夏至の出来事 チェスの腕
「(あの子大丈夫か?)わかった!名乗りを上げればいいんだな?」
とはいっても、マッドハッターと名乗ったあの子の前で本名を名乗りたくない。正直、見た目が可愛らしいし、少しお近づきになりたいと思っていたけど、あんな様子の娘の前で本名を名乗ったら何が起きるか不安だ。
、、、よし、決めた。
「俺の名は《ナイト》!!」
チュドーーーーーーン!!!
さっきよりも大きな音が鳴り響き、竜光の周りを照らし覆っていた「何か」が一度グッと固まり、周囲に大きく広がった。
目の前が一面真っ白になる中で、強い風に吹かれる竜光は着装しておけばよかった!と強く後悔していた。こんな衝撃をさっきの少女、マッドハッターは耐えたのか?!
吹きすさぶ風と、眩しすぎて何も見えない真っ白な世界で声が聞こえた。
「あなた、、、んなところに、、、、こえてる?、、ねぇ、くれ、、、の?」
ちゃんとは聞こえないその声は、不思議と安心した。まるで生まれる前に聞いたような、、、、
ふっと光が収まり、風も止んだ。
目の前には透明なチェス盤、その上には駒が乗っている。
竜光の駒は、西洋の騎士団のような造形だ。キングの位置にあるコマでさえ騎士のような形をしている。他にも青い薔薇が彫られた騎士の駒や、槍を持ったシンプルな西洋の騎士、馬に乗った騎士など、色々な駒があるが、キングの位置にある騎士はひときわ大きな剣を持っている。
そして駒の色は銀色が主体で光沢を感じる。
竜光の目の前にある透明なチェス盤と様々な駒達。その盤上にあるものは、そのまま見下ろす形で、地面にも存在していた。
つまりこの目の前のチェス盤で起こった事が地面のチェス盤に投影されるってことか?
「今回のオーナーは私、ホワイト(先手)はもらうわよぉ」
「じゃあ、ブラック(後手)は俺な。」
「!!」
この一般的には通じない、ホワイト(先手)ブラック(後手)のやり取りでお互いが気付きあった。
自分の相手が決してずぶの素人ではないことを。
竜光は友人の中でも、無類の趣味人でもある鶴見に感謝をしていた。
そう、鶴見とのチェス戦において、相当に鍛えられていることを!!
後手が勝ちにくいって定説があろうと、あいつの趣味に付き合って鍛えられたチェスの腕、そんじょそこらの相手には負ける気がしねぇ!!
前回の話と続けないと読みにくいかもしれませんね。すいませんです。




