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異世界ダンジョンにコンビニごと転移したら意外に繁盛した  作者: あぼのん
第八章 聖戦のプレリュード~ 十二宮編 ~
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第二百二話  ネクストディメンション・ウォーズ②

「インポテックまでもがやられてしまうなんて……」


 悲痛な面持ちでインポの身体を横たわらせると目をそっと閉じさせてやるリサ。これで魔闘神の犠牲者は3人になってしまった。


「リサ……」

「行きましょうべんりさん。我々魔闘神達は、魔王リリアルミール様を守護するのがその役目。それは己の命を賭しても全うしなければならない使命なのです。散って行った彼らもきっと本望……いえ、きっとこの先に待っているであろう、更なる過酷な戦いに赴けないことを悔しく思っているはずです」

「更なる過酷な戦い? それはどういう?」


 リサは立ち上がると振り返り俺のことをまじまじと見つめる。そして一つ、大きな深呼吸をすると予想もしていなかったことを俺に告げるのであった。


「ここまでの道中、私は今回の黒幕が誰なのか、そのことをずっと考えていました。そして今、ようやくそれがわかりました。魔闘神を相手に互角、いえそれ以上の強さをみせる相手を率いる者、そんな奴は一人しかおりません」


 リサの確信めいた言葉に俺は怪訝顔をする。リサの知っている相手だと? それってつまり、前々から魔族達に敵対していた人物だってことなのか? 俺は真剣な面持ちでリサの言葉に耳を傾ける。


「リリアルミール様のお命を狙い、魔星72体を束ね率いるその相手とは……前魔王であるカシムアダータ・バ・アル・ゼブブに他ならないでしょう」


 な、なんだってええええええっ!?


「ぜ、前魔王ってあれか? 勇者に負けてリリアルミールさんを寝取られた負け犬のことか? うわぁ、四百年も経ってから仕返しにきたのかよ。うわぁ……」

「え? なんでべんりさんがそれを? まあいいです。負け犬かどうかはともかく、そもそもリリアルミール様を賭けて勇者に勝負を挑んだのはカシムのほうですから、寝取られたというのは少し語弊があると思います」


 あちゃー、しかも自分から吹っ掛けた勝負だったのかよぉ。最低だな前魔王、ダサすぎるわぁ。なんだか俺は前魔王が可哀相で少し同情してしまった。


「べんりさん……少し長い話になりますが聞いて頂けますか?」


 リサは少し俯き加減に目を伏せると俺に尋ねてくる。俺が小さく頷くと、そう言いながらもリサは、あまり乗り気ではない様子で訥々と話し始めた。



 それは700年とちょっと前の話し。メームちゃんやリサが生まれる前の話だった。


 前魔王カシムとリリアルミールは、それはそれは仲の良いおしどり夫婦だったらしい。カシムは魔族達皆から慕われる王であり、リリアルミールも皆から愛される王妃であった。

 しかしそんな二人の間にはどうしても子供ができなかったらしい。リリアルミールは王の子を宿すことのできない自分の不甲斐なさを嘆き悲しみ、カシムもまたそんな姿を見て嘆いていたと言うのだ。


 そして、降ってわいたように戦争が起こると魔族達もその戦禍に巻き込まれていったらしい。


 最初は人と竜族の争いであった。神をも恐れぬ人間の所業に業を煮やしたドラゴン達が、神に変わって神罰を下そうと人間界に攻めてきたのである。その戦いに魔族達も参戦することとなった。

 どちらの側につくのかカシムは苦渋の決断を迫られた。結果、ドラゴンの側につくことを選択したのだが、それに反発したのはリリアルミールであった。日頃からエルフや人間達とも交流のあったリリアルミールは、戦争によって人間達が血を流すのを耐えられなかったのだ。


 初めてと言ってもよかった。自分に反発するリリアルミールにカシムは動揺する。頑として自分の考えに賛同しない彼女に、カシムは戦いの中に自分の答えを見つけ出そうと、いや、逃げ出したのだ。


 力だけを求めるようになったカシムにリリアルミールの心は次第に離れて行った。そして、そこに現れたのが人間の勇者だったらしい。



「カシムはおそらく、わざとそんな勝負を勇者に持ちかけたのだと思います」

「そんな、自分から別れ話を切り出せないからって、リリアルミールさんを賭けの対象にしたのかよ? ひでえ奴だな」

「いいえ。それも彼の優しさでしょう。リリアルミール様のカシムに対する愛は、最早、情に変わっていたのだと思います。カシムの方から別れを告げてもリリアルミール様は受け入れなかったと思います」

「……なんだか納得いかねえなぁ」


 それが大人の男女ってものなのかもしれないと、俺は無理矢理納得するのだが。それと今回の件と何の関係があるんだ? さっぱりわからないという顔をしていたのだろう。リサは俺のことを見ると再び話し始める。


「この話には続きがあります。そのあと、戦争はどうなったと思いますか?」

「え? 人間が勝ったんじゃないの?」

「表向きはそうなったと言って良いでしょう。人間側の勝利により、地上は人間の物となりました。そうして帝国が生まれ今に至るのです。しかし、その戦争の裏には神々がなんらかの糸を引いていたと、我々魔族の間では伝承されています」


 神々だと? それってつまり、人間とドラゴンと魔族、そして神々による大戦争だったってことか?


「そ、それってもしかして……」

「そうです。聖魔大戦が起こり得る状況だったのではと……」

「そ、そんな伝承、よく残ってるな?」

「はい、その時の生き残りが魔族の中にも数名いますので。べんりさんもご存じでは? 魔界四貴死、ビゲイニア、ワールフ、ブッチャーハシム、インポテック。彼らはその大戦の経験者です」



「なっ!? なんだってえええええええええええええええええっ!!」



 魔闘神達の中でも一番使えなそうな奴らがそんな……そんな歴戦の勇士だったなんて。て言うか、獣王の野郎っ! そんなこと一言も言わなかったじゃねえかっ!



 今回の件で、俺は一番驚愕の事実の知ることになるのであった。



 つづく。


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