2時過ぎにコンビニに戻って来ると俺達は床に就くのであった。



 翌日。



 開店時間の2時間前、朝7時に目を覚ますとぽっぴんも戻ってきていて自分の寝床で鼾をかいていた。

 ソフィリーナはいつも地上に出ておじいちゃんおばあちゃんに混ざって体操をしている。あいつなんだかんだで結構規則正しい生活してるんだよな。


 俺はモゾモゾと布団から出ると洗面所で顔を洗って歯を磨き、軽めの朝食を済ませると開店準備を始めた。


 しばらくするとぽっぴんも起床、目を擦りながらバックヤードから出てくると欠伸一つ、悪びれもせずチルド棚からプリンを取り食べようとする。


「おいぽっぴん、最近夜更かしが過ぎるんじゃないのか? ちゃんと皆と一緒の時間に起きて準備しろよ」

「あぁぁ~、すみませぇぇん。以後気をつけま~す」


 まだ寝ぼけているのか適当に返事をすると洗面所に入って行った。

 そして顔を洗ってシャキっとしたのか出てくるとなにか不快そうな顔をして俺に言う。


「なんで夜更かししてるって思うんですか?」

「い、いや、なんか最近寝坊が多いし、日中も眠そうだから」



 その言葉に「ふーん」と訝しげな顔をするぽっぴん。


「まさか覗いてませんよね? 消灯後は女子の部屋には入らないっていう禁則事項を破ったら焼きますよ?」

「破ってねえよっ!」

「まあいいです。最近はちょっと色々と勉強をしていて夜更かし気味だったので、確かに開店準備を怠ったのは私のミスです。気を付けます」

「ま、まあ、開店準備はいいけど、体に悪いからあまり夜更かしはするなよ」


 なーにが勉強だこのやろう、夜の遊びの勉強か? なんにしても夜遊びなんてこいつにはまだ早い。いくらこいつの生まれ故郷では成人と認められているにしてもまだ中学生の年齢だ。


 絶対に夜な夜な街に出てなにをしているのか秘密を暴いて補導してやるからなっ!



 つづく。


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