夏至の出来事 ビックチェス
獅子ヶ谷 竜光は一人暮らしだ。横浜の港の見えることが謳い文句の公園の近くにある一軒家に住んでいる。
両親が竜光が物心着く前に亡くなり、祖父母が暮らしていた一軒家に転がり込んだ。
その祖父母も学園に入る前に亡くなり、天涯孤独となった。
だが、近くには祖父母の友達のおじいちゃんおばあちゃんもいるので、あまり寂しくもない。
たまに会うと孫を見るような暖かい目で、竜光を見てくれている。
朝起こしに来てくれる幼馴染の女の子くらいいてもいいと思うんだけどな。
さつきと竜光は「陽光学園」で中学1年、中高一貫校のため入学当初からの付き合いといえる。
入学してから、竜光の高い能力に気付いたさつきが、すぐに自分の所属する「月光機関」の戦士として働かないかと持ち掛けたのだ。
陽光学園は21世紀初めから現れ出した超能力の芽生えた少年少女を管理、育成するための学園だ。
そして月光機関は陽光学園の中で戦闘に特化した生徒の集められる機関で一般の学生や教職員は知らされていない。
月光機関の存在はトップである理事長をはじめとした、戦士として所属する生徒や管理者である教職員、所属者のみが知る秘密機関で、所属者同士も誰が所属しているかは把握していない。
例外として誘った人間と誘われた人間は「親と子」の立場になることや、月光機関内の中でもチームを組んだことのあることがあれば知れるが、機関側としても、所属者同士の繋がりはあまり望んでいないようだ。
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補修を終えて、軽く人助けをして、家に帰り、夕飯を食べ、なんとなく散歩をしたくなったので
海が見える事が名所の公園まで歩いてきた。
「たまには花でも愛でるか。」
入り口のバラ園をなんとなく、ぐるぐると見て回る。
・・・青い薔薇か。どっかの研究所で作ったんだっけ?ニュースになってたような。
夜でもこんなに綺麗なものなんだな。昔っから探されていた青い薔薇を作り出す、か。
実在しなかったものを作り出すのは夢の実現なのか、それともエゴか。
誰も傷付けないなら夢の実現かな。
そしてなんとなく自販機でいつも買わないほうれん草ジュースを買い
公園の奥にあるベンチに座り、スマホでゲームをしていた。
なんとなく、今日は一人で家にいるのが窮屈に思い。なんとなく、外に出た。
外に出てみると綺麗な満月で、住民からするとすでに見慣れた夜景を見に公園にやってきた。
見慣れた景色だからこそ、いつもと違うそわそわした気分を紛らわすことができ、落ちついてきた。
そろそろ帰るかな。
ゲームも一段落し、ベンチから立ち上がり、ふと公園の奥にある広場に目を向ける。
この広場はカップルたむろしていることでも、有名だが
そこにいたのは少女が二人。
いや、広場の端と端に陣取り何かをしている。
「チェックメイト!」
金髪の少女が凛と言う。
「あんたの目は節穴?ここをこうして、、、チェック」
赤紫色の明かりとともにコマが動き
青髪の少女がどこかイヤらしい笑顔を浮かべて、告げる
「え、、、う~、、まだまだ」
先程の凛とした表情はどこに行ったのか、眉をへの字にした金髪は
「はい、チェックメイト。」
「う~、、、、参りました。」
どうやら青髪が勝ったらしい。
これはチェスか?しかも広場いっぱい広がる様な。
面白そうだな。今度、鶴見でも誘って遊びに来よう。
その時に、少女らの視線が竜光を捉え
「誰っ?!」




