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異世界ダンジョンにコンビニごと転移したら意外に繁盛した  作者: あぼのん
第三章 婚約、魔王十二宮での闘い
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第五十七話 時間がないから捲いて、と言われた気がして

「どうして呪いが発動したのにもかかわらず、それがなかったことになったのでしょう?」


 左目の上に青痣を作ったシータさんが言う。それは確かに皆が疑問に思っていたことだがそれよりまずその痣が俺は気になるよ。


 そんなシータさんの質問にメームちゃんが軽く不機嫌な感じで答えた。


「ちょっと勘違いだったからなかったことになった」


 あーそう言う事か、皆よくわかっていないようだが俺はピンときたね。

 そう、この呪いの特性を考えれば確かにそうだ。メームちゃんが俺に施した婚約の呪いは、俺が他の女性と不貞を働いた時に発動する呪いだ。


 はいここ重要、もう一回言うぞ。


 婚約の呪いは他の女性と不貞を働いたら発動する。


「つまり、呪いは最初シータさんを女性と認識したけれど、よくよく考えれば男なのでなかったことにしたということだっ! あ、でも俺は本物の女性以上に女性だと思ってるよ」


 俺の言葉にメームちゃんはまたプリプリと怒っている、ごめんよメームちゃん。俺嘘は吐けない性格だから。

 それ以外の奴らは、なんだそりゃみたいな顔をして納得のいかない様子だ。

 シータさんもメームちゃんに殴られ損だと落胆している。


「まあもうなんでもいいわよ。はぁぁぁ、心配して損した。まあ無事だったんだからいいわ、時間もないし、今度こそ本当に死んじゃうから先を急ぐわよ」


 嘆息しながらソフィリーナが言う。

 確かにそうだ。話を聞く限りでは俺は2時間ほど死んでいたらしい。そんなに心肺停止していたのに体にはなんの影響もないのだろうか? まあいいや、特に痛いところもないし、苦しいこともないので呪いの力で俺は今も健康体なのだろう。なんか言っていることがおかしい気もするけれど細かいことは気にしない。


「そうだな。その前に、おまえにこれ。ユカリスティーネさんが渡してくれって」


 俺がスターサンドの砂時計を見せるとソフィリーナは、これまでにないくらい驚いた様子で大声をあげる。


「なっ!? なんであんたがユカリスのこと知ってるのよっ? え? マジなんでっ!?」


 かなり混乱しているようだ。パニック状態のソフィリーナであった。


「まあそれは道中説明するから、先を急ごうぜ」


 俺達はシータさんに別れを告げると第六の宮を後にするのであった。




「なるほどねぇ。死んでる間にそんなことがあったんだ」

「ああ、今回のことがマジでおまえの所為だってことを確認できたから、これからは心置きなくおまえのことを責めることができるよ」


 俺の嫌味にソフィリーナはバツの悪そうな顔をする。いい気味だぜ、少しは反省しろっての。


「うぅぅぅぅ……とてもステキな話で私感動しましたぁ。メームさんが初対面のべんりくんに対して、ここまで愛情を示すのはそう言う経緯(いきさつ)があったのですねぇ」

「めーむ。べんり好き」

「ありがとう、メームちゃん」


 涙を流しながら聞くローリンであるが、このままでは元の世界には帰れないがそれはいいのであろうか? まあ本人がそこには触れていないのでいいか。


「なんだか未だに腑に落ちませんが、皆さんが別の世界から来たという話は本当のようですね。まあいいでしょう、帰り方は賢い大賢者の私が見つけて差し上げますのでお任せくださいっ!」


 おうおう、なんだか張り切っていらっしゃいますねぽっぴんさん。その前に、おまえはこのダンジョンに「聖者の書」を探しに来ていたことをすっかり忘れていないか? 最近まで作者も忘れていたらしいがな。


「それにしてもユカリスに会ってたなんて驚きよ。あの子なんか言ってた?」

「お前達、駄女神ーズにはあとでお仕置きを受けて貰うってさ」

「ちょとっ!? あいつまさかこのことチクる気? 姉を売るなんてマジで許せないわっ!」

「まったく、姉とちがって本当によく出来た妹さんだな」

「きぃぃぃいいいいーっ!!」


 奇声を上げながら俺の首を絞めるソフィリーナであった。



 と言うわけで次の宮に到着するわけだが、警戒する皆を余所に俺は鼻歌交じりで中に入って行く。なぜなら、次の宮は例のごとくあれ通りであれば無人だからだ。


 その後ろを焦ってついてくる皆であったが、中の光景を見て俺達は唖然とするのであった。


「こ…これは……わん……」

「久しぶりに喋ってなんかおかしな感じになってるぞ獣王」

「そんなことよりべんり……残念だが、俺達は……もう、ここから先に進むことはできねえわん」

「え? ど、どうしてだよ? あれの所為か?」


 俺は目の前の物を指差して獣王に言う。そう、この第七の宮の中に巨大な氷の壁ができていたのだ。

 これが一体どれくいらの厚みのある物なのかはわからないが所詮は氷、ぽっぴんの火炎魔法で溶かしちゃえばいいのではないかと思うのだが、獣王は険しい顔をして重い口を開く。


「あの壁はゲフリーレンザルク、通称“氷の棺桶”と呼ばれる物だわん」

「氷の……棺桶……だと?」

「そうだわん。あの氷は、北の最果ての大地にあると言う永久凍土よりも冷たく硬いと言われていて、絶対に砕くことはできないわん」


 なるほどな……どっかで聞いたことある設定だが、それはもう完全にフラグだわ。


「ローリン……後は任せたぞ」


 俺が言うまでもなくローリンは聖剣を既に鞘から引き抜いており、ゆっくりと前に歩み出ると言い放つ。


「見ていてください。これが私の本気の一撃です! エクスカリボーンっ! エクストリームフルパワアアアアっ!」





 瓦礫を掻き分けて進んだ次の宮。

 ローリンの一撃は氷の壁をいとも簡単に突き破ると次の宮まで巻き込んでいたらしく、第八の宮は瓦礫の山と化していた。


 そして俺達はその瓦礫に巻き込まれ息絶えている者の姿を見てまたも唖然とした。



 ビゲイニア……。



 ラスボスだと思っていたのに、なんて可哀相なやられ方なんだ。


 俺達はビゲイニアの亡骸に手を合わせると第八の宮を後にして先を急ぐのであった。



 つづく。


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