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異世界ダンジョンにコンビニごと転移したら意外に繁盛した  作者: あぼのん
第一章 底辺バイト異世界の大地に立つ
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第二話 底辺バイトとオフィスレディ②

 お、おおおおおおおお、落ち着け俺。きっとこれはあれだ。

 深夜の道路工事でたぶんこうなってるだけで、ずいぶんとまた掘り返したものですね。

 なんですか? このゴツゴツとした岩肌、地殻が見えちゃってんじゃないの?

 掘っては埋め掘っては埋めを繰り返す公共事業。去年もそこのアスファルト張り替えてましたよね。まったくもって税金の無駄使いですよ!


 憤慨しながら店内に戻ると俺は、先ほど入荷してまだ未検品だったカップ麺のダンボールを開ける。


「ちょっ! ちょっと店員さんっ! そんなことしてる場合じゃ」

「え? なにがですか? まったく道路工事もほどほどにして欲しいですよね」

「何言ってんのっ!? 道路工事なんてやってないしっ! ちょっと! 現実逃避しないでよっ! どうすんのよこれええええええっ!」


 まったくもって喧しい女だな。あんたの方こそこんな夜中に酔っぱらって帰って来るなんて、若い女性が酒に酔って現実逃避するんじゃないよ。

 なに? そんなに仕事が大変なのかな? 俺だって大変だよ。毎日毎日一人で店を切り盛りしなくちゃいけないんだ。二人分の時給寄越せってんだよ糞店長。あいつぜってー今日も遅刻してくるんだろうな。なにが娘を幼稚園に送ってただよ。知らねーよそんなん、ちゃんと時間通り出勤しろよクズ。


「あ、スプーンでしたよね。失礼しました」

「ちげーよっ! スプーンなんかどうでもいいわ! あんた外の状況見て何とも思わないの!?」

「お客様。酔っぱらってんですか? 警察呼びますよ?」

「そうよそれよっ! 警察。警察に電話って……もうっ! 携帯電波入ってない。ちょっと、そこの電話貸して」


 レジカウンター内の固定電話機を指差しOLが中に入ろうとするのを俺は慌てて止める。


「ちょ、ちょちょちょお客様、困りますよ勝手に」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! さっきからあんたなんなの? なんでこの状況で普通に仕事続けてるのよ。馬鹿なの? 社畜なの?」

「いや俺、社員じゃなくてバイトだし」

「そんなのどっちでもいいわよおおおっ!」


 俺とOLが押し問答をしていると入口の方でメロディーが流れる。

また客が来たようだ。本当に今日はめんどくさい日だな。俺はうるさいOLは無視して入口の方に振り向いた。


「いらっしゃいま……」


 なに? あれ?


 自動ドアの前にある異様な物体を見て俺は固まる。静かになったのでOLも同じ様に固まっているようだ。


「ね……ねえ? なにあれ?」

「さ、さぁ……わらびもちかな?」


 透明な水の様なブヨブヨした直径30センチほどの球体の何かが地面に転がっている。

 なんだろう? なんかイラっとする感じのニヤケ顔を書いたら某国民的RPGにでてくる雑魚モンスターになりそうな感じだな。


「ス……スラ〇ンかな?」

「え? 知り合いなの?」

「うん、ド〇ク〇で一番最初に仲間にしたモンスター」

「あんた馬鹿じゃないのおおおおっ! いい加減現実逃避はやめて目の前の出来事をしっかり受け止めなさいっ! そうやって現実から逃げてばっかしてきたからいい歳してコンビニなんかでアルバイトしてるのよっ! ちゃんと就職しなさいよっ!」


 はあ? てめえ、コンビニバイト馬鹿にすんじゃねえよ。俺達がいなければおまえらは夜中にちょっと小腹が空いたからって食べ物を買うこともできないし、今みたいに酔っぱらって帰ってきたときにウコンドリンクも買えないんだぞ。

 暗い田舎道とかでコンビニの明かりを見つけた時にホッとした暖かい気持ちになるのはなぜだ? それはそこに誰かがいるって思えるからじゃないのか? それはつまり俺達深夜アルバイターが居るからに他ならないからだろ?


「コンビニアルバイトだって立派な職業だろうがあっ!」

「いいから早くなんとかしなさいよっ! わたしはお客様よっ!」

「うわぁ……自分で様とか言っちゃうー。なんですかぁ? 神様気取りですかぁ?」


 俺はやれやれと首を振りながらバックヤードに行って箒とちりとりを持ってきた。


「まあ店内に動物がいるのは衛生上よろしくないし、こいつで追い出しますよ」

「最初からそうしなさいよ。使えないわね」


 偉そうな奴だなさっきから、ちょっとかわいいからって調子に乗りやがって。


 とりあえず俺は箒とちりとりでスラリ〇を外に追いやろうと突っつくのだがその瞬間。真っ赤に変色すると、剥いたみかんの皮の様に広がって噛みつくようにちりとりを巻き取るスラ〇ン。

 俺は突然のことに驚いて尻餅をつくのだが、スライムの体内に透けて見えるちりとりが泡となり溶けてなくなるのが見えた。


「な、ななななな!?」


 俺とOLは脱兎のごとくその場から逃げ出しバックヤードへと駆け込んだ。


「な、なんなのよあれっ!?」

「し、知らないですよ」

「あんたオタクっぽいしああ言うの詳しいんでしょ?」

「なんのオタクだよっ! 俺は別にUMAオタじゃねえよっ!」

「ゆー……ま? なにそれキモ。オタクっぽい」


 いちいち腹の立つ女だなちきしょう、まあいいや。とりあえずあいつはヤバイ。なんか衣服とか鎧だけを溶かすエロスライムだったらよかったのに本性はブロブだった。

 あんなものに襲い掛かられたらあっと言う間に消化されちまう。一応ドアには鍵をかけたけどいつまでもつかもわからない。


「ねえ。どうすんのよ?」

「と、とりあえず防犯カメラで店内の様子は見れるから」

「だからそれからどうするのよっ!」

「あ、出て行った」

「え? ほんと?」


 モニターを眺めながら2人安堵していると、また来客のメロディが流れる。


 自動ドアが開くと大量のわらびもちが転がり込んできた。


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