最後の拠点ドードー
「次に行こう。」
言いながらも俺は頭が混乱していた。
目の前にいる少女の1人、鏡野。
鏡野はパック瓜二つという事に気付いたからだ。
わからない。
鏡野は魔族なのか?
魔族じゃなくても、俺や鶴見に被害を与える存在なのか?
ただ、自分の目を信じるならば、そういうやつじゃないと思う。
パックも俺に味方してくれる存在だったように思う。
いや、新しく出来た仲間を信じたくてそう思いたいだけかもしれないが・・・
「うん、そうだね。」
警戒をしながらも悶々と考えていると鶴見が答えた。
先ほどまでの影響かまだ本調子じゃない様に見受けられる。
声が少し暗い。
「少し休んでいくか?」
「ううん。いいのちょっと疲れちゃって・・・」
「まぁ、そうだよな。マトモじゃなかった。姿形は似ていても、全く別の存在。あんまり関わりたくはないな。」
「だね、そうだよね!あれはマトモじゃなかった。魔族だっけ?怖かったー。あんな風に違和感のある存在・・・」
「違和感ですか・・・?」
鏡野が声を硬くして言う。
「・・・私の能力ってさ、自分の生命力を操ったり、周囲の生命力を探知したり出来るのよ。」
「うん。らしいな。」
「だからこそ感じる違和感なんだけどね。さっきいた女の子、生命力を感じなかったの。」
「生命力が無いって、死んでるって事か?」
「かもしれないけど、別の何か、私が感知しきれないエネルギーがある様に感じた。」
「そっか、感覚的に違いを感じれるのは怖いだろうな。」
鶴見は動物的な本能のようなものでも、違いを感じ取ったんだろうと思う。それが自分の見知った人間の形である事が怖かったのかと。
「あぁぁ、どうして体が動かなかったんだろう・・・あの子の体を使って研究したい・・・せめて腕の一本でもあれば・・・」
・・・あれはきっと恐怖のため研究意欲が増しているだけでマッドサイエンティストじゃない筈だ。
ウチの鶴見に限ってそんな筈はない。
「なぁ、もし、近くにさっきのヤツ見たいのがいたら分かるか?」
「わかるよ。あんな雰囲気の存在。すぐにわかる。」
「そうか。」
・・・とりあえず、鏡野は保留だ。
鶴見の能力に対して騙している可能性も捨てきれないが、それこそキリがなくなってしまう。
何より、鶴見を信じよう。
「お二人とも行きますよー?」
俺たちは鏡野に急かされてホールから出た。
外に出てリザードマンが去っていく後ろ姿を見た。
「あれを追っていけば、最後の1箇所へ行けるんじゃないか?」
「そうかもしれないけど、違う可能性もある。私達には相手の居場所が分かっているんだから、追う必要もないと思うけど。」
「私は獅子先輩に賛成です。最後の1箇所とは違ったとしてもどこに行くかも気になりますし、放っておいてロクなことはしないんじゃないかと。」
どうする?
「鏡野、この世界と本当の世界の間に異変はないか?」
「ありません。この中にいるのは雑魚だらけなので、私が塞いだ世界間の境を突き抜けるような存在はいません。」
「鶴見、六本木にいるっていう存在は動いているって言ったな?まだ、色々動き回っているのか?」
「そうね、今は、、、うん。さっきまでは遠かったけど、少し近づいている。」
「どの辺りにいるかまで分かるか?」
「まだわからないけど・・・目的を持って動いている気がするかな?」
リザードマンと合流する可能性が高い気がする。
「じゃあ、リザードマンを追い掛けよう。そして動きを止めたら状況の確認。もし、いけそうなら合流前にリザードマンを倒してしまおう。」
「オッケー。」
「はいです。」
バレないか?と不安だったが、リザードマン達はひたすらに何処かを目指している。
「目もくれないってこういう事か。」
「アウトオブ眼中ですね。」
「少し間引いてみる?レッドちゃん、ちょっと焼き払ってみてよ。」
鶴見の言葉に従い、リザードマン達を炎で焼き払うレッド。
さっき言ってたブレスってこのことか!
「さっきとは違うのでたね〜」
「ホントですね!龍ちゃんいい子!」
どうやら、俺はレッドの事を知っていく必要があるようだ。
そして、俺だけレッドに攻撃の支持を出していない!
間引かれたリザードマン達はそれでも焼け落ちていく同胞を見ることなく進んでいく。
残りは3体。
「鶴見、次の拠点の動きはどうだ?」
「敵の動きは止まった。ここからそんなに遠くないよ。」
「じゃあ、リザードマンは全部倒してしまおう。」
俺は《花鳥風月》を握り、リザードマンへ向かっていく。
ここで俺は目の前の存在が何なのか本当に疑問になった。
倒しても血が出ず煙のように消えていく。
拠点を潰すとその周囲にいた、魔物もいなくなる。
そして、目の前のリザードマンはまるで何かに動かされるように向かっていく。
まるで、本当にゲームみたいだ。
廃墟の日本をテーマにした生き残りゲームってか?
「よし、これでリザードマンは全滅と。」
「お疲れ様。じゃあ、行こう。この坂を登ったとこだよ。」
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「ここか。」
リザードマンを追って辿り着いたのはイベントホールのようだった。
場所は青山。青山通りの丁度真ん中位。六本木と渋谷と原宿の真ん中くらいだ。
入り口を入りカフェとして使われていたであろう場所があり、奥には広いスペース広がっている。
奥には階段が見える。
その手前。
広いスペースの真ん中にピアノがありその上に少女が座っている。
「あぁぁ、まだリザードマンは帰ってこないのー?というか完全にバグってるでしょこのゲーム。ローリーもダックも連絡して来ないし。」
「選択肢はいくつかある。」
「・・・・誰?!」
「大人しく、捕まって話をするか。」
こちらを見てくる少女。黄色い目で俺を覗き込む。
「俺達に倒されて、話をするか。」
「話って何よ。」
「君は今ゲームをしているのか?」
「そうよ。帽子のおじさんの作ったゲーム。」
「ルールは?」
「そのゲームのルールさ。」
「一周するのよ。チェックポイントがあってね、完走したら勝ち。」
「完走するだけでいいのか。随分簡単なゲームだな?その一周する場所は?」
「質問ばっかりねお兄さん。そんな簡単なはずないじゃない。私達のコマを使って、相手を妨害するの。私達もライフを持っているから無くなったら負けよ。」
「勝ったらどうなるんだ?」
「この街がもらえるの!」
「負けたら?」
「能力が無くなっちゃうの。何回か負けて、能力が全部無くなったらゲームにももう参加出来ないわ。」
つまり、元々の俺達の住んでいる世界をゲームの商品にされたって事か?
魔族に勝手に?
「・・・今すぐにゲームから手を引いて、自分達の世界に帰れ。」
「お兄さん、言っている意味がわからないんだけど?」
「だから、お前達は魔族なんだろ?!ここは俺達の世界だ。早く自分達の世界に帰れ!」
「魔族?って何?」
「・・・は?」
「自分の世界に帰れって、家に帰れってこと?確かに私は子供だけど、もう中学生だし、まだそんなに遅い時間じゃないよ?」
「悪いんだけど、あなたがさっきの子と同じってのはわかってるの。」
「ふふ、あぁ、、、、そう。まぁいいや。別に言い返しただけで、本当に騙せるとは思っていなかったし。・・・ところでさっきの子って、ローリー?ダック?それともイーグレット?なんて、イーグレットは私が潰したんだった。」
ローリーはさっきのオウムの魔族。ダックが最初の原宿の魔族だとして、イーグレットが六本木の魔族?
こいつはなんだ?
「私は《マッドティーパーティー》のドードー。この子達にゲームを教えてあげた優しいお姉さんよ。今回の商品はこの街。そして、私直々に強い力も上げるの。まぁ、人格も肉体も貰っちゃうんだけどね!」
「・・・なんなんだ、本当に。魔族ってやつは。」
「あなたはなぜ自分が人間かってわかるの?それに、さっきの質問の答えだけど。私達、魔族の世界もここよ。お兄さん。」
「ここ?」
ここというのは鏡野が繋いだこの世界なのか、それとも・・・
「あなたが住む自分の世界だと主張している世界に私達も暮らしていると言っているの。自分の世界には人間しかいないと思ってた?魔族と人間族。私達の世界はこの2つの種族がいるのよ。」




