あの事故の詳細
初めて書いたSSです。ノリだけで書きましたので、「ここが良くわからない」とか「ここをもっと詳しく」といったご指摘がありましたら遠慮なくどうぞ。
「本部、本部、至急至急、こちら警視庁警邏15号」
「警邏15号、こちら本部です」
「現在、速度超過の違反車を追跡中、ナンバーは○馬580○の××-××。ナンバー照会願う!」
「警邏15号、こちら本部。了解した。事故に留意して追跡されたし」
「警邏15号、了解」
警視庁のパトカーがサイレンを鳴らしながら、黒い1BOXタイプの軽ワゴン車を追跡している。
「こら、止まれ!! 事故るぞ!」
拡声器で呼びかけるが応じる気配がない。まもなく交差点に差し掛かる。信号は赤だが違反車両は止まるどころか、ますますスピードをあげる!
「緊急車両直進します! 緊急車両直進します!」
パトカーは追跡しながら大音量で周囲の車両や歩行者に呼びかける。しかし呼びかけに気が付かず、白色の軽トラックが左から交差点に進入してきた。パトカーはフルブレーキング! なんとか交差点手前で停止した。しかし暴走車は無理やり軽トラの鼻先へ突進! 間一髪であるが通過して行った!
しかし慌てた軽トラの運転手は右に急ハンドルを切り軽トラは道路脇のラーメン店へ向かう。さらにアクセルとブレーキを踏み間違えたのか、軽トラは急加速。ラーメン店前で順番待ちをしていた数人が悲鳴を上げながら慌てて逃げ出す。軽トラはと言うとそのまま店の壁を突き破り突っ込んだ!
安普請なのかたまたま壁が薄い部分だったのか、ともかく軽トラは原型をとどめたままであった。しかし、それは衝突エネルギーがほとんど減衰されないことを意味する。そして、間の悪い事に軽トラの先には主人公である利一とその友人の拓斗がいた…………。
「うう~」
拓斗は意識を取り戻した。一瞬、自分がどこで何をしていたのかすらわからなかった。目の前に白く冷たい鉄の塊があった。見上げるとガラスから血まみれの人間の顔が突き出ていた。その顔はまるで鬼のような形相で拓斗を睨み付けたまま息絶えていた。
(なんだ……こ……れ?)
そして思い出す。
「り……い……ち……は?」
隣で笑っていた親友の姿が見えない。それどころか目の前が暗くなってきた。すぐに前後不覚に陥る。通報を受けて駆けつけたレスキュー隊員が彼に声を掛け続けるが、意識を手放すその瞬間まで、ただ親友の名前をつぶやき続けるだけであったと言う。
レスキュー隊が出動して懸命の救助活動をしたがシートベルトをしていなかった運転手は前面ガラスを突き破って即死。友人の拓斗はすぐに救助されたものの重体で予断を許さぬ状態。そして主人公である利一は……なぜか店の看板猫を大事そうに抱きかかえたまま息を引き取っていた。もちろん生きた猫ではなく客を呼ぶための招き猫の置物である。なぜそんなものを抱いていたのかは謎のままであったが、利一といっしょに荼毘に付された。
なお事故の原因を作った暴走車の運転手はのちに出頭。無免許運転の発覚を恐れたのが原因であった。